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転移宇宙・アトランティス・ジーン(3)A・G・リドルー217

2022.11.07.22:27

44

 

再び目を開けると、ケイトは金属の台に仰向けに横たわっていた。

知っている感覚だった。

アルファ・アンダーにもこれと同じタイプの手術代があり、あの時も手術を受けた直後にその上で目覚めたのだ。

ポールが心配そうな顔でこちらを見下ろしていた。

「危なかったよ、ケイト。ベータがきみの余命はもう1日もないと言うんだ。」

ケイトは体を起こした。

「この星で起きたことを見たわ。」気づくとメアリやミロもそばにいた。

3人に向け、アトランティスの星で見たことや、彼らの社会がどのように分裂していったかを話して聞かせた。

「なぜ番人は、この星でイシスを攻撃したのかしら?」

メアリが聞いた。

「わからないわ。」

ケイトは答えた。

「次の記憶を見ればわかると思う。」

3人の顔に不安の色が広がった。

「仕方がないのよ。そのことについてはもう話したでしょう。」

話題を変えることにした。

「信号の方は、何か進展があった?」

「そう言っていいのかどうか。」

ポールが壁パネルに近づき、一枚の画像を呼び出した。

何やら、テレビの砂嵐に色がついたような画像だ。

彼は驚くほど滑らかにパネルを操るようになっていた。

一体、自分はどれくらいタンクに入っていたのだろう?

何にせよ、ケイトはポールの知能に対する評価をさらに上げた。

「この静止画は、信号の4つの値をCMYKに置き換えたものだ。試しにRGB、つまり赤、緑、青…とnnllにも置き換えてみたが、そちらはもっとわけのわからない画になった。他にも動画に置き換えるとか、色々試したが、同じ理由で却下した。」

「これは冗談だけど。」

メアリが言った。

「ほら、じっと見ていると何かの形が現れてくる絵があるでしょう?これも同じじゃないかって話していたの。」

「実際にしばらく見つめてみたんだ。だが、何も変わらなかった。」

ポールが言い足した。

「そう言うわけで、俺たちはゲノムの配列と見るのが一番妥当だと考えている。俺はレトロウイルスじゃないかと推測しているが。」

「私もそう思うわ。」ケイトが言った。

「もしかすると、脳の神経回路を変える療法かもしれない。それで遠方の誰かと交信できるようになるのかも。あるいは、亜空間の量子ビームのような働きをするのか。」

「量子もつれを利用したテレパシーね。」

メアリが言った。

「ええ。」ケイトは頷いた。

「私たちがレトロウイルスを注射した瞬間、信号を送った相手に返信が届くのかもしれないわ。」

「きみには心当たりがあるのか?」

「いいえ、でも…。」

ケイトはイシスが追放者に与えたレトロウイルスのことを考えた。

それに、アトランティス人の番人や蛇紋軍との戦い。

「答えに近づいている気がするの。次の記憶で全てがわかるかもしれない。」

反論が出る前に、彼らを適応実験室から連れ出し、廊下を抜けて医療室に向かった。

そして、ゲノム合成システムの使い方を説明した。

ここでもケイトはポールの飲み込みの速さに、感心させられることになった。

ゲノムの配列を読み込むと、ベータが進行状況のカウントを始めた。

3時間とかからずに、信号が表しているレトロウイルスが完成するようだ。

自分もその頃には、アトランティスの星の秘密を突き止められているといいのだが。

ケイトはタンクに戻って銀色のヘルメットを被り、ヤヌスが消そうとした記憶を再び調べ始めた。

 

衝突が起こした地震が、ベータ・ランダーを激しく揺さぶったが、ほっとしたことに船は無事なようだった。

揺れが退き始めた頃、復活室のドアが開いてヤヌスが駆け込んできた。

衝突の直後に、ポータルで着陸船へ移動してきたのだろう。

ヤヌスがそんな危険な真似をするのは珍しいことだった。

チューブが開き、イシスは外へ転がり出た。

ヤヌスが体を受け止めようと腕を広げたが、それを払って言った。

「大丈夫よ。」

「ここを出ないと。」

彼に連れられてポータルへ行き、そこから母船に戻った。

ヤヌスがすぐさま次の行く先を入力し、まだ休眠チューブにも着いていないうちから、超空間トンネルを開いた。

「なぜ番人は、私を攻撃したの?」

イシスは聞いた。

「わからない。もしかすると、あの星は蛇紋軍に侵略されたのかもしれない。」

「あり得ないわ。」イシスは言った。

「だとしたら、彼らは監視線を突破したことになる。もしそうなら、私たちの星にもとっくに現れているはずよ。惑星1723の破壊跡は最近のものじゃなかったもの。」

「報告する必要があるな。」

「危険だわ。軍事用ビーコンで隔離されている区域には近づくなと言われていたでしょう。」

アレスから、とイシスは思った。

しばし、その事実について考え込んだ。

「番人が誤作動を起こした可能性はないか?」

ヤヌスが言った。

「考えにくいわね。思うに、誰かが番人をプログラムして、1723にいる者は全て殺せと命じたんじゃないかしら。」

「恐ろしいことを言い出すな。」

「事実、あの文明社会は恐ろしい目にあったのよ。」

それからはどちらも口を開かなかった。

イシスはいつしか追放者の星とリュコスのことを考えていた。

彼は今も復活用ラフトの休眠チューブに横たわっている。

万が一のことを考え、計画を変更して約束より早く彼の元に戻ろうと決めた。

「とにかく、もう少し考える時間が必要だわ。その間に先へ進みましょう。次の行き先はどこ?」

「2319だ。」

イシスは調査地の詳細を呼び出し、惑星2319の位置を確認した。追放者の星から離れすぎていた。

これではベース・ランダーで行けない。

データベースを調べて、都合のいい星を探した。

「1918はどう?第一期の調査では3種のヒト科動物がいたわ。進化の過程を比較するのも面白いんじゃないかしら。」

ヤヌスは少し考えてからこう答えた。

「そうだな、そうしよう。」

惑星1918が見え始めた頃、イシスは自分がいい選択をしたことに気づいた。

そこは恒星系の第3惑星で、生物がいない岩だらけの衛星が一つあり、最近になって惑星規模の気候変動が起きていた。

北半球と南半球の二つの小規模大陸の間に細い地峡が隆起し、広大な海洋が二つに分かれたようだ。

その結果、海流が変わり、中央の大陸に棲息する何種もの霊長類に影響が及んでいた。

ヒト科動物のうちの何種かは住み慣れたジャングルを離れて、草原に棲息地を移したようだ。

そして、環境と食生活の変化が彼らのゲノムにも変化を引き起こしていた。

「今の所、遺伝子的に興味深いヒト科動物が4種ほど確認できる。」

ヤヌスが言った。

「分類番号を振ろう。亜種8468、8469、8470、8471だ。」

さらに数時間をかけて着陸前の予備調査を行った。

この星を隠すビーコンも完全稼働し、全システムに異常がないことが確認された。

手順に従い、母船を衛星の裏側の地中深くに埋める作業も開始された。

「アルファ・ランダーを使いたい。」

ヤヌスが言った。

「本当はアルファじゃなくても事足りるが、ARCーC室がまだ空だからな。ここで何か見つかるかもしれない。」

イシスは頷いた。

自分はデルタ・ランダーさえ使えれば問題なかった。

地表に降りると、二人はDNAのサンプルを採取し、一連の実験を行い、データを第一期の調査結果と比較した。

「目覚ましい成長ぶりだ。」ヤヌスが言った。

「それに多様性に富んでいる。」

「本当ね。ちょっと長期的な観察をしてみたいわ。」

イシスはせいっぱいさりげない表情を作り、ヤヌスの答えを待った。

「故郷の方では誰も気にしないでしょう?最近は私たちの帰りを待ち侘びている人もいないようだし。」

「全くだな。それに、確かに長期的な比較調査は面白そうだ。どれぐらい間を開けてサンプルを採る?」

「1万年ではどうかしら?」

ヤヌスは最新のデータと初回の調査結果を見比べた。

「うまく行きそうだな。」

彼が微笑んだ。

「科学委員会には、しばらく戻らないと伝えておこう。」

二人の科学者は準備を整え、休眠チューブに引き揚げた。

中に入る直前、イシスは自分のチューブのタイマーを5千年後に設定した。

目覚めたらすぐにポータルで母船に戻り、デルタ・ランダーで追放者の星に向かうつもりだった。

一目でいいから無事を確認したかったのだ。

だが、5千年後に覚醒作業が開始されることはなかった。

イシスはまたもやアラームで目を覚ました。

緊急事態を知らせる暗号通信が届いたのだ。

まだ3482年しか経っていない。

ヤヌスと共に、アルファ・ランダーの通信室へ急いだ。

最初に届いたのは、彼らの故郷の星が攻撃を受けているという緊急メッセージだった。

すぐさまイシスの頭に、惑星1723で番人に攻撃された記憶が蘇った。

「見てくれ。」ヤヌスが言った。

「番人に指令が送られている。監視線にいない番人は全てアトランティスの星に集められたようだ。」

イシスは部屋を歩き回った。

「きっと蛇紋軍が侵略してきたんだ。」

ヤヌスが囁いた。

「だとしたら、ここも安全ではないわね。」

「その通りだ。だが、ここから出ることもできない。」

それからは2人ともほとんど口を開かず、ただソワソワと落ち着かない時間を過ごした。

イシスの意識は、故郷の星から追放者の星へと向かっていた。

再び緊急信号の受信を知らせるアラームが鳴り、二人は急いで通信室に戻った。

新たに開いたメッセージは短いものだった。

故郷の星が滅びた、というのだ。

その場に隠れて次の連絡を待て、という簡単なものだった。

「俺たちは完全に孤立してしまったということだな。」

ヤヌスが言った。

悲しいはずの場面で、イシスはヤヌスから満足感しか感じ取れなかった。

 

続く⇨


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転移宇宙・アトランティス・ジーン(3)A・G・リドルー216

2022.10.22.21:45


43

 

何かがおかしいと最初に気づいたのは、アラームが鳴った時だった。

チューブが開いて霧が晴れていく。

イシスはいつものようにヤヌスより先にチューブを出た。

ふらつく足で冷たい金属の床を進み、操作パネルから立ち上る青白い霧を操った。

一体何が起きたのだろう。

「超空間トンネルが崩れたのか?」

ヤヌスが聞いた。

彼は目を擦りながらチューブを転がり出て、イシスの元にやって来た。

「いいえ、すでに惑星1723に到着しているわ。」

スピーカーが流すメッセージが狭い空間に反響した。

「ここは軍事区域です。直ちに避難して下さい。」

イシスもヤヌスもブリッジへと急いだ。

ビュースクリーンに下方に浮かぶ惑星が映っていたが、その姿は、数千年前に探査機が捉えたものとはまるで違っていた。

濃い緑と茶と白で覆われていた場所に、今は荒れ果てた大地だけが広がっている。

真っ黒なクレーターがその大地に、ポツポツと穴を開けていた。

海は緑が強すぎるし、雲もやけに黄色っぽく、陸地には赤と茶色と淡い黄褐色しか見当たらない。

船の声がブリッジに響き渡った。

「避難飛行経路を算定しました。実行しますか?」

「いいえ。」

イシスは首を振った。

「シグマ、探知ブイの警報を止めて。このまま対地同期起動を保ってちょうだい。」

「無茶をするな。」

ヤヌスが言った。

「この星は攻撃を受けたんだわ。」

「そうとは限らない。」

「調べてみるべきよ。」

「自然災害かも知れないだろう。」

ヤヌスが言った。

「彗星や小惑星の群れがぶつかったのかも知れない。」

「そうじゃないわ。」

「なぜそんなことが…。」

「これは違う。」

イシスはビュースクリーンの画像を拡大し、衝突クレーターの一つを映した。

「それぞれのクレーターから道が伸びているでしょう。都市があったのよ。これは攻撃の跡だわ。きっと小惑星を人為的に落として、運動エネルギー爆撃を行ったのよ。」

画面を切り替えた。

不毛の大地に荒廃した都市が現れた。

どのビルも無惨に崩れ落ちている。

「主要都市の外にいる住民も、環境の激変で死滅させられたんだわ。あっちに行けば答えがわかるはずよ。」

イシスはキッパリと言った。

ヤヌスが諦めたように項垂れた。

「ベータ・ランダーを使うといい。AR C室が無いぶん駆動性が高いだろう。」

 

イシスは都市の外にベータ・ランダーを着陸させた。

不発弾が残っているかも知れないし、廃墟に潜む危険も無数に考えつくからだ。

もしこの着陸船が破壊されたら、復活できる場所がなくなってしまう。

そうなれば永遠の死を迎えるしかない。

都市の外に駐めておくことが唯一の安全策なのだ。

船外活動スーツを着て着陸船を降り、崩壊した都市を目指して進みはじめた・

道すがら、惑星1723の謎について考えた。

第一期の調査報告によれば、この星には系統が近接した2種のヒト科動物がいた。

それらの種の進化過程は。アトランティス人の調査範囲にいる他のヒト科動物と大差なかったため、特に注目されることはなかった。

しかし、この星で何かが起きたのだ。

そして急激に進化が促された。

彼らは大飛躍を遂げ、高度な文明を築いたが、結局は爆撃を受けて全てを吹き飛ばされることになった。

そう思うと、イシスは悲しくなった。

この星は、アトランティス人がずっと待ち望んでいた存在になり得たのだ。

仲間の星に。

そんな星が見つかれば、人々の宇宙探索への関心も再び高まっていただろう。

とはいえ、誰かは間違いなくここに文明世界があることを知っていた。

あるいは文明が崩壊した後に発見したのかも知れないが。

いずれにせよ、その者が軌道上にアトランティスの軍事用ビーコンを配備したのだ。

考えられる可能性は2つしかなかった。

実は第一期の調査報告がでたらめで、最初に発見した時からこの星は破壊されていた。

もしくは、調査後に文明が誕生して崩壊し、それに気づいたどこかのアトランティスの組織が事実を隠すことを選んだ。

イシスの通信装置にヤヌスの声が届いたのは、歩き始めて2時間ほど経った頃だった。

緊迫した、怯えたような声だった。

「接近してくる飛行物体がある。」

彼はそこでしばし沈黙した。

「こいつは番人だ。」

イシスは身を固くして待った。

雲を破って番人が現れるのを覚悟するように、じっと空を見つめていた。

「母船はスキャンしただけで通過した。」

ヤヌスが言った。

「まだ進んでいる。イシス、そこを離れた方がいい。」

「了解。」

イシスは着陸船に引き返し始めた。

「番人が何かを発射したぞ。大気圏に向かっていく。運動エネルギー爆弾が…。」

通信のシグナルが乱れ、やがて完全に途絶えた。

頭上の雲を突き抜けて燃える物体が迫ってくるのが見えた。

真っ赤に焼けた火かき棒が、空を切り裂いて落ちてくる。

走り出したが、すぐに足を止めた。

逃げても無駄だと気づいたからだ。

標的がこの星なのか自分なのかはわからないが、なぜ番人は爆弾を落とすのか。

そう思いながらじっとその場に立っていた。

刻々と熱が強くなり、イシスは地面に倒れ落ちて体を丸めた。

痛みに炙られ、毛穴から噴き出す汗がスーツの熱に焼かれて瞬時に蒸発した。

終わりはすぐに訪れた。

そして、次の瞬間にはまた目を開け、湾曲したガラスの外を覗いていた。

イシスはベータ・ランダーの復活用チューブの中にいた。

 

ケイトは目を開けた。

長い時を超え、ケイトもまた同じ星でベータ・ランダーに乗っていた。

目の前にはやはり湾曲したガラスがあったが、こちらは実験室の黄色く光るタンクのものだった。

ケイトは床に横たわっていた。

頭はミロの膝の上に乗っている。

ケイトがその中に浮かび、イシスの記憶を目にし、追体験したタンクが開いていた。

床に血溜まりができている。

私の血だ。

遠い昔にイシスがこの星で迎えた死。

それは実際に経験したことのように、生々しく感じられた。

すぐにケイトは、その記憶が肉体にダメージを与えたことを悟った。

体がほとんど動かない。

ポールとメアリがそばに立っていた。

彼らの顔に浮かんだ恐れを目にし、ケイトは自分の認識が正しいことを知った。

 

続く⇨

転移宇宙・アトランティス・ジーン(3)A・G・リドルー215

2022.10.22.21:43

当初チームには、数千人の応募者の中から選び抜かれた五十人の科学者がいた。

イシスもヤヌスに頼まれて選考を手伝ったのだが、自分はついていると心底思ったものだった。

応募者の中には、イシスよりもずっと経験豊富で、調査旅行へ同行するに相応しいものが大勢いたからだ。

ただし、調査にかける思いはイシスの方が強く、動機もだいぶ異なっていたが。

五十人で始まったチームは徐々に20人に減り、それが10人になり、5人になって、最後は2人だけになった。

ヤヌスとイシスだ。

去った者たちを責める気にはなれなかった。

科学者たちは皆、人や物が溢れた賑やかな世界で育ったのだ。

新宇宙の調査に伴う惨めな孤立や、一度に何年も眠る人工休眠、延々と繰り返される同じ実験などが、彼らの神経を参らせてしまったのだろう。

それに、たとえ調査に嫌気が差していなくても、アトランティスの星に帰りたくなるのは当然だった。

というのも、故郷の星には新たな知性ルネッサンスの波が押し寄せてきていたからだ。

一つにまとまった社会に訪れた新しい時代。

その魅力に抵抗できる者は、ヤヌスとイシスの他にはいなかった。

気づくと彼らは二人きりになっており、理由は違っても、どちらもそれを喜んでいた。

「宇宙にはもう、君と俺しかいないみたいな気分だな。」

ヤヌスは言った。

彼の背後のスクリーンには、惑星1632が現れ、船が近づくにつれて、その紫と赤と白のマーブル模様の星が大きくなっていった。

「ええ」

イシスは答えた。

「お陰で研究に没頭できるわ。」

その後、3週間の調査の間、ヤヌスはほとんど口を利かずに一人で惑星1632のサンプルを採取した。

彼を傷つけてしまったことはわかっていたが、嘘をつくよりマシだと思った。

どうしても必要な時まで、嘘は取っておく。

そしてその時は、目前に迫っていた。

休眠チューブに入る直前になって、ヤヌスがようやく沈黙を破った。

「次の星で会おう、イシス。」

イシスは頷いた。

チューブが閉じ、霧が体を包んでいった。

次の惑星、1701は、イシスがずっと待っていた星だった。

そこなら圏内だ。

チューブから出てきたヤヌスは、いつもの彼に戻っていた。

二人にはほんの僅かな時間だったが、外では二年が過ぎていた。

船に取り付けられたベル型のチューブのおかげで、軽く昼食でもする感覚で、時空を飛び越えられるのだ。

「第一期調査の後で、かなり変わった種が現れたようだな。」

ヤヌスが言った。

「アルファ・ランダーで行こう。ARC室の出番かもしれない。」

「了解。」

そう答えると、イシスは自分の端末を起動して画面をスクロールし、逃げるための口実を探した。

「先発の探査機が、第7惑星の衛星の一つに化石化した生命の痕跡を見つけたみたいよ。私はデルタ・ランダーでそっちのサンプルを採りに行っていいかしら?」

ヤヌスは渋々了承し、こう付け足した。

「定期的に無線で連絡を取り合おう。」

「わかったわ。」

デルタ・ランダーを選んだ理由は、二つあった。

一つは、短距離超空間移動ができる着陸船はそれだけだということ。

もう一つは、復活よう救命筏が積まれているということだ。

恒星系の端まで来たところで、イシスは23年間待ち続けた瞬間移動をした。

追放者が住む星を目指して。

デルタ・ランダーのビュースクリーンに、まだ黎明期にある文明社会が映し出された。

集落は小さくて軌道上からは確認できないが、ビュースクリーンの拡大画面を通し、素朴な村のはずれに農場が広がっているのが見える。

追放者たちは少しづつ自分達のユートピアを築き上げていた。

故郷の星とは全く異なる種類の。

無線をとって待ち合わせをし、地表に降りた。

着陸直前に復活用ラフトを射出しておいた。

イシスは着陸線を降り、その場に立って待った。

そこは小さな集落から数キロ離れた岩の荒野だった。

数分後、岩陰からリュコスが現れた。

かつて少年の面影を残していたその顔には、長年の過酷な暮らしを感じさせる皺が刻まれていた。

だが、その表情は今も変わらずイシスを惹きつける魅力を放っている。

考える前に体が動き、声を発する間も無くそちらに駆け寄っていた。

イシスに勢いよく抱きつかれて、彼がよろめいた。

「おいおい。」

彼はイシスの肩を掴んで体を離し、顔を覗き込んだ。

「君はあの日からちっとも歳をとってないな。」

イシスは2、3メートル先にある長方形の物体を顎で示した。

「休眠装置のおかげよ。あなたもすぐにわかるわ。」

リュコスが半信半疑の顔で、装置を眺めた。

「こいつは何なんだ?」

「復活用ラフトよ。大きめの船に積まれていて、船が危険になったら外へ射出されるの。もし乗員が死んでも、あれで復活して救助を待てるのよ。」

リュコスが頭を振った。

「昔の星を思い出すな。ここでの生活は、もう少しシンプルなんだ。」

彼の口調に何かが混じっていた。

ためらいだろうか?

恐れているのか?

「計画を中止したくなったの?」

「いや、ちょっとな。ここでの暮らしは割と順調なんだよ。当時…話し合った時は、追放されれば俺たちは自滅すると思っていた。だが、力を合わせてようやくここまで来た。今は絆と目標があるんだ。」

「それが消えるわけじゃないわ。」

「俺には二十年以上も前の話だからな。もう一度聞かせてくれないか。」

イシスは容器を取り出した。

「シトロウイルスよ。好きなところにまけばいいわ。できれば人の多い場所がいいわね。」

彼がその銀色の筒を手に取った。

「何だか恐ろしげに聞こえるな。」

「何も怖くないし、具合が悪くなったりもしない。このウイルスが私たちをまた一つにしてくれるのよ、リュコス。また同じ星で暮らせるわ。みんな一緒にね。一つの星に一つの社会よ。」

「どういう仕組みなんだ?」

彼が眉を上げた。

「簡単に頼む。」

「私は、言ってみれば進化の引き金を引く遺伝子を突き止めたの。アトランティス遺伝子と呼んでいるけど。もう少し具体的に言うと、これは1セットの遺伝子群で、遺伝子の発現に影響を与えるの。そこが重要な点よ。そして、私の療法を使えば、この星にいる全員のアトランティス遺伝子を修正できるわ。」

「俺たちは変わるのか?」

「少しづつね。私が定期的に検査して、何か問題があれば調査する。見てわかるような変化じゃないわ。脳の神経回路が僅かに変わるだけだから。主に情報処理能力やコミュニケーション能力、問題解決能力に関わる領域が変化するの。この療法はここにいる全員の潜在能力を引き出してくれるわ。いつかきっと、この行動のおかげで人々がまた一緒になれたと評価される日が来るはずよ。」

イシスはそこで口を閉じたが、リュコスは何も言わなかった。

「私を信じている?」

「もちろんだ。」

リュコスは即答した。

「それじゃあ、数分後に会いましょう。」

イシスは微笑んだ。

「現地時間で言うと一万年後だけど。」

リュコスがどうするのか、イシスは軌道上から見届けずにはいられなかった。

彼は銀色の筒を手にして小さな村へ戻っていった。

やがて夜の影が星に広がり、復活用ラフトを隠してある岩の荒野を飲み込んだ頃、リュコスが手ぶらで戻ってきて、ラフトに足を踏み入れた。

イシスは大きく息をついた。

期待に胸が膨らんでいた。

ワームホールを開いて惑星1701に移動し、母船に戻った。

ヤヌスは一目でイシスが元気になっていることに気づき、自分も快活に言った。

「楽しい旅行だったようだな。」

「ええ。」

「俺もだよ。ARCーD室に積荷を入れた。君もびっくりするぞ。」

彼がいくつかの画像をスクリーンに映した。

「飛翔爬虫類で、光合成する皮層を有しているんだ。しかも、狩りをする夜間には姿が見えなくなる。」

「すごいわ。」

二人は帰郷後の展示についてあれこれ話し合った。

どうやって見物客を保護するかとか。

これでプロジェクトへの関心も再燃するだろうとか。

調査に同行したいという科学者だって出てくるかもしれないとか。

最後にヤヌスが言った。

「そろそろ惑星1723へ向かおうか?」

イシスは頷いた。

二人は、またガラスのチューブに入った。

霧が足元から湧き上がり、再び時間が飛び去っていった。

 

続く⇨


転移宇宙・アトランティス・ジーン(3)A・G・リドルー214

2022.10.08.23:09

42


”追放法”が調印された日は、イシスの35年の人生で最悪の日だった。

イシスは何度も思い返した。

もっとうまい説得の仕方があったのではないか。

データの見せ方が悪かったのではないか。

あの討論会の場で、なぜアレスを言いまかすことができなかったのか。

周囲の世界は変わったが、良い方向にではなかった。

投票後の影響として、最も危惧されたのは労働者階級からの報復だったが、それらしい事件はまるで起きなかった。

少なくとも、知識層が攻撃されたことはない。

アレスの策略には隙がなかった。

労働者の革命指導者たちはあっさりと人質を解放し、その注意を内部に向けた。

そして、強制移住に反対する労働者たちを徹底的に迫害した。

その方法は残忍で、連日のように悲惨なニュースが報じられたが、為政者たちは無視を決め込んでいた。

少数ながら、知識層の中には一つの社会を願って反対し続ける者もいた。

だが、その大半は暴動やテロ攻撃を経験していない都市の市民で、大量殺戮を生き延びた犠牲者たちは固く口を閉ざして、追放の日を待ちわびているだけだった。

投票の1週間後、リュコスがイシスの研究室を訪ねてきた。

驚いたことに、彼はイシスに礼を言った。

それからは定期的に彼と会うようになり、会うたびに、イシスは再会を楽しみにする気持ちを強くしていった。

イシスはいつも自分達の側の動向を伝えた。

追放後の社会に知識層が無理なく適応できるよう、オートメーション技術の規制が少し緩和されたことなど。

回を重ねるごとに話題は減っていったが、それでもイシスは彼に会うのが楽しみだった。

そして、ある日船が現れ、労働者たちを永遠に連れ去ってしまうことを恐れていた。

イシスが計画を思いついたのは、ある会話の最中だった。

リュコスが、労働者勢力のリーダーたちが労働者の定義を明確にしようとしている、という話題を持ち出したのだ。

「収入や職種、それに配偶者の仕事まで基準にしている。」

リュコスが言った。

「遺伝子を基準にしようとは考えていないの?」

「それはないな。」

「議会はもう移住先を決めたのかしら?」

「ああ。アレス将軍とそのチームがすでに環境の整備を始めているようだ。場所は知らされていないがな。」

リュコスは答えた。

「突き止めることはできる?」

「多分な。」

イシスは計画を打ち明けた。

全て話し終えると、リュコスは長いこと黙り込んだ。

「とにかく考えてみて。」

イススは言った。

翌日、イシスはヤヌスを訪ねた。

「考え直したの。私も是非オリジン計画に参加させてもらえないかしら?」

彼とは違う動機で情熱を抱いていることに、多少後ろめたさを感じたが、その問題は後回しにしようと決めた。


アレスは調査船の窓に立ち、眼下に広がる青と緑と赤に覆われた惑星を見つめていた。

巨大な機械が地表を這い回り、大地を掘り起こして赤い土埃を空に巻き上げている。

環境整備重機が山を動かし、アトランティスの追放者のための新天地を造成しているのだ。

「地質調査を続行しています、アレス将軍。北半球のプレートですが、あと4千年は問題ないようです。そのままにしておきますか?」

「いや、4千年経っても彼らには対処できないだろう。今のうちに手を打っておけ。」

惑星規模の災害は、進化を促すことがある。

そうなっては危険だ。

彼らにはこの地で平穏に暮らして欲しかった。

それが計画に欠かせない要素なのだ。

移住当日、アレスは月の展望デッキから輸送船の船団を眺めていた。

遠くで燃える白い星へと船が向かっていく。

宇宙に広がる船団を一望してアレスは息を呑んだ。

腕の毛が逆立つのを感じる。

心は一つの思い出しめられていた…私は勝った!


オリジン計画の船は、最後の追放者を運んだ船団が戻ってきてから、1週間後に飛び立った。

出発のセレモニーは盛大に行われた。

識者や政治家たちは、この調査旅行はアトランティスの新たな探査時代…あくまで反蛇紋法の厳しい制限の下での探査だが…の幕開けを告げるものだと喧伝した。

科学者チームの目標は、監視船内の星々を回って銀河一帯に存在する人類を調査し、進化の秘密や、”原点の謎”そのものを解き明かすことだった。

そして多くの者が、それが分かれば蛇紋のリングがなぜ”原存在”の力を利用できるのかもわかって、蛇紋軍を倒すヒントが得られるはずだと考えていた。

だからこそ、チームはずっと禁止され、数千年の間語られることさえなかった調査旅行を行う機会を与えられたのだ。

ヤヌスが言ったことで、正しいことが一つある。

このプロジェクトは、イシスが研究を続けるのに最適な環境を与えるだろう、という話だ。

最も、本当の動機はオリジン計画とは別のところにあるのだが。

初めて科学調査船の内部を巡ったときは、とにかく圧倒された。

大昔の船は途方もない大きさだったのだ。

何百もの研究室が並び、中央には、一つの星の生態系をそっくり再現できる巨大なARC室が2つあった。

移住してすぐの頃に建造されたこの船は、監視線内の構成や惑星を隈無く調査するために使われた。

実際に現地まで飛ぶのは大抵探査機や偵察ドローンだったが、船には大規模な科学調査チームが乗り込んで追跡調査を行っており、アトランティスの安全を脅かす可能性のある星は、入念に調べられたのだ。

また、巨大なARC室に星の生態サンプルを収めて持ち帰り、新たなアトランティスの故郷で専門家に調査させるということも行われていたという。

そのように、昔は科学調査のために使用されていたARC室だが、イシスやヤヌスの時代には、観賞用として役立てられることになった。

アトランティスの市民が、故郷にいながらにして他の星を訪れてみたいと熱烈に望んだからだ。

そして、オリジン計画の船がどこかに着陸するたびに、次は何が運ばれてくるのかが世間の話題になった。

そうした注目は、プロジェクトへの支持や資金を集めるのにも役立ったし、実際のところ、それこそがARC室の中身を確保する大きなモチベーションになっていると思われた。

一方、イシスの印象で言えば、アレスや評議会が求める科学者への定期的な検査はやる気を萎えさせる要素だった。

彼らが帰郷した時には、必ず二ダースほどの専門家チーム…感染病の専門家やナノテクノロジーの研究者、精神分析医など…がやってきて、一人一人を徹底的に検査したのだ。

だが、彼らが何か有害なものを故郷に持ち帰ったことは一度もなかった。

やがて世間は、彼らがARC室に入れて持ち帰るものにも、徐々に興味を示さなくなっていった。

しまいにはどの星も似たり寄ったりだという話になり、ヤヌスやチームは、何とか人々の関心を取り戻そうと少しでも風変わりな種を探し回らねばならなくなった。

しかしその頑張りも虚しく、ARC室の見物客の列は短くなる一方だった。

何年もたつと、世間の目には調査データさえ似たり寄ったりに映り始めた。

どの惑星へ行こうと、新たに見つけたヒト科動物の特徴が、人々の興奮を誘うということはなくなった。

世間の無関心は、やがて調査チームにも影響を及ぼすようになった。


続く⇨

転移宇宙・アトランティス・ジーン(3)A・G・リドルー213

2022.06.09.22:52

イシスは緊張していたが、周囲の人々ほど怯えてはいなかった。

これで世界中が反労働者勢力の側に回ってしまうだろう、とイシスは思った。

彼らの反乱は終わる。

これだ最後の決め手になって、ついに市民は強硬な手段に出るだろう。

それがどんな手段かは想像するしかなかったが。

不穏な筋書きを頭から追い払い、列から一歩前に出た。

「お前は29383番だ。」

男が言った。

「繰り返せ。」

「29383番。」

イシスは言った。

行列の向こう側で、男が二人何やら言い争いをしていた。

「お前は俺たち全員の墓穴を掘ったんだぞ。」

「俺は救ったんだ、リュコス。根性なしのお前に代わってやるべきことをやったのさ。」

相手の男、リュコストイシスの目が合った。

彼はイシスを知っているかのように、ぴたりと動きを止めた。

番号を振っているマスクの姿の男が列から次の者の名を呼び、イシスに言った。

「先へ進め、29383番。」

重い足取りで前方の集団に合流しようとしたが、そこでリュコスに止められた。

彼はイシスの腕を引き、先ほど口論していた男の元へ連れて行った。

「俺はこういうことを言っているんだ。」

リュコスがこちらを指差して言った。

「この人が誰だか知っているか?」

「もちろん、人質さ。おい、お前は何番だ?」

イシスが答えようとすると、リュコスが遮った。

「答えなくていい。いいか、彼女はドクタ・トレイティア・イシスだ。進化遺伝学の研究者で。」

相手の男が両手を上げた。

「申し訳ないが、進化遺伝学者の知り合いはあまり多くない。」

「彼女はな、俺たちに知識層と同じ能力を与える遺伝子療法を開発した人だ。」

はたと動きを止めた反乱軍のリーダーに、リュコスは続けて言った。

「彼女は明日の討論会でその研究を発表することになっている。いや、なっていたというべきだな。今はこうして人質にしてしまった。彼女はずっと俺たちの主張を支持してくれていたんだ。」

リュコスがこちらに顔を向けた。

「まだ支持してくれる気があるといいんだが。それに、一部の活動家が野蛮な方法をとってしまったことについて、俺たちからの謝罪を受け入れてくれるといいんだが。」

そういうと、彼はイシスが何か口にするのを待った。

「その…ええ、受け入れるわ。」

「では、君を解放しよう。」

リュコスが言った。

「それから、できれば明日は予定通りスピーチをしてもらえないか?」

イシスは頷いた。

「わかったわ。」

リュコスがイシスをその場から連れ出した。

もう一人の男が、二人に叫んだ。

「もし連中がまともに耳を貸すとしたら、それは俺たちが人質をとったおかげだからな。」

リュコスはイシスを連れて廊下を抜けた。

彼が何も言わないでも、見張りの者たちはひとつ頷いてすぐに道を開けた。

最後の検問場所を通ってビルを後にし、二人きりになったところで彼が言った。

「君をこんな目に合わせてしまって本当に申し訳なかった。もう統制が取れなくなっているんだ。研究を発表してもしなくても、このことは彼らに伝えてくれないか。何か手を打つ必要がある。今回の方法を支持しているのは、ほんの一部の人間だ。だが俺たちは、必要とあらばどんな犠牲も払う覚悟でいる。」

 

評議会はすっかりパニックに陥っており、アレスは大いに満足していた。

彼らは思った通りの方向に進んでいる。

アレスは上座に座り、ノモスの話を適当に聞き流していた。

「革命主義者たちは君の軍を完全に舐め切っているぞ。」

「まるで戦力になっていないじゃないか。」

他の議員も言った。

「その通りだ。」

そう答えると、アレスは立ち上がった。

「解決策はあるのですか?将軍。」

女性の議員が聞いた。

「明日の討論会で答えよう。」

議員の一人が会議テーブルに拳を叩きつけた。

「今聞かせてもらいたい。このままでは明日まで持たないかもしれないぞ。諸君、意見を出してくれ。労働者だけに感染する病原体を作るのはどうだ?それとも、被害が拡大しないうちに、占領された区域を(番人)に爆撃させるか?」

場内が一気に騒然となった。

アレスは一人ドアから抜け出した。

不思議なもので、明日から戦いが始まるとわかったその夜は、いつになく深い眠りが訪れた。

 

41

 

翌日の討論会でアレスは議長用のボックス席に座り、発表者たちが入れ替わり立ち替わり中央のステージに立って、自説を叫ぶのを見つめていた。

講堂は3千人の出席者で埋まっており、会の模様は世界中の数百億人の視聴者にも中継されていた。

政治家なら誰でも夢見る瞬間だろう。

議題は今後の社会のあり方を決定づける重要な問題で、ここで票を得られれば、自分の名は人々の脳裏に刻まれる。己のつまらない名前と顔が歴史データに保存され、永遠に世に残ることになるのだ。

彼らはスポットライトを奪い合い、まさに足を引っ張りあって、1秒でも長く栄光の時を手に入れようともがいていた。

そして、時間の半分は時間についての言い争いで消費されていた。

この発表者の持ち時間は後どれぐらいだとか、前の者は超過していたとか、今まさにこの時間を無駄にしている者からは削るとか、なぜ労働者勢力との歩み寄りに失敗したのか、この光景を見れば理由は明らかだ。

とはいえ、状況が状況なだけに、どの陣営も事態の緊急性は認識しているようだった。

そして、大半の者が過激な解決策を打ち出していた。

議論は一日中続いたが、アレスは未だ無言を通していた。

自分の解決策は最後に発表したかった。

それが結論になるはずだからだ。

夜の部が始まってすぐに、一人の科学者が壇上に上がった。

本当は昼の部に発表する予定だったのだが、姿を現さなかったのだ。

労働者支持派の中には、昨日の暴力の激化を目にして主張を引っ込めた者も数多くいるため、評議会は彼女もその一人だろうと考えていた。

だが、どうやらこのイシスという科学者は、思い直したようだ。

数人の発表者が彼女のために時間を捻出し、その時間を使って、彼女は自分が手がける世界規模の研究プロジェクトについて説明した。

何でも、アトランティス人全員のゲノムを解読したのだという。

イシスはそのデータを他のヒト科動物のゲノムと比較し、なぜアトランティス人が他の種族とは異なる進化を遂げたのか、その原因となった遺伝子を探り当てたということだった。

比較に用いられたヒト科動物のゲノムは、最初の故郷の星が崩壊する前、今では探査時代と呼ばれるようになった時代に、アレスの遠征船団が集めたサンプルだった。

イシスは、このアトランティス遺伝子を操作すれば全てのアトランティス人の認知能力を平等にできると主張した。

そして、簡単な遺伝子療法だけでそれが実現するという話に至った頃には、会議中が彼女の提案に乗り気になっていた。

アレスは愕然とした。

すぐさま椅子から立ち上がり、ボックス席に据え付けられた演題に向かった。

場内のざわめきが退き、アレスのマイクのランプが緑に変わった。

照明が暗くなったのか、そこにいるのはアレスと眼下のステージに立つイシスだけになったように感じられた。

彼女の背後の大スクリーンには、画面いっぱいにDNAの二重螺旋構造が映し出されている。

それを目にした時、アレスは改めて自分が正しいことを確信した。

「お前が話していることは、大変動につながる。」

アレスは口を開いた。

「シンギュラリティだ。かつてそのような技術を追求した星を、種族を、我々は一つだけ知っている。その結果、彼らに何が残ったか。宇宙に絡みついて全人類を絞め殺そうとする、恐るべき蛇だけだ。」

「これは制御不能な技術ではありません。ほんの少し修正するだけなんです。」

イシスが言った。

「その後は?たとえそれが成功しても、必ず他者より賢い者は存在する。人より足が速い者もいれば、容姿が優れた者だっているだろう。その場合は遺伝子を平等にしなくていいのか?誰が線引きをする?私が遺伝子的に劣っているか、治療が必要か、一体誰が決めるのだ?私が10000年後にまた目覚めた時には、おそらくアップデートが必要になるだろう。だが、私は今のままがいい。そういう場合、自分の遺伝子に対する権利はどうなる?」

「治療は強制ではありません。任意です。」

会場が一斉に騒ぎ始めるのを耳にし、アレスは薄笑いを浮かべた。

彼女を追い詰めた。

ここにいる者たちは抜本的な解決を望んでいる。

強制せずに部分的な解決で済ませるなど、空き缶を道路に蹴り出すのと変わらない。問題を先送りにしているだけなのだ。」

「私の解決策は任意ではない。」

アレスは言った。

会場中のボックス席や桟敷席から声が上がり、スイッチの入っていないマイクに向かって同じことを叫んだ。

「どういう解決策だ?」

「私はかつて同胞たちをこの星へ連れてきた。そして、大移住時代の創設者たちとともにある目標を立てた。一つの星でまとまった社会を築き、それを永遠に存続させることだ。反蛇法は我々自身から我々を守るために記された法であり、誰もこれを破ることはできない。破らせてはならない。」

アレスはまばらに上がった声を無視した。

「とはいえ、一つの星に一つの社会という理想を平和的に実現するのは不可能だろう。だが、同胞たちの間で戦いが起きるのを見たくない。私は戦わないし、戦える者などいないはずだ。そこで、我々は二つの星で一つの物語を紡ぎたいと思う。明日の対立を回避し、あらゆる市民に平等とチャンスを与える方法だ。我々が大移住時代に作った船がまだ残っている。科学調査船、輸送船、採鉱船からなる船団だ。知っての通り、我々は監視線内にある星を全て地図にした。労働者階級の新たな故郷にできる星はたくさんある。彼らにはそこで自分達の世界を築いてもらいたい。無論、蛇紋の禁を守ることが条件だ。これを守れなければ、彼ら自身も我々も危険に晒されるからな。」

早速質問が飛び始め、アレスも次々とそれに答えていった。

”採鉱船を改造し、新たな星を人の住める場所に作り替えさせる。自然災害がなく、宇宙の脅威からも守られた安住の地になるだろう”

”輸送船は(番人)の製造工場まで人員や部品を運ぶのに使っている。移住者たちを新たな星まで運ぶのにも使えるはずだ”

議論はその後すぐに、出ていくアトランティス人をなんと呼ぶかという話に移っていった。

ある陣営が、強制的に追い出すのだから”追放者”と呼ぶべきだと指摘したからだ。

分離主義者はどうかという者もいたが、面白いがちょっと過激だろうという話になった。

そして、あれこれ意見が出た末に、呼び名は植民者に落ち着いた。

無論そう名づけたとしても、決して探索や植民のために星から出ていってはならないという、蛇紋の禁は守らせることになるのだが。

主な質問が片付き、議題が細々とした問題、例えばどこの区域から先に移すかとか、各人が持ち出せるものは何かとか…に移ったところで、アレスは議論の輪から抜け出した。

「投票権はお前に託す。」

イシスにそう言い残して、会場を後にした。

彼らは真夜中にアレスを起こした。

彼らに10000年も眠らされ、その間に星をめちゃくちゃにされた身としては、皮肉なものを時感じずにはいられなかった。

「もうすぐ投票だ。」

ノモスが言った。

「ただ、譲歩が必要になった。まとまった票を持つ陣営が、探査活動に関する規制を緩めろと言っているんだ。深宇宙探査用の科学調査船を使いたいらしい。」

「目的は?」

「彼らは”オリジン計画”と呼んでいるが、要は原始的なヒト科動物を調査したいようだ。」

アレスはしばし考え込んだ。

厄介ごとを引き起こす可能性はある。

「いいだろう。ただし条件が二つある。まず、軍事用ビーコンを飛ばしてる星には近づかないことだ。宇宙にはそういう星がいくつかあるが、近づけば命はない。次に使う船は一隻だけにしろ。何百隻もの船で銀河をパレードするのは危険だからな。」

数時間後、彼らは再びアレスを起こした。

第二の移住を強制する法、”アトランティス平等法”が僅差で承認されたという報告だった。

 

続く⇨


転移宇宙・アトランティス・ジーン(3)A・G・リドルー212

2022.05.15.11:59

本音を言えば、イシスはヤヌスの提案にかなり魅力を感じていた。

一生に一度の大チャンス、まさにその通りなのだ。

だが、この星を揺るがしている平等問題に背を向けるなど、やはり身勝手なことだと感じてしまう。

明日のスピーチのことを考えた。

願望を交えて言えば、自分が発表する研究は、この大論争の流れをひっくり返し、社会が進む方向を変える可能性があった。

ハイリスクな賭けであり、ビルから空中通路へと足を踏み出す頃には、イシスは早くも緊張を覚え始めていた。

イシスは夜にビルの間を歩くのが好きだった。

ガラスの通路を歩いていると、街の上を飛んでいるような気分になる。

そして、ときどき無性にガラスの外を見つめたくなる。

向こうのほうで火柱が上がり、その直後にビルが崩れ落ちた。

そしてもう1棟。

空中通路が支えをなくして次々と落下していくのが見える。

道路網が一斉に震えたように感じた時だった。

続け様に爆発が起き、轟音がイシスの方へ波のように迫ってきた。

地面は足元のはるか下方、300メートル以上も離れたところにある。

通路の入り口と出口に素早く目をやった。

前方のビルが震えて通路も揺れ、床に亀裂が走って天井のタイルが降り注いできた。

イシスは両手で頭を覆ってどうにか通路を渡り切った。

エレヴェーターは動いていなかったので、人が溢れる階段に自分も体を押し込み、ビルから必死で脱出しようとする群衆の流れについて行った。

地上階に着くと、武装したマスク姿の一団が彼らを暗い待機所へと追い立てていた。

時折大声を上げて先を急がせ、列からはみ出した者をすぐさま押し戻している。

人の流れが絶えた頃、捕獲者の一人が進み出てこう言った。

「お前たちはもう市民ではない。お前たちはもう、知識封建主義のもとに数千年にわたって我々を苦しめてきたエリートの一員ではない。お前たちは今や道具にすぎない。革命のための道具なのだ。お前たちには番号が振られる。そして、この平等運動の人質になってもらう。」


40


この3時間、アレスは病室を巡り、火傷や骨折や、破片による負傷で治療を受けている市民たちと言葉を交わしていた。

小さな病院はパンク寸前だった。

廊下は混乱の渦に呑まれ、誰もが大急ぎで走り回っている。

その嵐の中で、アレスは人々の心を鎮める灯台のような存在だった。

そして、目の前に広がるその悲惨な光景が、アレスに確信を与えていた。

やはり自分の決断は間違っていなかった。

やるべきことをやらねばならない。

スタッフの一人が病院に付属する建物へとアレスを連れていった。

普段はオフィスとして使われている場所だが、今は仮説の精神病棟になっているという。

アレスには、どの部屋にいる市民も同じ症状のように見えた。

皆、植物状態にある。

「彼らは復活症候群を患っているのです。」

医師が言った。

初めて聞く病名だった。

案内係がアレスの表情に気がついた。

「あなたの時代にはなかった病名ですね。おそらく、このような症状自体が存在しなかったでしょう。この病気の患者は、精神的な問題により、復活後の人生を受け入れることができなくなっているのです。もっと具体的に言うと、彼らの脳はある特定の記憶を受容できずにいると言うことです。このケースでは暴力的な死の記憶ですね。復活症候群の患者は、我々の生活スタイルの変化とともに増えていきました。許容できる感情の範囲が変わったことが原因の一つかも知れません。それに、復活を繰り返すことも危険因子になります。この患者たちの中には、テロ攻撃の第一波で死んだ際には症状が全く見られないか、ごく軽い症状しか見られなかった者たちがいます。しかし、その彼らも今回復活したときには、緊張病性昏迷に近い状態にありました。いずれにせよ、この症候群の患者は、今後爆発的に増加する可能性があるのです。」

アレスは頷いた。

話を聞く限り、あと2、3千年もすれば復活に耐えられる者は一人もいなくなるのではないかと思った。

イアフォンのスイッチが入り、副司令官の声が響いた。

「将軍、新しい展開がありました。テロリストが人質をとったようです。」

アレスはニンマリした。

”これで事態が動き出す”


続く⇨


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なんだか、この小説で描写されていることは、「グレートリセットと言われていることが起きた後の世界が、結局、破綻していく」姿を示唆しているような気がする。


転移宇宙・アトランティス・ジーン(3)A・G・リドルー211

2022.05.14.20:05

39

目を覚ますとケイトはびっしょり汗をかいていた。
体中に痛みも感じる。
だが、もっともつらいのは肉体の痛みではなかった。
全身が鉛にでも変わってしまったように、一つ一つの動きが重い。
体を引きずるようにしてベッドを下り、服を身につけた。
部屋を出てみると、他の者たちの間に漂う雰囲気も似たようなものだった。
ミロが悲しみをあらわにする姿を見たのは、これが初めてかもしれない。
彼は床から目を上げようともしなかった。
ポールとメアリもすっかり参っているようだった。
何日か前、モロッコの山中から命からがら逃げ出し、初めてアルファ・ランダーを目にした時のように。
その三人の姿がケイトの気持ちを動かし、覚悟を決めさせた。
彼らには私が必要なのだ。
彼らのために強くならなければ。
そう思うと、どこからか新たな力が湧いてきた。
「まだ終わりじゃないわ。」
ケイトは言った。
「私に計画があるの。」
「本当か?」
ポールが聞いた。
思った以上に驚いた声が出てしまったという様子だった。
「ええ。」
ケイトは彼らを連れて共有スペースからブリッジへ移動した。
それからスクリーンを起動し、映像の向きを変えて外の景色を映し出した。
焼け落ちた都市の跡だ。
「外へは出ないでと言ったでしょう。この星はアトランティス人科学者の記憶の中で見たことがあるの。彼女はここへ降りたことがある。この船で来て、外へ出て行った。思うに、彼女はこの星を見張る集団かなにかに殺されたのかもしれないわ。
そして復活した。だから、ヤヌスは記憶を消したのかもしれない。それに、だから私は記憶を再生したときに…。」
「具合が悪くなったのですね。」
ミロが怯えた声を出した。
「ダメです、ドクター・ケイト。」
「仕方ないのよ。」
ケイトはスクリーンを調整し、ビーコンが大気圏に突入して、今は1本の白い筋だけが残っている場所を映した。
「実は、ビーコンが落ちたせいで私たちはここに閉じ込められてしまったの。悪い知らせよね。でも、いくつか選択肢はあるわ。この着陸線の通信アレイは無傷で残っている。それに船もちゃんと動く。ここから飛び立って軌道上まで行くことができるのよ。」
「この船はどの程度の距離を飛行できるんだ?」
ポールが聞いた。
「残念ながらあまり遠くへは行けないわ。この着陸船にはワームホールを生成する機能がないから、超空間移動ができないの。でも、信号を送ることは可能よ。助けを求めてみることはできる。ビーコンがなくなった今、この星は外からも見えているしね。」
「それに、この星は厳重に見張られているんだよな。」
ポールが言った。
「少なくとも昔は誰かが見張っていた。」
「その通りよ。」
ケイトは言った。
「まさにそこから手をつけようと思っているの。アルファ・ランダーと同じで、この船には適応実験室がある。ヤヌスがパートナーから隠したがっていた記憶は全てメモリ媒体に保存してあるわ。それを実験室で再生して、この星に関する情報がないか探って見ようと思うの。ここがどんな星で、誰が見張っていて、どうしたら助けを呼べるか調べるのよ。」
ケイトはメアリとポールに顔を向けた。
「アトランティスのシステムの使い方を学べるよう、ここの端末をプログラムしておいたわ。あなたたちならすぐに覚えられるはずよ。デヴィッドやミロも、何日もかからずに使えるようになったから。」
そこでつい口調が変わってしまったが、とにかく話を続けた。
「システムの使い方を覚えたら、例の2つのシグナルを調べてみてほしいの。メアリが地球で受信したものと、蛇紋の戦場から送られてきたもの。うまく行けば、そちらが突破口になるかもしれないわ。何かを掴めれば。」
「私は何をすれば?」
ミロが聞いた。
「あなたには私の手伝いをしてもらうわ。私が記憶再生装置に入っている間、バイタルを監視してちょうだい。そして、もし何か起きたらポールに知らせて。彼が船の医療システムを操作できるように協力してあげて。」
ミロが頭を振った。
「私は賛成できません。デヴィッドも賛成しなかったはずです。」
「デヴィッドとは…私たちがここへくる前に話をしたの。蛇紋の戦場を見たことで、彼は状況の深刻さを悟ったのよ。そして、わずかでも望みがあるなら、たとえ危険でもチャンスに賭けるべきだと考えるようになっていた。これはそのチャンスなの。もう一つはシグナルの解析。それから私たちの脱出計画よ。」
ケイトはミロと共にブリッジを後にした。
若者はもう反対しなかったが、ケイトがタンクに入るのを恐れているのは明らかだった。
デヴィッドと共に瀕死のケイトを見つけた時とそっくりな、黄色く光る巨大なタンクに入ることを。
ケイトは努めて平静を装い、再びタンクに足を踏み入れた。
だが、今一度あの仮想の駅に立ち、今は全ての記憶が揃っている案内板を目にすると、じわじわと恐怖が込み上げてきた。
記憶の中で一体何が起きるのだろう?
体にどんな影響が出るのだろう?
しかし、他に手はなかった。
一つ目の記憶を選んで読み込んだ。
ヤヌスが抜いた記憶の中で、一番早い時期のものだ。
駅が消え、ケイトはどこかの研究室に立っていた。
目の前にヤヌスが立ち、壁に投影された星を指差しながら何やら興奮気味に話している。
左手には窓が並んでおり、その向こうに煌めく大きな都市が広がっていた。
縦横に走る空中通路がビルをつなぎ、街は活気に溢れている。
束の間、ケイトはその光景に目を奪われていたが、しばらくするとその驚きが消えていった。
そして、それと入れ替わるように状況が飲み込めてきた。
特に考えずとも自分が今いる場所がわかる。
アトランティス人の新たな故郷だ。
自分のことも知っている。
自分の仕事、自分の望み。
この記憶は他とは違う。
他の記憶では、行動こそ科学者のものだったが、思考はある程度ケイトがコントロールできていた。
しかし、今はそれができないのだ。
この記憶では、ケイトはアトランティス人科学者の思考を余すところなく読み取ることができた。
そして、その記憶がケイト自身の記憶と交ざり、ついにはそれを押し出してしまった。
ケイトは消え、ただの傍観者として科学者の過去を観察し、感じ取り、追体験しているに過ぎなかった。
この女性の名はイシスだ。
ケイトの意思とは関係なく、彼女の人生が明らかになっていく。
ケイトが最後に考えたのは、もしイシスが記憶の中で死んだら自分はどうなるのだろう、ということだった。
12500年前に、彼女が地球で死んだことを知っていたからだ。

ヤヌスがそれらの星の画像をまた一通り表示した。
「これらの星の全てにヒト科動物がいるんだよ。」
「現在の状況は分からないでしょう。」
イシスはすぐに指摘した。
「確かにそうだ。この調査が行われたのは、大移住期と同じくらい遠い昔だよ。しかし、もし人口を激減させるような出来事が何もなければ、これらの星には今も人間が存在している。それどころか、先進的な文明が築かれているかもしれないし、想像もつかない進化を辿っているかもしれないんだ。よく考えてくれ。進化遺伝学者にとって、これは一生に一度の大チャンスじゃないか。」
ヤヌスは効果を狙うようにそこで間を置いた。
「俺には、君以上に一緒に来てほしいと思える相手はいないんだ、イシス。」
イシスは顔を背け、街が見える窓と向き合った。
「その気持ちは嬉しいわ、ヤヌス。確かにすごいチャンスだと思う。でも、私たちの星は今こんな状態なのよ。その最中に宇宙へ長旅に出るなんて、私にはやっぱりできないわ。」
「君が労働者問題についてどう感じているかは知っているよ。」
「平等問題よ。」
イシスは訂正した。
「もちろんだ。」
ヤヌスは頷いた。
そして「平等問題さ」と、労働者支持派がスローガンのように使う言葉を繰り返した。
それは彼も含め、知的職業者側がプライベートでは決して口にしない言葉でもあった。
イシスが黙っていると、彼は先を続けた。
「平等問題は俺たちがいてもいなくても、結果は変わらない。俺たちは歴史を創れる、アトランティスの理想を追求することができるんだよ。俺たちはこれを”原点探求計画”と呼んでいる。」
「蛇紋の禁に引っかかるに決まっているわ。」
「法が変わるかもしれない。」
「そういう話があるの?」
「まだ噂に過ぎないが、規制が緩和されそうだという話を聞いたんだ。労働者の反乱に対処するために。」
彼が慌てて言い直した。
「いや、平等問題に。」
「興味深いわ。」
「準備は万端だ、イシス。すでに調査船団の船の改造も済ませている。
「冗談でしょ。」
「本当さ。もちろん古い船ばかりだが。」
「大移住時代に、新たな監視線の地図を作るために使われた船でしょう?それからは一度も飛んでいないのよね。」
「大丈夫だ。実際にテストしてみたからな。それに、そのうち新しい船も作れるはずだ。」
にわかには信じる気になれず、イシスは頭を振った。
「また明日にでも話せるか?討論会でのスピーチが終わった後で。」
「構わないわ。」

続く⇨

転移宇宙・アトランティス・ジーン(3)A・G・リドルー210

2022.05.08.22:35

次のテロ攻撃がいつになるのかわからなかったが、それはさほど重要な問題ではなかった。
アレスにとって未来は明らかで、今は決まった答えに向かって方程式を解いているようなものだったからだ。
アレスは滅多に眠らなかったし、寝たとしても途切れがちだった。
アレスは自分にあてがわれた部屋のデスクに向かい、妻からの手紙を読み返し、彼女の映像を眺めた。
数々の筋書きを思い浮かべ、どうすれば結果が変わっていたか繰り返し考えてもみた。
だが、結局のところ自分は役目を果たしただけであり、たとえ自分がせずとも、他の誰かが先か後に同じことをしたはずだった。
あのアバターは正しかったのだ。
今ならそれがわかる。
彼は、誕生しては消えていく世界を一体どれだけ見てきたのだろう。
数千?
数百万?
もっとだろうか。
あのアバターは、皆が規範に従って素朴に生きることを勧めていた。
アレスは想像してみた。
市民全員が知的であると同時に労働者で、どんな命も尊重される世界。
そこでは誰もが規範を正しく理解している。
あの時の自分を思い出し、つい苦笑してしまった。
自分はこう考えたのだ。
”戦ってやる”
だが、戦うべき強大な敵など一度も現れず、無力な犠牲者がわずかにいただけだった。
人々を悩ませ、一致団結させるような脅威が迫ることもなかった。
蛇紋軍が現れず、何の不安もない日々が続くうちに、人々は戦う意志そのものを失っていった。
実際、数千年ぶりに暴力に直面した今、彼らが解決策として選んだのは、アレスを休眠から叩き起こすことだった。
野蛮人を打ち負かすため、ほとんど忘れ去られた過去の化石を掘り起こしたのだ。
いや、本当のところ、彼らはできれば戦いたくないのだろう。
そこに人間の不幸な現実が見える。
何の衝突もなく、挑戦する機会もなければ、心の炎はたちまち消えてしまう。
そして、その炎がなければ社会は停滞し、徐々に衰退の道を辿ることになるのだ。
もはや、この星の状況を改善する方法は一つしかなかった。
ガンを取り除かなければならない。
恐れる気持ちはあった。
だが、それは衝突であり挑戦であり、自分が存在する理由だった。
もしかすると自分はそのためだけに生きているのかも知れない。
窓辺に近寄り、彼らが築いた脅威的な都市を見渡した。
しかも、こうした都市がこの星には何千とあり、地表をほぼ隙間なく覆っているという。
綿密に計算された都市だった。
古い星の、アレスが生まれ育った都市とは違い、これらの超巨大都市では自然が金属やガラスと程よく混じり合い、いわば美観と機能を兼ね備えた一枚の絵を仕上げている。
147階の自分の部屋から下方に目をやり、ビルの屋上を緑と茶色に彩っている森や広場や庭園を眺めた。
屋上の少し下には空中通路が走り、蜘蛛の巣のようにビルとビルとを繋いでいる。
その通路を歩行者やポッドが移動する様は、まるで金属とガラスでできた輝く迷路を虫の群れが這い回っているようにも見えた。
街を照らすライトもやはり計算されているらしく、美しさと機能が最適なバランスを保つように配置されている。
一部のビルの屋上には巨大な温室があり、青々と茂る植物が成長促進用のライトと夜の街の明かりに照らされて煌めいていた。
こんなにも先進的な文明社会に、なぜ亀裂などが生じてしまったのだろう…それも、芯に達するほど深々と。
街の反対側で爆発が起き、空中通路が揺れて落下した。
ビルが粉々に崩れていく。
一帯が瞬く間に火に呑まれ、立ち込める煙が光とガラスの金属の絵をかき消した。
アレスの背後でドアが開いた。
「第4、第6区画で爆発がありました、将軍。」
手早く着替えを済ませると、アレスはすぐさま新設の軍を率いて現場に向かった。
彼らは戦闘区域の手前で行進を止めた。
また爆発が起き、逃げ出す市民と悲鳴の波が押し寄せてきた。
アレスの傍にいる兵士が咳払いをし、静かに言った。
「始めますか?」
「いや、しばらく放っておけ。我々がどう言う者と戦っているのか、世界に見せてやるのだ。」

続く⇨

転移宇宙・アトランティス・ジーン(3)A・G・リドルー209

2022.05.04.20:07

38 

その星は、かつてアレスが死に瀕した同胞たちと移り住み、一から社会を築き上げた同じ星だとは思えなかった。
清潔できらびやかだが窮屈で、人々は怒りに満ちている。
彼らは沿道を埋めて押し合いへし合いし、プラカードを掲げて叫んでいた。
”蛇紋の禁=隷属”
”発展=自由”
”アレスこそが真の蛇紋”
会議場では、愚鈍な集団がアレスの愛する星の窮状について詳しく説明した。
それによると、アトランティスの社会は知的差別によって分裂し、二つの勢力に分かれてしまったということだった。
知識階級と労働者階級だ。
知識階級は全人口の8割近くを占めており、アレスに理解できる範囲で言えば、日々、頭脳を使ってものを作っているらしかった。
芸術、発明、研究、その他、アレスにはよくわからないし、詳しく訊ねる気も起きない様々な活動を通して。
一方、残りの2割を占める労働者階級は自分の手を使って暮らしを立てていたが、それにうんざりしているようだった。
公的援助ありきの賃金や、社会保障制度にうんざりしているのだという。
そのシステムに組み込まれている限り、自分達は永久に第二の階級に固定化されてしまうと考えているからだ。
問題の核にあるのは、教育が限界に達し、それ以上学習者の知的能力を向上させられなくなったことだ。
そこでどちらの階級も気がついた。
知能が高い者は元々知能が高く、その子供たちも高い知能を有するのだと。
そして、労働者階級にも同じことが言えるのだと。
2つの階級間で結婚する例は、目に見えて減って行った。
知識階級が、2度と這い出せない下の階級に自分の子孫を落とす危険を避けるようになったからだ。
経済的、社会的な断絶は次第に階級間の緊張を高めていった。
平和を維持するために様々な調整や取引が行われたが、結局は歩み寄ることができなかった。
そしてその結果、労働者階級に残された交渉手段は暴力だけになってしまった。
スクリーン上には、労働者勢力の活動がどのように不穏さを増していったか詳しく示されていた。
彼らの抗議活動は時間と共に暴動に変わり、散発的な攻撃になり、ついには数千人の命を奪う組織的なテロへと発展してしまったのだ。
アレスは問題の所在について考え込んでおり、評議会の議長、ノモスの話をほとんど聞いていなかった。
「1番の問題は警察機関にある。」
「どういうことだ?」
アレスは聞いた。
「過去3百年に渡り、我々の世界には警察が存在しなかったのだ。理由は単純で、ごく稀にしか犯罪が起きなかったからだよ。市民による監視と広域監視装置があれば、どんな犯罪者でも必ず捕まえることができた。しかし、この件は違う。彼らは自分達の大義のためなら喜んで命を投げ出す。子供たちに自分と同じ苦しみを経験させないためならな。」
他の評議会議員が口を開いた。
「それ以上に大きな問題は、新設した警察の人員を労働者階級から集めねばならない点だろう。そうなれば、彼らを信用することなど不可能になる。彼らは政府を転覆して、全権力を掌握するかもしれない。多分、ここにいる誰もがそれを恐れているはずだ。あえて口にするのは私だけだろうがな。」
しばしの沈黙が訪れた。
やがて、ノモスが口を開いた。
「アレス、我々には打開策として考えていることがある。君を起こして…相談したかったのはそのことだ。実は、蛇紋の禁を緩めようと思っているんだよ。」
アレスは思わず声を荒げた。
「理由があって作った法律だ。我々自身から我々を守るための法だぞ。」
ノモスが手を上げた。
「ほんの少し緩和するだけだ。3つの規制のうち2つをな。まず、遺伝子工学の禁止を解きたい。今回限り、労働者の知的平等性を確保するために、1度だけ治療を施すんだ。それにもう一つ、ロボット工学の規制を緩めて、肉体労働を任せる単純なドロイドを造りたいと思う。この2点さえ変えれば、安定化した平和な社会が…。」
アレスは立ち上がった。
「愚か者どもめ。一度でも遺伝子工学やロボット工学の箱を開けてしまったら、我々の世界もいつか必ず蛇紋の世界に変わってしまう。たとえ侵略されていなくてもな。断言できる。まさにこういう形で蛇紋の破滅は忍び寄ってくるのだ。我々も先人と同じ過ちを繰り返すことになるだろう。耐えられない。私を眠りに戻すか、できれば永遠の死を迎えさせてくれ。とてもみていられないからな。」
「君ならどうする?」
「単純な問題だ。」
アレスは言った。
「2割の人間が残りの者たちを殺しているのだろう。では、彼らに消えてもらうしかない。」
アレスは自分の軍の訓練風景を見回した。
もし軌道上にビーコンがなく、この星の光が隠されていなかったら、宇宙は彼らを見て笑い転げていたことだろう。
評議会の判断は正しい。
治安維持組織の人員を労働者階級から確保するなど、無論愚かな行為に決まっている。
次善の策として、アレスは知識階級から目的に叶う者を集めることにした。
たとえばファッションモデル、引き締まった逞しい体つきをしており、実態はともかく、堂々とした印象を与える術を身につけている。
それにダンサーや曲芸師…自分の身を守るために戦うことはできなくても、滑らかできれのいい動きをする。
そして運動選手…意志が強く、興奮した群衆に囲まれても冷静でいられるだろう。
最も、死人が出始めた時点で怖気づくに決まっているが。
アレスはトレーニング中の彼らを観察した。
彼らは軍隊ではないし、なりそうな気配もない。
だが、彼らの制服姿や訓練の動きはいかにもそれらしく見えた。
肝心なのはそこなのだ。
遠征船団があった時代を懐かしく思ったが、船団もまた蛇紋の禁によって消し去られたものの一つだった。
宇宙探査は未知の危険を引き寄せる可能性があり、最悪の場合、蛇紋軍にまた発見されてしまうからだ。
あの任務を思い出した。
あの時何をし、その結果どうなったかを。
自分が(番人)を捕まえて監視線に穴を開けたせいで、そこから蛇紋の大群が流れ込み、アトランティスの最初の星が襲われることになったのだ。
決して同じ過ちが繰り返されてはならない。
アトランティス人の夢は、一つの星に一つのまとまった社会を築き、ビーコンや厚く張り巡らされた番人の壁に守られて、安全に暮らすことだった。
平和で豊かで、永遠に滅びることのないアトランティスの世界、それを実現するためには、なんとしても3つの誘惑に打ち勝たねばならなかった。
ロボットに頼った楽な労働、遺伝子工学による偽りの進歩、深宇宙を探索したいという欲求。
隣にノモスが来たことに気づいたが、アレスは何も言わず、その能無しが、”君の労に報いて望みを叶えよう”と言い出すのを待った。
だが、いつものようにその期待は裏切られた。
「日に日に軍隊らしくなっていくな。」
ノモスはそう口にして、彼の知能に対するアレスの評価を一段と下げただけだった。
「ああ、こいつらならうまく役を演じるだろうよ。」

続く⇨

転移宇宙・アトランティス・ジーン(3)A・G・リドルー208

2022.04.24.12:08

37

ドリアンはぐっしょりと汗をかいて床に横たわっていた。
今回の記憶はこれまでで一番きつかった。
だが、止めるわけにはいかない。
答えに近づいていると感じているのだ。
あの船…箱舟…は、アレスが南極の氷の下に埋めたのと同一のものだろう。
アトランティス人はまた蛇紋軍に見つかったのだろうか?
蛇紋軍こそがアレスの恐れる強大な敵なのか。
広大な工場へ出て行き、続々と番人を作り続けている組み立てラインに目をやった。
あるいは、番人が彼を裏切ったのか?
ドリアンは食事をとり、残りの真相を目にする覚悟を決めた。

箱船はアトランティス人の新天地に着陸した。
そして、その後の日々の中で、あのアバターが同胞について語ったことは全て事実だと気づかされるようになった。
生まれ変わって復活船から降りた者たちは、誰でもやる気と情熱に溢れていた。
それは見たこともないほど素晴らしい結束力を持つ集団だった。
全員が一つの目標のもとに団結していたのだ。
蛇紋軍を打ち倒すという目標のもとに。
そのために、彼らは持てる力を全て出し切った。
足りない分は箱船のテクノロジーや番人が補った。
箱船の周囲に最初の集落が生まれ、それらはすぐ都市になって、再び文明が出来上がっていった。
法の土台はアバターの話を参考にして築かれた。
テクノロジーの暴走に注意しろという警告だ。
アレスはアバターの要求を拒んだが、同胞たちが時に愚かになり、重要な事実を無視しかねないことも知っていた。
たとえ蛇紋に同化させられていなくても、際限なくテクノロジーを追求していけば、どんな文明社会もへ蛇紋の星のようになりえるという現実を。
反蛇紋法は、特異点となる技術の開発を全面的に禁止した。
制御不能なテクノロジーと闘うこと、それが共通の信念になった。
批准式典の壇上で、アレスは列席者に大声で訴えた。
「我々の最大の敵は我々自身である。蛇紋は我々のうちに潜んでいる。監視線の外の敵を警戒するように、我々は自分自身にも警戒の目を向けなければならないのだ。」
その後は断片的な記憶が続いた。
アレスは軌道上の船の上に立ち、アトランティスの新たな故郷の先に浮かぶ、番人の製造工場を見つめていた。
「もっと増やそう。」
次は別の工場に立っていた。
視線の先には、遠くの宇宙空間へと果てしなく伸びる新しい組み立てラインが並んでいた。
「もっとだ。」
記憶が次々に流れていった。
数々の工場。
新たな番人。
やがて開発の速度が落ち始めた。
アレスは部屋に立ち、もっと研究開発スタッフを増やすべきだと語っていた。
だが、アレス自身がもう自分の言葉を信じていなかった。
情熱はすでに消えていたのだ。
チューブの時間膨張機能と治癒効果により、アレスはいくつもの時代を飛び越え、無人採鉱船とオートメーション型工場が数えきれない量の番人を製造する時代にたどり着いていた。
あの時チューブで蘇った移住メンバーは、誰もが長生きをした。
アレスと同様、チューブを使って最適な健康状態に戻ることを選んだのだ。
しかし、その彼らもとうの昔に生き続ける意志を失い、今は全員が世を去っていた。
一部の者は800歳の誕生日を経験したし、少数ながら1000歳まで生きた者もいたが、最終的にはアレス以外の全員が本当の死を迎え、復活用チューブの力が及ばない場所へと去って、二度と戻らなかった。
気づくとアレスは完全に一人になっていた。
残った創設メンバーは自分一人で、自分と同じ種類の人間はもうどこにもいなかった。
蛇紋軍の虐殺を目の当たりにし、その後、新たな世界を必死で築き上げた人間は。
古い世界が滅ぼされた後、1000年の間は、毎年箱船で徹夜の祈りが捧げられた。
その式典はやがて10年に一度になり、100年に一度になり、ついに開かれなくなった。
チューブを出て評議会に出席するたびに、アレスは自分の星でよそ者になったような気分を味わい、その感覚は回を重ねるごとに強くなった。
同胞たちはのんびりとした快適な暮らしに慣れており、芸術や科学や娯楽にばかり目を向けていた。
番人の工場はどこもかしこも無人で、操業はロボットに任せきりだった。
そしていつしか、蛇紋軍の脅威はただの恐ろしい言い伝えになってしまった。
ゾッとする話だが、あくまで空想の産物だとさえ思われるようになってしまったのだ。
アレス自身は遺物のように扱われた。
古の暗い時代、妄想に取り憑かれ、戦争に夢中になった時代を象徴する、お飾りのような存在だった。
ある時アレスは、自分も本当の死を迎えることにしたと評議会で発表した。
彼らは渋々それを了承した。
裏切りは、翌日、市民への発表があった際に明らかになった。
評議会は投票によってアレスを永久保存することに決めたのだ。
アレスの功績を讃え、アレスや他の移住メンバーが払った犠牲を永遠に記念するためというのが理由だった。
警備員たちがアレスの住まいに現れ、その背後には報道のカメラも詰めかけていた。
箱船の聖堂に続く道沿いには人人垣ができており、大人も子供も、ひと目アレスを見ようと躍起になっていた。
石のファザードに碑銘が刻まれていた。
”我らが最後の戦士、ここに眠る”
アレスは戸口の前で足を止め、評議会の議長に言った。
「どんな人間にも死ぬ権利はある。」
「伝説は死にません。」
手を伸ばして彼女の首を思い切り絞めてやりたかった。
だが、結局アレスは中へ入り、古い世界が滅んだあの日に初めて目にした廊下を進んだ。
そして、チューブに足を踏み入れた。
時間の膨張機能のおかげで、時の流れに苦しめられることはなかったが、アレスが感じている虚しさと孤独を癒せるものは何もなかった。
広大な部屋の入り口に幾つかの人影が現れ、アレスのチューブに駆け寄ってきた。
アレスはチューブを出て、何も聞かずに彼らについて行った。
ひょっとすると考え直してくれたのかも知れない。
希望がーほとんど忘れかけていた感情がー胸の内をよぎった。
箱船を覆う聖堂を後にし、無言のまま夜の暗がりを歩いた。
遠くの方に見たこともない形状の都市が広がっていた。
高層ビルが雲を突いて建ち並び、その間を空中通路がつないでいる。
夜空にホログラムの広告が連なる様は、月を前に悪魔たちが舞を舞っているようにも見えた。
と、爆発が空中通路を断ち切った。
次の爆発はビルの間で起き、両側の建物から火の手が上がった。
まるで消火システムに追いつかれまいとするように、炎がビルからビルへと飛び移って行く。
また爆発があった。
「何が起きたんだ?」
アレスは聞いた。
「新たな敵が登場したのです、将軍。」

続く⇨
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kitako

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