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「アナスタシア・響き渡るシベリア杉」16

2019.04.08.01:57

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また今まで述べた一連の作業は、庭に植えられる作物の種類ごとに行われなければならないが、キュウリ畑やトマト畑などのように、一つの作物がたくさん栽培されている畑では、全ての種について、先に述べた手順を踏む必要はなく、そのうちのいくつかに対して行えば十分なのだそうだ。

このような方法で育った植物の実は、他の方法で栽培されたものとは、味だけでなく様々な面で異なっている。
分析すれば、その実が含む物質の成分比率も異なっているはずだという。
苗木をシャベルで掘ったくぼみに植えるときは必ず、素手で、そして素足で行うこと、手の指と、足の指で土を整え、そこに唾を吐きかけること、とアナスタシアがいうので、私がなぜ足なんだ?と聞くと、彼女は、体の病に関する情報を含んだ物質(おそらく毒素と思われる)は、足から汗として流れ出るからだと答えた。
苗木はこの情報を取り込み、それを実に運び、実はその病と戦う力を蓄える。
だから庭を時々素足で歩くといい、と彼女は付け加えた。
「どんな作物を栽培したらいいんだい?」と私が尋ねると、
「たいていの庭にあるようなもので十分。ラズベリー、スグリ、グーズベリー、キュウリ、トマト、いちご、そしてりんご。甘酸っぱいサクランボや花を植えるのもいい。それぞれの種類ごとの数の大小や、植える区画の広い狭いは全く関係ない。」と彼女は答えた。

「最大限のエネルギーに満ちた微気候を自分の庭に生み出すことが大切。そうするために欠かせないのは、ひまわり(少なくとも一つ)のような植物。それと、1、5メートルか2メートル四方くらいをとって、そこに穀物、例えばライ麦や小麦を植えること。それから、はじめから庭に生えていた様々なハーブを、最小で2メートル四方、島のように残さないといけない。この島は、人工的に種をまいて作るのではなく、自然のままがいい。庭にそういうハーブが残っていない場合は、森の中からハーブの生えている土ごと持ってきて、その島を作らないといけない。」
「すぐ近くに例えば庭を区切るフェンスの向こう側などに、いろいろなハーブが生えていても、庭の中に島を作らないといけないのか?」という、私の問いに答えて彼女は言った。
「大事なのは、植物の種類の多様性だけでなく、それがどのように植えられているかということ。自分で植えて育てて、植物とコミュニケーションを取ることによって、その人の情報がその場に充満して行く。植物の植え方について、大事な点についてはもう話した。大切なのは、あなたを取り囲む自然の一部を、あなたに関する情報で満たすこと。そうして初めて、あなただけに有効な癒しと命のサポート効果が、植物の実だけから得られるものよりも、さらに飛躍的に高くなる。あなた方がワイルド、野生と呼ぶ自然、本当はワイルドじゃなくて、ただ馴染みが薄いだけ。その中には、あらゆる病を完璧に直す多くの植物が存在している。それが、これらの植物が作られた理由。だけど、人間は、それを判断する能力をほとんど失ってしまった。」
我々の世界には、癒しのハーブを販売している専門の薬局や、ハーブで病を治す医者やヒーラーと言った専門家もたくさんいると言うと、アナスタシアはいった。
「一番の医者はあなた自身の身体。身体は最初から、あなたがどのハーブをいつ使うべきかを、食べたり呼吸したりする方法を知っているのと同じように、よく知っている。身体は本来、病気が現れる前に、未然に防ぐ能力を持っている。そして誰もあなたの身体を別のものと取り替えることはできない。なぜなら身体があなたにとって、益となる働きをするためにはどうすべきかについて、話しているだけ。あなたの庭の植物との間に揺るぎない関係が確立されたら、植物たちがあなたの病を直し、面倒を見てくれる。彼らはあなたの健康状態について、的確な診断をし、最も効果的な、あなた専用の特別な薬を作ってくれる。」

続く→



「アナスタシア・響き渡るシベリア杉」15

2019.04.03.11:26

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アナスタシアのアドバイスから

種はお医者様

「種は膨大な量の宇宙からの情報を持っている。」と、アナスタシアは言った。
「人間が作った何ものも、そのサイズにおいても正確さにおいても、種にかなうものはない。種は自分がいつ発芽すべきか、地中からどんな水分を摂取し、どのように太陽や月や星々からの放射を利用すべきか、千分の1秒単位の正確さで知っている。
どんな風に成長して、どんなか果実を実らせればいいのかも知っている。
果物や野菜などの実は、人間を元気付けて持久力を高める目的で創られている。
人間がこれまで作ってきた、そしてこれからつくるどんな薬よりも強力に、植物の実は人間の体組織を襲うあらゆる病と効果的に戦い、しっかりと抵抗する。
ただそのためには、実になる前の種に、その人の体の状態を知らせておかなければならない。
植物の実が、ある特定の人の病気、現在かかっているか発病間近な状態を癒すには、種が実の中身になる物質を、その癒しに必要な成分比率で満たしながら、成熟していくプロセスが不可欠だから。
キュウリやトマトやその他の庭で育てる植物の種に、自分の健康に関する情報を伝える基本的な方法は…。
蒔く前の種を口に入れ、舌の下に少なくとも9分はおいておく。
次にそれを口から出して、両手のひらに包んで約30秒間持ったまま、その種を植える地面の上に素足で立つ。
両手のひらをそのまま開いて、そこにある種をゆっくりと注意しながら口のところに持っていき、種に向かって肺から息をそっと吹きかける。
あなたの息で暖められたその小さな種は、あなたの体の中にあるものすべてを知る。
そのあと種を乗せた手のひらをそのまま開いて空に向け、30秒間、種を天体に見せるようにする。
その瞬間、種は発芽の時期を決める。
そして全ての惑星がそれを手助けする。
あなたのために全惑星が、発芽を必要とする光を天から降り注ぐ。
こうしてやっと、種を蒔くことができる。
種を蒔いてすぐに水をあげてはいけない。
種を包んでいるあなたの唾液や、種に取り入れた情報が、全て消えてしまうから。
水をあげるのは種を蒔いてから、3日後が良い。
種蒔きはそれぞれの野菜に適した時期に、しなければならない。(人はすでにそれを太陰暦によって知っている。)
遅れて蒔くよりは、水なしで、本来の時期より早めに蒔く方がまだいい。
種から生まれた新芽の隣に雑草が生えていても、全て除去してはいけない。
少なくとも各種類一つずつは残すこと。その雑草は、抜かないで切ればいい。」
アナスタシアはによれば、種はこうして蒔く人に関する情報を取り込み、実を実らせていくまでに、宇宙と地球からその人にとって不可欠なエネルギーを、可能な限り最大限吸い込むという。
雑草にもそれぞれの役割があるのだから、やたらの除去してはいけない。
ある雑草は植物を病気から守り、またある雑草は、その植物に捕捉的な情報を提供することもあるという。
植物が育っていく間、種を蒔いた人とのコミュニケーションは不可欠で、その期間に最低1度はできれば満月の夜、その植物にちかずき、触れてあげることが大切なのだそうだ。
アナスタシアが言うには、このようにして育った果物や野菜などの植物の実は、それを蒔き、育てた人が食べると、間違いなくその人のあらゆる病気を癒すばかりか、老化のスピードを緩慢にし、悪習を取り除き、様々な知的能力を増大させ、心の平安までもたらすのだそうだ。
彼女によれば植物の実は、収穫から3日以内に食べるのが一番効果的だと言う。

続く→



「アナスタシア・響き渡るシベリア杉」14

2019.03.29.21:29

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彼女の愛するダーチュニク

アナスタシアは植物と交信する人々に訪れる幸運について、いつも熱く語った。
ちなみに、アナスタシアが特別の情熱を持って夢中になって話すのは、主に二つのテーマについてだった。
一つは子育てについて、もう一つはダーチュニクについてだ。
ダーチュニクなる人々、彼らが存在することの意味について、彼女の話を全てここに紹介したら、誰しもが彼らの前にひれ伏したくなるだろう。
私は正直驚いたが、彼女はこのダーチュニクが人々を飢饉から救い、人々の魂に良き種を蒔き、未来の社会を育てていると固く信じている。
彼女の語ったことを全て列挙しようとすれば、それだけで一冊の本になる。
彼女はダーチュニクへのこうした自分の考えの根拠を示し、それを証明しようと懸命だった。

「今あなたが住んでいる社会は、ダーチャで育てられている植物と交信することで、多くを学べる。それにまず気がついて欲しい。ただあくまでそれは、育てている人が植物を熟知しているダーチャだからできること。愚かなモンスターのような機械が這い回っている人間味のない広大な畑では無理。ダーチャの菜園で土いじりをすると、とても気分が良くなって、そのおかげで多くの人が健康になり、長生きしてきたし、心も穏やかになる。技術優先主義で突き進む道が、いかに破滅的かを社会に納得させる。その手助けをするのがダーチュニク。」
「アナスタシア、それが本当かどうか、いまはいいよ。君がこの話のどこに出てくるのか、どんな役割を果たしているのか、それが聞きたい。」
彼女は私の片手を掴んで引っ張り、草の上に仰向けに寝るように促した。
彼女も私の隣に寝転び、二人して両手のひらを空に向けた。
「目を閉じて。リラックスしてね。これらから私が言う通りにイメージを思い浮かべて。私の光線を使って、遠くにいるダーチュニクの一人を見つけるから。」
彼女はそのまましばらく黙っていたが、少ししてゆっくりと静かな声で話し始めた。
「年配の女性が見えてきた。水に浸したキュウリの種を、チーズクロス(元はチーズを含んだ薄地の網布)、を開けて見ている。キュウリの種は、すでに発芽していて、小さな新芽が見える。彼女はいま、種を一つ指でつまみ上げた。このやり方で種を水に浸しておくと、植えた時に新芽の形が崩れると、いま私が彼女に伝えたから。そういう水は種の生育に適していない。種が病気になってしまうと。彼女はいま、そのことに自分で気がついたと思っている。でも確かにそれは一部正しいの。私は彼女の思考や推測をちょっと手伝っただけだから。彼女はこれから、今気がついたことを他の人たちに伝えて行く。こんな風にささやかな形で、一つのことが成就して行く。」
アナスタシアは、人々が仕事をしているときや仕事を離れているときの、考えうるあらゆる状況、あるいは人間同士の関係や、人間と植物との相互関係におけるあらゆる状況を、どのようにして思い描き、意識の中にかたどって浮かび上がらせるのか、その方法についても話してくれた。
彼女が思い浮かべ、かたどった状況が現実に最も接近した時、その人物とのコンタクトが成立して彼女はその人物を見ることができ、その人の悩みも感情も感じ取れるという。
あたかも彼女がその人のイメージの中に入り込んで、自分の持つ知恵を分かち与えているかのようだった。
アナスタシアによれば、植物は人間に反応するらしい。
その人の持つ愛や憎しみの感情をさらに強化し、健康にもポジテイブあるいはネガテイブな影響をも与えるという。
「ここにもやるべき仕事がたくさんあって、私はダーチャの庭のことで本当に忙しい。ダーチュニクはまるで自分の子供に会いに行くように、庭に植えた植物を見に、ダーチャへ出かけて行く。でも残念ながら彼らの植物への関わり方は直感的なもので、人間と植物の結びつきの本当の目的に気づいていない。地球上の全てのものは、草の葉一枚、昆虫一匹にしても、人間のために作られていて、人間に仕える中でのそれぞれの役割と目的を持っている。たくさんの薬草は、その見事な確証よ。でもあなた方は、自分の健康と幸福のために与えられているこれだけの素晴らしいものについて、ほとんど何も知らない。だからそれを十分に活用できていない。」
植物との意識的な交流がどんな恩恵をもたらすのか、私はそれが知りたくて、アナスタシアに具体的な例を見せて欲しいと頼んだ。
そうすれば実際に見て、科学的研究の対象にできるからと。
彼女は少しの間考えていたが、そのあとパッと顔を輝かせて叫んだ。
「私のダーチュニク、大好きなダーチュニク!彼らがきっと、全てを証明してあなた方の科学を困惑させる。私、どうして気がつかなかったのかしら。どうして今まで考えなかったのか不思議だわ。」
彼女は何か名案を思いつたらしく、一人で興奮していた。
私は悲しげなアナスタシアを見たことがなかった。
真面目だったり、物思いに沈んでいたり、何かに集中していたりすることはあるが、大抵はいつも何かを喜んでいた。
だが今回の彼女の喜びようは普通ではなく、かなり派手で騒々しかった。
彼女は飛び跳ね、手を叩いた。
それに応えて、木々の梢はさやさやざわめき、小鳥は一斉にさえずって、森は一層輝きを増した。
彼女はダンスを踊るようにクルクル回っていたが、ようやく頬を紅潮させたまま戻ってきて、私の隣に腰を下ろして言った。
「きっと彼らは信じる!私の大好きなダーチュニクだから!彼らがあなたに全て説明して証明してくれる。」
私は中断された会話に、彼女をいっときも早く戻そうとして言った。
「そんな必要はないよ。ところで、君は全ての虫は人間に益となるように創られたといったけど、テーブルの上を這うゴキブリに嫌悪感をあらわにする人たちが、そんなことを信じると思う?それとも君は、ゴキブリも人間の益になるように創られたと言うのかい?」
「ゴキブリが這うのは、汚れたテーブルの上だけ。」と、アナスタシアは答えた。
「彼らは人間の目には見えないこともある。食べ物の中の腐ったカスを集めて消化し、無害な排泄物を人目につかない場所に残す。そういう仕事をしている。もしゴキブリが多すぎて困ったら、カエルを一匹連れてくれば、たちまち余分なゴキブリはいなくなる。」
アナスタシアは、ダーチュニクがこれから実践することは、園芸学の通説とは相容れないもので、野菜畑で作物を栽培する際の、一般的なルールをも否定するだろうと言った。
私は彼女の主張があまりに大袈裟なので、各人が機会を見つけてテストして見た方がいいのではないかと思う。
その際、庭を全部使うのではなく、狭い一画で。
何れにしても彼女によれば、その方法は良いものしか生み出さないらしい。
付け加えておくが、彼女が語ったことの大部分は、生物学者ミハイル・N・プロホロフの実験によって、正しいことが証明されている。

続く→



ネズミと同じくらいの知性と思われたリスの、驚くべき愛情と心情

2019.03.28.11:22

アナスタシアで、リスがシベリア杉の実を向いてくれる話が紹介されていましたが、リスはどう考えても、賢いというより、ネズミの一種みたいで頭も良いとは思えず、人間と交流できるほどの知性もないと思っていました。
でも!
違うようです。

人間に助けられたリス、助けてくれた家族を毎日訪問 - 8年後に驚きの出来事が!


ブラントリー・ハリソンさんと彼女の家族は、フクロウに襲われて怪我をした生後四週間のリスの赤ちゃんと出会いました。彼らは躊躇することなく、その怪我を負ったリスの命を救おうと、自宅で介護することにしました。

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リスはこの家族から優しい介護を受け、果物やナッツ類を与えてもらいました。傷が治り、体力が回復すると、再び野生に戻されました。

リスを放す前に、 ブラントリーさんと家族は、このリスをベラと名付けました。 このリスに会うことはもう二度とないだろうと思いながらベラを野生に戻しました。この物語はここから始まります...

その日以来、ベラは毎日この家へやって来ました。好奇心によるものかも知れませんし、命を救ってくれた感謝を表すためかもしれません。リスは毎日、アメリカ・サウスカロライナ州にあるこの家の窓の前にやって来たのです。

「 ベラはいつも窓の外に座って、家の中の誰かが気づいてくれるのを待っているんです」とブラントリーさんは言います。ベラはこの家族にとても良く慣れていて、家族が庭に出ると、彼らのそばで一緒に時間を過ごすのだそうです...

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そしてある日、リスのベラはブラントリーさんの助けを求めて再びやって来ました。足に怪我をしたベラは、ここに来れば何とかなると思ったのでしょうか。この家の窓をノックしました。家族はベラが回復するまで、また家の中で飼うことにしました。

ベラの怪我がほぼ回復した頃のある朝、家族はベラ用のトイレを見て驚きました。そこには、ベラと一緒に三匹の赤ちゃんリスがいたのです。ベラが妊娠していたことを知らなかった家族は、とても驚きました。

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リスの赤ちゃんの誕生で、家族の心は幸せでいっぱいになりました。彼らが救った一つの小さな命から三つの命が生まれたのです!

ベラは明らかに、この人間家族の家が一番安全な場所であると認識し、そして出産のために、またこの家へやって来たのです。

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驚きましたね!

リスは、まるで「犬のように!人間と友達のような信頼関係を築くことができる」のです。

あの小さな体に、それだけの知性があるのです。

アナスタシアの言う通りですね!




「アナスタシア・響き渡るシベリア杉」13

2019.03.26.18:04

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「できるわ。どうすべきか私はわかっている。でもどんな言葉をどこから探してくるかが難しい。私はずっと探してきた。過去にも未来にも探してきたけれど、まだ見つからない。もしかしたら、その言葉はすぐそこまできているのかも知れない。新しい言葉が、いまにも現れようとしている。生まれようとしている。人々のハートと意識にしっかりと届く言葉、人間本来の起源について、古代からの真実を表す新しい言葉が…。」
「アナスタシア、そんなに焦らなくていいよ。いまの段階では、自分の語彙の範囲で大まかに表現すればいい。二人が本当の意味で満たされるためには他に何が必要?」
「自覚していること。命を生み出すことへのお互いの熱意。その熱意の誠実さと純粋さ。」
「それにしてもアナスタシア、君はどうしてこう言うことがわかったんだい?」
「私だけじゃない。悟りを開いたヴェレス(スラブ神話の神)や、クリシュナ(インド神話に登場する英雄)、キリスト、マホメット、釈迦は、この本質を人々に伝えようとした。」
「君は彼らの教えを全部読んだって言うのかい?どこで?いつ?」
「読んではいないわ。私はただ、彼らが語ったこと、考えたこと、そして願ったことが何かを知っているだけ。」
「君はセックスだけの関係は、悪だと言っている?」
「そう、とてつもない悪。人を真実から切り離し、家庭を崩壊する。あまりにも大きなエネルギーが行き場を失ってしまう。」
「それじゃあなぜ、おびただしい数の雑誌が、官能的なポーズをした裸の女性の写真を載せて出版されているんだ?なぜセックスを前面に出した官能映画があちこちで上映されているんだ?皆大人気だ。需要があるから供給されている。君は人間性を完全に悪だと言うのか?」
「人間性は悪ではない。でも闇の勢力の、精神性を低下させ肉欲を駆り立てるメカニズムはとても強力で、それが人々に不幸と苦痛をもたらしている。闇の勢力は、女性の美しさを利用して、人々に作用する。本来、女性の美しさは、詩人や画家や様々な創作のスピリットを目覚めさせ、育むために与えられたもの。でもそれには、その女性が純粋でなければならない。純粋さに欠けると、彼女は男性を肉体的魅力、つまり空っぽの器の外側だけの美しさで引きつけようとする。こうして彼女は彼を惑わし、その惑わしさゆえに、自分自身も生涯苦しむ。」
「それでどうなるんだ?何千年もの間、人間性には闇の勢力と戦うだけのパワーがなかったわけか?さっき君が言った霊的指導者たちの教えにも関わらず、人間性は闇の勢力と戦えなかった、と言うことは、闇の勢力は戦える相手ではないと言うこと?戦うべきではないと?」
「絶対に戦うべき相手よ。」
「誰が戦える?」
「女性たち!努力の末に真実を知って、自分たちの目的を知った女性たち。彼女たちによって、男性も変わるのよ。」
「ありえないよ、アナスタシア。普通の男性は常に女性の美しい足や胸に情欲を掻き立てられるんだ。特に恋人から遠く離れたところに出張したり旅行したりしているときにはね。それが現実だ。この世界では誰も、何も変えることはできない。」
「いいえ、私はあなたを変えた。」
「えっ?君は何をしたんだ?」
「あなたはもう破滅的なセックスができなくなった。」
この言葉の衝撃が、恐怖の暗雲のように私を襲い、前夜からの光り輝くような喜びの感情を瞬時に消し去った。
「アナスタシア、一体、君は何をした?もう私は…不能者なのか?」
「違う、その逆よ。あなたは本当の男性になった。だから、これまでのようなセックスには嫌悪感を持つようになる。そういうセックスは、昨夜あなたが経験したものをもたらすことはない。昨夜と同じ感覚は、あなたが彼女の子供を欲しいと願い、彼女も同じようにそれを願うとき、つまり、彼女が本当にあなたを愛しているときに可能になる。」
「彼女が私を本当に愛しているときだって?そんな条件じゃ、そんなことが起こるのは、一生の中でほんの数回だろうよ。」
「それで十分、それで一生幸せでいられる。本当よ、ウラジミール。私が保証する。そのうちわかる、そう感じるようになる。人々は肉体から関係に入り、何度も繰り返すけど、肉体的な結びつきだけでは、真の意味での充足感は決して得られない。男と女は、光の勢力がもたらすインスピレーションと創造への熱望の中で、存在のあらゆるレベルで一つになったとき、壮大な充足感に満たされる。創造主はこの体験を人間だけに与えられた。この充足感は、すぐに消えるものではなく、単なる肉体的な感覚とは比較にならないほど壮大なもの。満たされた感覚は長い間持続し、全ての次元の存在があなたとその女性を祝福し、幸福感で満たす。女性は、神の形に似せて、子供を産む力を与えられた。」
アナスタシアは手を差し出しながら、私にもっと近寄ろうとした。
私は思わず飛び上がって彼女を遠ざけ、寝室代わりの洞穴の奥に逃げた。
彼女に向かって、「そこをどけ!」と叫びながら。
彼女は立ち上がった。
私は這うようにして外に出た。
前に立つ彼女の目に、私を責める色はなかった。
私は数歩後ずさりして、すさんだ声でなじるように言った。
「君は人生の最大の楽しみを私から奪った。みんないつだって、それを得るために苦労し、そのことを考えているんだ。口に出さないだけで。」
「それは錯覚よ。その楽しみというのは、ウラジミール。私は恐ろしい、破壊的な、罪深い衝動からあなたが解放されるように、それを取り除くお手伝いをしただけ。」
「錯覚であれなんであれ、これ以上、君が破滅的とかなんとか考える他の衝動を、私から奪わないでくれ。そうでないと、私はここを出た後、女性を求めたいとも、飲みたい食べたいタバコを吸いたいとも思わなくなるんだろう?それは普通の生活を送る大多数の人から見て、普通ではないんだよ。」
「お酒を飲んだり、タバコを吸ったり、たくさんの動物の肉を無神経に破壊して、たらふく食べることがそんなにいいこと?素晴らしい植物たちが、人間の食物として特別に創られているのに。」
「君は好きなように君の植物を食べればいいさ。だが私に干渉はするな。多くの人が酒を飲んだり、タバコを吸ったり、美味しいものを食べることを楽しんでいるのだ。それが我々のやり方だ。わかるか?それが我々のやり方なんだ!」
「だけど、今あなたが言ったこと全て、健康に良くないし、有害だわ。」
「健康に良くない、有害だって?言っとくが、これが私の友人知人ほとんどみんなの暮らし方なんだ。家に客を招待したとき、テーブルについた彼らに、さあ、ナッツをつまんでください、美味しいりんごもありますよ。お水もどうぞ、タバコは控えてくださいよなんていったら、どうなる?皆気分を害するに決まっているよ。」
「じゃあ、お友達と集まったとき、大事なのは、すぐテーブルについて、飲んだり食べたりタバコを吸ったりすること?」
「それが大事かどうかはどうでもいい。これが世界中の人々のやり方なんだ。いくつかの国では宗教的な意味を持つ料理さえあるんだ。例えば七面鳥の丸焼きとか。」
「あなた方の世界でも、すべての人がそうしているわけじゃない。」
「多分そうだろう。だが私は普通の人々の間で暮らしている。」
「どうしてあなたは自分の周りの人々が、普通だと思うの?」
「そうしてって、彼らが多数を占めているからだ。」
「それは十分な理由にならない。」
「君には理解できないだろうからね。」
そうこうするうち、アナスタシアに対する怒りも少しづつ収まってきた。
薬や専門家の存在を思い出したからだ。
「もし彼女が私をダメにしたとしても、医者が元どおりにしてくれるだろう。」と思ったのだ。
「よし、アナスタシア、仲直りしよう。もう怒っていないよ。素敵な夜をありがとう。ただ私のこれまでの習慣を取り除くのはやめて欲しかった。まあ、医者や薬で元どおりに直せるさ。さあ、泳ぎに行こう。」
私は朝の森を楽しみながら湖に向かって歩き始め、彼女も後についてきた。
昨夜からの満ち足りた感覚が、再び戻ってきつつあったとき、彼女は言った。
「薬も医者も助けにはならない。すべて元どおりにするには、あなたの記憶から、昨日起こったこと、感じたことを消し去らないといけない。」
不意を突かれ、驚いて私は立ち止まった。
「それなら、君がすべて元どおりにするんだ。」
「それは私にも出来ない。」
再び激しい怒りと恐怖が、同時に私を襲った。
「き、君はなんてあつかましいんだ!私の人生に土足で踏み込んできて、すべて台無しにしようとしている。私に恥ずべきことをしておきながら、それをもとに戻すことはできないというのか?」
「恥ずべきことなど何もしていない。あなたは本当に男の子が欲しいと思っていたけれど、何年たっても恵まれなかった。あなたに男の子を産んでくれる女性はいなかった。私もあなたの子供が欲しかった。男の子が。私にはそれができる。どうしてあなたは先のことを心配して、最悪のことばかり考えるの?でも、いずれわかる。私を怖がらないで、ウラジミール・私は絶対にあなたの精神に干渉などしていない。昨夜のことはひとりでに起こった。主にあなたの意思で。あなたは欲していたものを得た。それから、私はもうひとつの致命的な罪から、あなたを解放してあげたかった。」
「なんだ?それは一体?」
「プライドという自尊心。」
「君はやはりおかしい。本当に変だ。君の哲学や生き方は、人間のものじゃない。」
「私のどこが人間じゃなくて、あなたを怯えさせるの?」
「だいたい、君はたった一人でこんな寂しい森の中に住んでいて、植物や動物と親しく会話している。人間だったら誰も、それに近い暮らし方だって出来やしないよ。」
「どうしてそう思うの?ウラジミール。」
アナスタシアは不安げな様子で言った。
「ダーチャ(手作りの庭と菜園のある郊外の別荘、ダーチャの所有者はダーチュニクと呼ばれ、ロシア人の6割をしめると言われる)、で植物を熱心に育てているダーチュニクたちも、植物や動物と会話している。まだ気づいてはいないけれど、そのうち気づくようになる。もう気づき始めている人もたくさんいる。」
「それは結構、きみもダーチュニクの一人っていうわけか。だが、キミが人間離れしている点は他にも色々ある。キミが持っている光線ってのもそうだ。それにキミは、本など読んでいないのに、あまりに多くを知っている。ある種の魔術とか奇術の類だね。」
「すべて説明するわ、ウラジミール。でも一度に何もかも伝えるのは難しい。そうしたいのだけれど、的確な言葉、理解してもらえる言葉がなかなか見つからない。どうか信じて。私が持っている能力は、すべての人間に本来備わっているもの。人間は、その起源まで遡るはじまりのときから、こうしたことができるように創られている。だから私がやっていることは、本当は誰にでもできること。何れにしても、人間は本来の源に立ち返って行くはず。光の勢力が勝利を得るとき、ゆっくりと、そういうことが起こる。」
「それにあのコンサートだ。君は私の好きな歌手の歌を、それぞれの声で見事に真似て歌った。しかも、私のビデオに入っている順番通りに。」
「ウラジミール、私はあのビデオを一度見ているの。どういうことかは後で話すわ。」
「君はあの歌の歌詞とメロディを、一度で覚えたっていうのか?」
「そう、それがそんなに不思議で難しいこと?あ、ごめんなさい。言い方が良くなかった。まるで自慢しているみたいね。あなたをまた怖がらせてしまう。本当に私って支離滅裂でせっかちで…。以前、祖父にそう言われたときは、愛情からだと思っていたけれど、確かに私はせっかちすぎる。ウラジミール、どうか…。」
アナスタシアが動揺を隠せない様子で、おどおどと話すその様子は、普通の人間のようで、彼女に対する怒りと恐怖心は次第に消えて行った。
代わりに、生まれてくる息子への思いが、私の感情を占領し始めた。
「ああわかった、もう怖がらないよ。きみはほんの少し自分を抑えるといい。おじいさんにもよくそう言われていたんだね。」
「そう、祖父にいつもそう言われていた。それなのに話し出すと止まらなくなってしまう。何もかもあなたに伝えたくて…。私って本当におしゃべり。でも、頑張って自分を抑えるようにする。あなたが理解できることだけを話すようにする。」
「アナスタシア、きみはいずれ出産を迎えるっていうこと?」
「そう!時期は少し連れたけど。」
「時期がずれたって、どういうこと?」
「本当は夏が一番いいの。自然が赤ちゃんを育てるのを助けてくれる。」
「きみと赤ん坊の命にとって、危険な時期になるなら、なぜ決断したの?」
「心配しないで、ウラジミール。少なくともあなたの息子は生きていくわ。」
「きみは?」
「私は春までなんとか持ちこたえる。そうすればあとはすべてうまくいく。」
こう行ったときのアナスタシアに、自分の命に対する恐れや悲しみの色は微塵もなかった。
それから彼女は走り出し、小さな湖に飛び込んだ。
水しぶきが太陽の光を受けて花火のように舞い上がり、澄み切った滑らかな水面に沈んでいく。
およそ30秒後、彼女の身体はゆっくりと水面に現れた。
微笑みながら両腕を横に広げ、手のひらを空に向けて浮かんでいる。

私は湖畔にたち、彼女を見ながら考えていた。
「彼女がねぐらで赤ん坊の隣に横になりながら指をパチンと鳴らしたら、リスたちにそれが聞こえるのだろうか?彼女の四つ足の友達の誰かが助けてくれるのだろうか?彼女の体温は赤ん坊を温めるのに十分だろうか?」
「もし私の体が冷たくなって、食べるものがなくなったら赤ちゃんは泣くでしょう。」と、アナスタシアは水の中から出てきて、静かに言った。
「彼の怒った泣き声は、早春の森を、少なくともその一部を目覚めさせる。そうすればもう大丈夫。彼らが赤ん坊を育てる。」
「私の考えていることがわかったのか?」
「違う、私はあなたの考えていることを推測しただけ。自然なことでしょう?」
「アナスタシア、そういえばきみの親戚がどこか近くに住んでいると言っていたね。彼らは助けてくれないのかい?」
「彼らはとても忙しくて、自分たちの仕事から離れるわけにはいかない。」
「何にそんなに忙しいんだい?君達は一日中何をしている?ここでの生活は、すべてまわりの自然がまかなってくれるんだろう?」
「彼らにも私にもやることがある。私は世界中の、あなたがダーチュニクとかガーデナーと呼ぶ人たちを助けようとしている。」

続く→




「アナスタシア・響わたるシベリア杉」12

2019.03.24.14:45

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新しい星を天空に灯す

二日目の夜、彼女がまたあの熊を防寒用にベッドに滑り込ませたり、あるいは他の何かを仕掛けたりするのを恐れて、私はアナスタシアが横にいてくれない限り寝ないと宣言した。
私の隣に彼女が休むのなら、昨日のような仕掛けはしないだろう。
私は彼女にそれを承諾させるため、畳み掛けるように言った。
「それにしても、これが君の客の迎え方なのか?家に行こうというから、私は何か家らしい建物があるのだろうと思っていた。だが君は私に火をおこすことさえ許さず、夜には猛獣を私の横に滑り込ませた。ちゃんとした家がないなら、本当は客を招待すべきではないよ。」
「わかったわ、ウラジミール。心配しないで、怖がらないで。悪いことは何も起こらない。その方がいいなら、私が横にいてあなたを温める。」
その夜は、前日よりもたくさんの杉の枝と、きちんと積まれた干し草とが、洞穴式寝室に投げ込まれていて、壁の部分にも小枝が積まれていた。
私は服を脱ぎ、ズボンとセーターを丸め、それを枕代わりにして横になり、ジャンパーで体を覆った。
杉の枝が揮発性の香りを漂わせている。
私が読んだ科学雑誌には、この香りの元になっているものに、汚染された空気を浄化する作用があると記されていた。
もっとも、タイガの空気は澄んでいて、そのまま吸い込んでもな何の問題もないのだが。
積まれた干し草と花々が、ほのかな香りを加えている。
アナスタシアは何も言わずに、私の隣に横になった。
彼女の体から漂う香りが、他の全ての香りをかき消した。
それは私が知る限り、女性がつけていたどんな高価な香水よりもかぐわしい香りだった。
さらにその身体は、まるで光輪に包まれているように暖かい温もりを放ち、近寄るとその温もりの光輪は、私を柔らかく包んだ。
まるでアナスタシアと私が、見えないけれども触れることのできる球体かまゆの中にいるような、そんな感覚だった。
私はこの時本当に、目に見えないオーラに包まれていたのかも知れない。
アナスタシアの横にいて、私は居心地よく平安に満たされていたが、初めてあった時のように彼女を抱きたいとは思わなかった。
彼女にキスしようとした瞬間に恐怖感に襲われ、気を失ったことを思い出した。
あれ以来、私は彼女に肉体的な欲求を感じる事がなくなっていた。
彼女が裸でいるところを見ても、そうだったのだ。
半ばまどろんでいるうちに、ふと、妻との間に生まれなかった男の子の姿が、まるで夢を見ているように私の脳裏に浮かんできて、私は考えるともなしに考えていた。
「アナスタシアが私に男の子を産んでくれたら、すごいだろうな。彼女がこんなに健康で頑丈で美しいのだから、生まれてくる男の子も、健康そのものに違いない。もちろん私に似ているはずだし、彼女にも似ているだろうが、私の方によく似ていて欲しい。その子はきっと、強くて頭脳明晰な人間になる。いろいろなことを知っていて、才能もあって、幸せで豊かな人生を送るはずだ。」
自分の息子が母親の乳房に吸い付く様が私の思いの中に浮かんだ時、私の手は無意識のうちに、アナスタシアの引き締まった暖かい胸の上におかれていた。
その瞬間、ある戦慄が身体に走ったが、それはあの時のような恐怖感ではなく、別のもの、何か晴れやかなものだった。
手を引っ込めずに息を止め、次に何が起こるかと待っていると、彼女のやわらかな手のひらが私の手の上にそっとおかれた。
彼女は私を押し戻さなかったのだ。
私は上半身を起こして、アナスタシアの美しい顔を見つめた。
北国の夜の白い薄明かりが、彼女の顔を一層美しく見せている。
私は目をそらす事ができなくなった。
彼女の灰色がかった青い瞳が、私を優しく見つめている。
私は自分を抑えられなくなり、身をかがめて彼女のかすかに開いた唇に、注意深くそっとキスをした。
再び心地よい戦慄が私の身体に走り、私の顔は彼女のかぐわしい息の香りに包まれた。
彼女があの時のように、「心配しないで、ウラジミール、落ち着いて。」と、いう言葉を発することはなかったし、私も恐怖感に襲われることはなかった。
息子が欲しいという思いが、頭から離れなかった。
アナスタシアが優しく私を抱き、私の髪を撫で、全てを私にあずけた時、私は言葉を超えた大いなる感覚に包まれた。
翌朝目覚めた後、私は初めて、自分がこれまでの人生で味わったことのない、歓喜に満ちた、壮大な感覚に包まれていることに気づいた。
さらに不思議だったのは、私は大抵、女性と一夜をともにした翌朝というのは、肉体的に疲労を感じる事が多いのだが、その朝は全く違っていた。
何か偉大な創造的感覚とでもいうようなものに、満たされていたのだ。
その満たされた感じは、単に肉体的なものではなく、何か理解を超えた別次元のもののようで、未だかつて体験したことのない、あふれるような喜びに満たされた感覚だった。
この感覚のみが、人生を価値あるものにするのではないか、そんな考えすらうかんだほど、特別のものだった。
それにしてもなぜ私は今まで、これに似た感覚を一度たりとも味わった事がなかったのか。
美しい女性、好きな女性、経験豊富な女性など、色々な女性と付き合ってきたのだが…。
アナスタシアは内気な面もあわせ持った優しい女性だが、同時に彼女の内面には、私が知る女性の誰にもない何かがある。
それは一体何なのか?
ところで彼女は今どこにいるのだろう?
私は居心地のいい洞穴式寝室の入り口まで這って行って、そこから顔を出し、草地を見た。
草地はねぐらより少し低くなっていて、50センチほどの厚さの朝霧で覆われていた。
その霧の中でアナスタシアが両腕を大きく広げて、くるくる回っているのが見えた。
彼女は自分の周りに雲のように霧の層を巻き起こしているのだ。
その霧の雲に全身を覆われた時、彼女はバレリーナのように足を開いて軽く飛び上がり、霧の層の上を飛んで、別の地点にひらりと降り立った。
そこでさざめくように笑いながら、また新しい霧の雲を身体に巻きつけてくるくる回っている。
昇ってきた太陽の煌めく光が、その霧の雲に反射してキラキラと輝き、彼女を抱擁するように包んだ。
私はその幻想的な光景に圧倒されてしばし言葉を失ったが、ついに感極まって叫んだ。
「アナ・スタ・シーア!おはよう!美しい森の妖精、アナスタ・シーア!」
「おはよう、ウラジミール。」
彼女も陽気に大きな声で応えた。
「素晴らしいでしょう、本当に美しい!」
「いったいどうして…。」
私はできる限り大きな声で尋ねた。
アナスタシアは太陽に向かって両腕を伸ばし、聞く人を誘い込む幸せに満ちた笑い声をあげて、私の問いに対して、私と上空の誰かに向かって、歌うように応えた。
「宇宙の全ての生き物の中で、人間だけが体験できる!
自分たちの子供を欲しいと、互いに心から思う男と女だけが!
これを体験した者だけが、天空に新しい星を灯す!
創造することを熱望する者だけが!
あ・り・が・と・う!」
彼女は私の方を向き、こう付け加えた。
「肉体的な欲求を満たすためではなく、創造することを熱望する者だけが。」
彼女は再びさざめくように笑い、高く飛び上がって、霧の上をふわりと飛び、地上に舞い降りた。
それから彼女は走ってきて、ねぐらの入り口にいた私の隣に腰をおろし、豊かな金髪を下から持ち上げて、指でとかし始めた。
「君はセックスを罪深いものとは考えないということ?」と、私は尋ねた。
アナスタシアは一瞬動きを止め、驚いた表情で私を見つめながら答えた。
「それはあなた方の世界で、セックスという言葉が意味するもののこと? 
でなかったら、何がいったい罪深いの?一人の人間をこの世に誕生させるために自分を与えるか、それとも、それを控えて人間の誕生を阻止するか。本当の生きた人間の誕生に関わることよ。」
彼女のこの言葉に私は、ふと考えさせられた。
確かにアナスタシアと過ごした昨日の夜の出来事は、普通のセックスという言葉では表せない。
昨夜はいったい何が起こったのだ?
あれをいったい何と、表現すればいいのだろう。
私はもう一度アナスタシアに尋ねた。
「なぜ私は、これに似た体験をこれまでせずにきたのだろう。多くの人がそうだと思うが。」
「わかって、ウラジミール。闇の勢力が、男性の中の利己的な肉欲を強化して、神から与えられる恩恵から遠ざけようとしている。闇の勢力は、彼が肉体的な満足のみを考えるように仕向け、その満足は容易に得られると、あらゆる手段で洗脳する。そうやって男性を真実から遠ざけているの。それを知らず、騙された哀れな女性たちは、生涯、苦しみばかりで過ごす。失ってしまった恩恵を探し求めながら。彼女たちは探す場所を間違っている。男性の肉欲のみを満足させるため彼に服従する女性は、彼を密通や不倫から遠ざける事は出来ない。もし二人の関係が、そういうものなら、一緒にいても二人は決して幸せになれない。二人の人生は、一緒という感覚、嘘、暗黙のうちに認められた欺瞞であり、彼女はその男性と結婚しているいないにかかわらず、たちどころに娼婦になってしまう。
この偽りの結合を強化するため、人類はどれだけ多くの法律や取り決めを、宗教的なものであれ、非宗教的なものであれ、発明してきたと思う?全て無駄だったわけだけれど。そういう取り決めは、人々に演技をさせて、そのような結合が存在するように見せかけることを強いただけだった。
人の内面の思いは不変であり、誰にも、そして何ものにも従属しないのに。
イエス・キリストはそれを見抜いていた。これを阻止しようとして彼は、誰でも情欲を抱いて女を見るものは、心の中ですでに姦淫をしたのである。と言われた。
あなただってもうじき、家族を捨てる人間に不名誉な烙印を押そうとする。でもどんなものも、どんな時も、どんな状況も、直感的に感じる恩寵や最高に満たされた状態を探し求める欲求から、人間を遠ざける事は出来ない。偽りの結合ほど恐ろしいものはない。子供達!わかる?ウラジミール、子供達よ!彼らは結合の自然さと虚偽を感じ取る。そして両親のいうことはなんでも疑うようになる。
子供達は受胎の瞬間おける嘘まで潜在意識下で感じとるし、それが子供達をとても悲しませる。
考えてみて。いったい誰が単なる肉体的快楽の結果として、この世に生まれてきたいと思う?
人は誰でも、単なる快楽の結果としてではなく、偉大な愛の高まりと創造への熱望のもとに、生まれてきたいと願っている。偽りの関係を結んでしまった人たちは、そのあと密かに本当の満足を探し始める。次々に別の肉体を求めたり、あるいは自分の体を破滅的に用いて行く。真実の結合がもたらす恩寵から、自分たちがどんどん離れて行っていることを直感的に知りながら。」
「アナスタシア、ちょっと待って。男と女は出会いの始まりがセックスだったら、皆そういう風に運命付けられているのかい?取り返しはつかないのかい?状況を修復する事は出来ないのか?」

続く→




「アナスタシア・響き渡るシベリア杉」11

2019.03.21.18:14

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その歌は生まれたばかりの赤ん坊の鳴き声のようなものから始まったが、次第に柔らかく静かな、優しい声に変わっていった。
彼女は木の下に立ち、両手を胸に当てて、頭を下げている。
子守唄を歌いながら、赤ん坊をあやしているように見えた。
赤ん坊に向かって優しく何かを語りかけている。
穏やかで驚くほど澄み切った彼女の声に、周りの全てのものが、小鳥のさえずりや草むらで鳴いていた虫の声さえもやんで、突然静まり返った。
赤ん坊が目覚め、アナスタシアの声には歓喜があふれる。
その声は信じがたいほどの高音で地上を漂い、高く舞い上がって、やがて無限の空に吸い込まれて行った。
そのあと彼女の声のトーンは変わり、何者かに向かって哀願し、祈り、ついに戦いの様相を帯びるが、やがて声が再び優しくなり、赤ん坊をあやし、周りの全てのものを喜びで満たしたようだった。
歌が終わった時、私もまたその喜びの感情にすっぽりと包まれていた。
私は陽気な声で叫んだ。
「さて皆様、次は世界初、一流の動物トレーナーによるユニークで、2度と繰り返せない芸です。どんな猛獣でも飼いならす、器用で大胆で魅力的なトレーナーの、スリル満点、驚くべき技をとくとご覧ください。」
アナスタシアは喜びのあまり、文字通り金切り声をあげ、飛び上がり、リズミカルに手を叩き、何かを叫び、口笛を吹いた。
すると草地に、想像を超えた事態が発生した。
最初に子供狼が現れた。
灌木の茂みから飛ぶように現れ、草地の端に止まって、困惑したような様子であたりを見回した。
リスたちが草地を囲む木々の中を、枝から枝へと飛んで、走り回っている。
二羽の鷲が頭上に低く円を描いて飛び、小さな生き物たちが草むらをガサガサ鳴らして動き回る。
乾いた枝がパキパキ折れる音がして、大きな熊が、薮を避けたり踏みつけたりしながら、草地に走りこんできて、アナスタシアにギリギリ接近してピタリと止まった。
子供狼はその熊に向かって、非難めいた唸り声をあげている。
熊がアナスタシアの手招きもないのに、あまりに彼女に近づきすぎたからだ。
アナスタシアは熊に駆け寄って、ふざけながらその鼻をぴしゃりと軽く打ち、その両前脚を掴んで立たせた。
彼女はその動作に特別の力や努力を要しているようには見えず、楽々と行っていたので、熊自身が自分なりに最大限の知力を働かせて、彼女の意図を理解し、その指示を実行しているらしいということが私にも見て取れた。
熊はアナスタシアが自分にそういう姿勢を取らせて、次に何をしたいのかを理解しようと必死なようで、固まったままそこにじっと立っていた。
アナスタシアは一旦少し熊から離れ、それから熊に向かって走り出し、高く飛び上がって熊の太い首筋をつかんでその肩の上で逆立ちをし、再び空中高く宙返りしながら飛び降りた。
それから彼女は熊の片方の前足をつかんで寄りかかり、熊を引き寄せて、肩越しに投げ飛ばしたように見える演出を試みた。
だがこのトリックは、アナスタシアがそれを熊にわからせ、熊が自分でそうしない限り成立しないものなのだ。
熊は戸惑ったまま、アナスタシアの上に一瞬倒れかかりそうになったが、その最後の瞬間に前足を地面におろして、そこに自分の全体重をかけ、大切な女王であり、友人であるアナスタシアを傷つけないように全力を尽くした。
これを見ていた子供狼はますます混乱し、その慌てぶりは極みに達していた。
もはやじっとしてはおられず、吠えたり唸ったりしながら草地を右に左にと、行ったり来たりしている。
さらに数匹の狼が草地の端に現れたのは、ちょうどアナスタシアがもう一度熊を背負い投げで肩越しに投げ飛ばした時だった。
今回はトリック成功で、熊は横向きに倒れてそのまま動かなくなった。
完全に取り乱した子供狼は、その歯を意地悪くむき出しにした顔で、熊に向かって突進しようとした。
その瞬間、アナスタシアは子供狼が突進してくる線上にに立った。
この突然の出来事に子供狼は、彼女にぶつかるまいとして4本足で踏ん張って急停止したが、前につんのめってひっくり返り、アナスタシアの足にぶつかった。
彼女は、もう一方の手をさっと子供狼の肩に置くと、彼は大人しくなって地面に寝そべった。
見ると彼女はもう一方の手を、誰かに向かって振っている。
私が無理やり彼女を抱きしめようとした、あの時と同じ仕草だ。
周りの森は突然騒がしい音を立て始めた。
恐れを感じさせるほどの音ではなかったが、動物たちの大きいのや小さいのが飛んだりはねたり、走ったり隠れたりしている。
そんな音だ。
アナスタシアは周りを静める動作に入った。
まず彼女は子供狼を優しく撫でて、その肩をさすり、ペットの犬にするようにお尻をポンと叩いて、草地の外へと送り出した。
そばにさっきの熊が不恰好な姿のまま、案山子のように倒れている。
おそらく次の指示を待っているのだ。
アナスタシアは熊のところに行き、抱き起こしてその鼻を撫で、子供狼にしたように、ポンとお尻を叩いて送り出した。
そのあと彼女は楽しげに笑いながら、私のところに走り寄ってきた。
私の横に座り、頰を紅潮させたまま、息を深く吸ってゆっくりと吐いた。
信じがたいような過激な運動をしたばかりだというのに、彼女の呼吸がすぐに普通に戻っているのがわかった。
「彼らは演ずるということが理解できない。その必要がないから。必ずしも良いことではないから。」とアナスタシアは言い、「ところでどうだった?私、あなた方の世界でも仕事を見つけられるかしら?」と聞いてきた。
「すごかった、素晴らしかったよ、アナスタシア。だけど、これを仕事にするとなると、我々の世界にもこういうのはすでにあるからね。サーカスのトレーナーたちは動物たちを訓練して、面白い芸をいっぱい見せてくれる。こうした職業に就くためには、様々な審査を受けたり、手続きや慣習のようないろんな障壁を突破していかないといけないんだ。君には厳しいかもしれないな。そう言ったことに慣れていないからね。」
このあと二人のゲームは、アナスタシアの仕事探しになった。
動物トレーナーが難しいならば、次の手として彼女はどういう分野で仕事を得ることができるか、どのようにして色々な手続きや慣習を克服して行けるか、この問題についてアイデアを出し合うのだ。
だがこのゲームは最後に大きな壁にぶつかった。
考えてみれば、アナスタシアには学校の卒業証書もなく住民票もないではないか。
さらに彼女の能力がどんなに並外れたものであれ、その背景となる彼女の生い立ちに関する話は、誰も信じないだろうし、…ということで、結論は、彼女がこちらの世界で働くのは難しいということで合意に達し、ゲームは終わった。
アナスタシアは急に真面目な表情に戻って言った。
「でも本当に私はもう一度行ってみたい。大都会に。多分モスクワ。私がイメージの中で型どっている都会の生活状況が、どこまで正確か確かめたい。例えば闇の勢力がどういう手段を用いいて、こんなにも女性たちを騙しているのか、そこがまだ掴みきれていない。それをはっきり知りたい。闇の勢力に動かされて、彼女たちは無意識のうちにただ身体の美しさや魅力で男性を惹きつけようとする。そのために的確な選択ができなくなって、自分のソウルメイトに出会えずにいる。そして後になって苦しむ。彼女たちは、本当の家族を作れない。なぜなら…。」
その後に続いた彼女の、性について、家族について、育児についての話は、驚嘆すべきものだった。
いささか手厳しいその話を聞きながら、私が何よりも不思議でならなかったのは、彼女が今日の我々の生活の内容を細部に至るまで、かなり正確に知っていることだった。

続く→




「アナスタシア・響き渡るシベリア杉」10

2019.03.20.09:58

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アナスタシアは、人間が生きていく様々な状況を、過去、現在、未来にわたってじっと瞑想し、それを映像に型どることに、1日の大半を費やしていた。
彼女の記憶力は抜群だった。
瞑想で見たり、光線を通して見たりした数多くの人々を、その内面の葛藤も含めてよく覚えていた。
天才的な女優のように、彼らの歩き方や声、物事を考える手順まで真似して見せた。
過去から現在に至る多くの人々の生活体験のエキスを取り込み、未来を型どって、人々を助けるためにその体験を活用していた。
彼女は遠く離れたところから人々に光線を送り、一連の作業を行う。
だが、提案や決断、あるいは癒しという形で彼女に助けられた人々は、誰一人としてそれに気がつかない。
この光線は誰でも持っていると聞いても、私は半信半疑だったが、だいぶ後になって、人間の目には見えない光線のようなものが、全ての人から放射されていて、人によってその強さに色々な段階があるということを、改めて知った。
物理学者のアナトリー・アキモフが特殊装置を用いてこの光線の写真を取り、雑誌ミラクルズ・アンド・アドヴェンチャーズの1996年5月号に掲載した。
残念ながら我々は、この光線をアナスタシアのように操作することはできない。
科学界ではこの光線のようなものを、トーション・フィールド(ねじれ場)と呼んでいるそうだ。

アナスタシアの世界観は普通ではなく、かなり面白いものだった。
「アナスタシア、神とは何?神は存在するのか?もし存在するならどうして誰も、神を見ることができない?」
「神は惑星間の至高なる源であり知性…神は個体ではなくて、半分は宇宙の非物質的な領域に存在し、全てのエネルギーの集合体をなしている。もう半分は小さな粒子となって、地球上の人間一人一人の中に分割されている。そして闇の勢力がこの粒子を締め出そうと、躍起になっている…」
「君は今後、何が我々の社会を待ち受けていると考えている?」
「技術優先主義がもたらす有害な側面への目覚め、そして本来あるべきものとの姿に立ち返ろうとする動き、それがこれから起きて来ることだと思う。」
「世界の科学者は皆、我々を袋小路へと導く未熟な存在というわけか。」
「確かに彼らによってそのプロセスは加速される。でも彼らは、間違った道を歩いているということに、人々が気づく時期を早めてもいる。」
「ということは?我々が作るクルマも家も意味がないと言うのか?」
「そう。」
「君は一人でここに住んでいて退屈じゃない?テレビも電話もないところに、たった一人で。」
「テレビも電話も原始的なものよ。人間は初めからそう言うものをみな持っている。もっと完璧な形で。私も持っているわ。」
「テレビや電話を?」
「テレビって何?退化してしまった人間の想像力に向けて、情報や画像を使って物語を描き出す装置でしょう。私は自分の想像力で、どんなテーマでも、どんな画像でも描けるし、どんなに信じがたい状況でも作り出せる。そればかりか、自分が物語に入って行って、物語そのものに影響を及ぼすことだってできる。ああ、私の言っていること、わかりにくいかしら?」
「じゃあ、電話は?」
「人は電話がなくてもお互いに話ができる。話したいと言う意思と願いと、発達した想像力さえあれば。」


コンサート・イン・ザ・タイガ

モスクワに行って、テレビに出演して見たらどうかと、私は提案した。
「想像してみてごらん、アナスタシア。君ほどの美しさがあれば、有名写真家のモデルにだって、世界一流のファションモデルにだってなれるよ。」
この時の彼女の反応で、私は彼女が世俗にも疎くないことに気がついた。
彼女は普通の女性と同じように、美人であることが嬉しいようで、笑いながら言った。
「世界で一番きれいかしら?」
彼女は子供っぽくおどけて見せて、ステージを歩くモデルのような足取りで、誇らしげにゆっくりと草地を歩き始めた。
脚をスッ、スッとまっすぐ前に出すモデルの歩き方をして、自分のイメージの中の衣装を披露するアナスタシアの仕草が、とてもユーモラスで愉快だったので、私は思わず拍手をし、そのゲームに付き合うことにして司会をかって出た。
「さあ、紳士淑女の皆様、ここに登場しましたのは、素晴らしい世界一の体操選手、類いまれなる美女、アナスタシアです!」
このアナスンスは、さらに彼女を喜ばせたようだった。
彼女は草地の真ん中に走り出て、空中に舞うような見事な宙返りを、最初は前に、次に後ろに、右に左にと行った後、高く飛び上がった。
片手で木の枝を掴み、ぶら下がったまま体を数回揺らして、別の木に飛び移った。
最後にもう一度宙返りをして、私の拍手に答えて艶かしくお辞儀を返したかと思うと、草地から走り出て、灌木の生い茂った藪の中に隠れた。
まるで舞台の袖からのぞくように、そこから顔をのぞかせて笑っている。
次のアナスンスが待ちきれないといった表情だ。
私は人気歌手のヒット曲が収録されているお気に入りのビデオのことを思い出した。
船上で過ごす夜、自分の部屋でよく見ていたものだ。
私はアナスタシアが歌を歌えるかどうか考えもせず、次のアナウンスを始めた。
「それでは皆様、現代のトップ・ソリストたちの登場です。それぞれのヒット曲を歌い上げます。どうぞお楽しみください。」
この後、信じがたいことが起こった。
私は彼女の計り知れない能力をあまりに知らなすぎた。
なんと、彼女はにわか作りの舞台の袖から、ほんの一歩出た瞬間に、アラ・プガチョワの声や歌い方だけではなく、その歌に彼女が込めていた感情を心ゆくまで表現しきっていた。
だが、それ以上に私が驚いたのは、アナスタシアがここの言葉に自分なりの解釈を加えて表現し、歌にさらなる陰影を深めていたことだ。
アラ・プガチョワを超える表現はないと思っていたその歌は、アナスタシアが歌うことによって、呼び起こされる感情の幅がさらに広がり、イメージはさらに鮮明になった。
例えば次の歌である。
アナスタシアはこの歌を、この上なく美しく歌い上げた。

むかし、ひとりの絵描きがいた
小さな家と絵の具だけが彼の持ち物
けれど彼は一人の女優を愛した
そして彼女は花を愛した
絵描きは小さな家を売り
絵を売り
絵の具を売った
売ったお金で彼は
抱えきれないほどたくさんの
花を買った

アナスタシアは「絵の具」と言う言葉を強調して、驚きと恐れの感情を込め、魂から叫ぶように歌った。
絵の具は絵描きにとって、何よりも大切なもの。
それなしでは何も生み出せない。
だが彼は愛する人のために、自分の命に等しいものを諦めたのだ。
この後の「列車は彼女を運び去る」と言う歌詞のところでアナスタシアは、その絵描きの姿を鮮明に浮かび上がらせた。
愛する人を永遠に連れ去る列車、遠のいていくそれを呆然と見送る彼の、痛みと絶望と怒りが痛いほどに伝わってきた。
衝撃のあまり、彼女の歌が終わっても私は拍手をしなかった。
アナスタシアはお辞儀をして、私の拍手を待っていたが、それがないので、次の歌をさらなる熱を込めて歌い出した。
彼女はなんと、あのビデオテープに入っている私の好きな歌を、その順番通りに全部歌ったのだ。
私がなんども聞いてきた歌ばかりだが、そのどの歌も、彼女が歌うことによってさらに鮮やかな感動を呼び起こした。
最後の歌を歌い終わっても、私の拍手がおこらないので、彼女は舞台の袖に引っ込んだ。
私はあまりの衝撃で言葉を失い、黙ったまましばらくじっとしていた。
それから我に返り、飛び上がって拍手をしながら叫んだ。
「素晴らしい、アナスタシア!アンコール!ブラボー!歌手の皆さん!どうぞ舞台へ。」
アナスタシアは恭しく舞台の袖から出てお辞儀をし、私は叫び続けた。
「アンコール!ブラボー!」
私は足を踏み鳴らし、手を叩いた。
彼女も私と同様、とても楽しげに手を叩きながら叫んだ。
「アンコール!それってもう一度っていうこと?」
「そうだよ、もう一度、もっと、もっとだよ!本当に素晴らしかった、アナスタシア。あの歌手たちよりも、世界のトップスターたちよりも、ずっとずっと素晴らしかった!」
それから私は黙り込んで、アナスタシアを注意深く観察した。
既に完成されているこれらの歌に、これだけ多くの新しく、美しく、鮮やかなものを添えることのできる彼女は、どれほど多面的で深い魂の持ち主なのだろうか。
彼女もじっと黙って、不思議そうに私を見つめていた。
「アナスタシア、君は自分の歌を持っているのかい?私が聞いたことのない、君のオリジナルの歌を聞かせてくれないか?」と、私は尋ねて見た。
「いいわ、でも、私の歌には歌詞がない。そういうのは好き?」
「どうぞ、歌ってみて。」
「わかったわ。」
こうして彼女は、自分のオリジナルソングを歌い始めた。
それは確かに普通の歌ではなかった。

続く→



「アナスタシア・響き渡るシベリア杉」9

2019.03.15.08:44

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アナスタシアの光線

私が森で見聞きしたことの中で、最も不思議で尋常ならざるものに思えたのは、はるか遠い場所にいる一人の人間の状況を見通すことのできる、アナスタシアの能力だった。
彼女と同じような生活をする他の隠遁者たちも、同様の能力を持っているのかもしれない。
彼女はこれを目に見えない光線の助けを借りて、行う。
彼女によれば、この光線は誰でも持っているらしく、ただそれに気がつかないために、使うこともできずにいるそうだ。
「人間はいまだに自然界に存在しないものは、何一つ発明していない。テレビは、この光線の作用の哀れなモノマネにすぎないし。」と、アナスタシアは言う。
その光線は目に見えないので、私は信じなかった。
彼女は何度も実演したり、その機能を原理的に説明して、私に理解させようと必死だった。
そしてある時…
「ウラジミール、白日夢についてどう思う?白日夢を見る人はたくさんいると思う?」
「たくさんいると思うよ。白日夢は人がこうありたいと願う未来を想像するときに見るんだ。」
「いいわ、と言うことは、あなたは認めるのね?多くの人が自分の未来やいまとは異なる特定の状況を思い描く能力を持っていると。」
「そうだね。」
「ところで、直感ってなんだと思う?」
「直感?…直感というのは、人が、何が起こるか、なぜ起こるかを分析していないときに、どうすべきかを示す感覚、かな。」
「と言うことは、あなたは否定しないのね?人間には、通常の分析的な理性を超えた何か、行動を決断する際にそれを助ける何かが備わっていると言うことを。」
「否定しないよ。」
「素晴らしい!」とアナスタシアは叫んだ。
「じゃあ、今度は寝ているときに見る夢の話。夢ってなんだと思う?ほとんどの人が寝ているときに夢をみるでしょう?」
「夢とは…一体なんなのかね。わからないな。夢はしょせん夢だな。」
「いいわ、いいわ。夢は夢っていうこと。つまり、あなたは夢の存在を否定しないのよね?夢を見ているときは、体がほぼ完全に無意識状態にありながら、いろいろな人にあったり、いろいろなことが起きているのを見ている。それはあなたも、他の人もみんな知っている。」
「そうだね、それは誰も否定しないだろうね。」
「そればかりか、夢の中でコミュニケーションをとることが出来る。だれかと会話したり、感情移入もできる。」
「うん、そうだ。」
「それであなたはどう思う?人は自分の夢をコントロールできると思う?自分の見たいイメージや出来事を夢の中に呼び込んで、例えばテレビみたいに。」
「それはできないと思う。夢は単独で、ひとりでに生まれるものだ。」
「それは違う。人間は全てをコントロールできる。全てをコントロールするように創られてるいる。私がさっきから言っている光線は、人が内面に持つ情報と思考と直感と感情からできているから、結果的に、夢も含めてあらゆるビジョンは、人間の持つ意思で意識的にコントロールできる。」
「眠っているときに、どうやってコントロールできると言うんだい?」
「眠っている間ではなくて、目覚めているときにできる。前もってプログラミングするの。ある方法で、しかも絶対的な正確さで。あなたは同じことを混沌とした夢の中で体験している。人間は自然現象や自分をコントロールする能力の大部分を失っている。だから夢を、疲れた脳が生み出す無用な産物だと結論づけてしまった。実際、地球上のほとんど全ての人が…。ああ、そうだ、遠くのものがあなたにも見えるように、いまここでお手伝いしていいかしら?」
「どうぞ。」
「草の上に横になって、ゆったりとリラックスして。体が消費するエネルギーを最小に抑えた状態にする。心地よい状態になって。いまあなたを邪魔するものは、ないわね?さあ、それでは、あなたが一番よく知っている人のことを考えて見て。例えば奥さんとか。彼女の習慣、歩き方、服装を思い出して、彼女が今いると思う場所を考える。これを全部合わせて、あなたの想像力で絵を描いて。」
私は妻のことを思った。
彼女はこの時間は郊外の別荘にいるはずだ。
頭の中にその建物を思い出し、いくつかの家具や、家の周りの様子など思い浮かべた。
いろいろなものを細部にわたって思い出して見たが、何も具体的なものは見えてこなかった。アナスタシアに何も見えないと言うと、彼女は、
「眠りに入る時のように、完璧にリラックスする方法がわからないのね?手伝うわ。目を閉じて、両腕を横に広げて見て。」と言った。
彼女の指が私の指に触れた感覚がして、…やがて私は眠りのようなまどろみのような感覚に、吸い込まれて行った。
……妻がキッチンに立っている。いつも室内で着ているガウンにニットのカーディガンを羽織っている。と言うことは部屋が寒いのだろう。暖房がいよいよダメになったのかもしれない。
彼女はガスコンロでコーヒーを作っているようだ。犬の餌用の小さな電気ポットでも何か作っている。むっつりとして不機嫌そうだ。動作もノロノロしている。
突然、彼女は顔を上げて窓辺にさっとかけより、雨を見て微笑んだ。コーヒーが噴き出したので、彼女はコンロに戻りポットをつかんだが、いつものように顔をしかめてイライラする様子はなかった。
彼女はカーディガンを脱いだ。
私はそこで目が覚めた。
「さあ、何か見えた?」と、アナスタシアが聞いた。
「うん見えた。だけど、これは普通の夢じゃないのかね。」
「普通のって、どう言う意味で言っているの?あなたは彼女を見ようと計画したでしょう?」
「確かにそうだ。そして彼女を見た。だけど、私が彼女を夢で見ているその瞬間に、彼女がキッチンにいたと言う証拠は、どこにある?」
「もしそれを立証したいなら、今日のこの日と時間を覚えておいてね。ウラジミール、家に帰ったら、彼女に聞いてみて。ところで、彼女の様子にいつもと違うところはなかった?」
「特にないね。」
「奥さんが窓辺に駆け寄った時、微笑んでいなかった?彼女は微笑んで、吹きこぼれたコーヒーにイライラする様子もなかった。」
「確かにそれは気づいたよ。彼女はきっと、窓の外に何か元気付けられるものを見たんだよ。」
「彼女が見たのは雨よ。彼女の嫌いな雨。」
「じゃあ、なぜ微笑んだ?」
「私もあなたの奥さんを、私の光線で見ていた。そして彼女を温めた。」
「君の光線で彼女を温めた?私の光線は冷たいのか?」
「あなたはただ好奇心で見つめていた。そこに何の感情も入れずに。」
「君の光線は、遠くにいる誰かを温めることができるのかい?」
「ええ。」
「他にどんなことができる?」
「ある情報を受け取って、それを別のところへ伝えられる。この光線で、だれかの気分を明るくしたり、人の痛みを和らげたりもできる。それから、私の持つエネルギーと、私の感情と意思と願望の強さ次第で、もっと多くのことができる。」
「君は未来を見ることができるのか?」
「もちろん。」
「過去は?」
「未来と過去は同じもの。違いは、表面に現れるディテールだけ。本質的なものはいつもかわらない。」
「どう言うこと?何が変わらないって?」
「例えば千年前、人々はいまとは違う服装をしていた。日常生活で使う道具もいまとは違っていた。人間の感情は、時代が違っても変わらない。恐れ、喜び、愛、想像して見て。ヤロスラフ賢帝も、イワン雷帝も、古代エジプトのファラオたちも、今のあなたや他の誰かと全く同じ感情を抱いて女性を愛することができた。」
「確かに。ただ私にはそれが何を意味するのかわからない。君が持っている光線を、誰もが持っていたはずだと言っているのかい?」
「そう。今だって、人々は感情や直感を持っているし、白日夢を見たり、物事を推測したり、ここの状況を思い描いたり、睡眠中に夢を見たりできる能力を持っている。ただそれが皆混沌としていて、コントロールされていないだけ。」
「多分訓練が必要なんだろう。能力開発の練習とか。」
「そう、訓練すれば、コントロールできるようになる。ただ、横線を自分の意思で用いるためには、もう一つ、絶対不可欠な条件がある。」
「なんだ?その条件と言うのは?」
「意図が純粋でなければならないの。意図の純粋性、それが不可欠、光線の力は、それを用いる人の感情の強さに比例する。」
「ほらきた!まただよ。せっかくわかりかけてきたのに…意図の純粋性とか光の感情って、一体なんだい?」
「それが光線の持つ力、エネルギーの素。」
「もういい、アナスタシア。興味がなくなった。どうせまた、いろんな条件を付け加えるんだろう?」
「大切な部分は全て話したわ。」
「ああ、確かに話してくれたんだろう。でも条件がありすぎるよ。何か他のことについて話そう。もう少しシンプルな話をね。」

続く→




「アナスタシア・響き渡るシベリア杉」その8

2019.03.12.08:34

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森の中の寝室


私は野生の森で眠るための装備はなにも持ってきていなかったが、アナスタシアは野生動物のねぐらのような、洞穴のような窪んだ場所に私を案内して、そこにあったベッドのようなものに私が横になるのを見届けてから、どこかにいなくなった。
私は過酷な旅に疲労困憊していたので、瞬く間にぐっすりと眠りに落ち、翌朝の目覚めはとびきり上等なベッドで、一晩休んだ後のように清々しく快適だった。
見回してみるとそのねぐら、あるいは洞穴は思ったより広く、壁や床に当たるところは柔らかい杉の小枝や干し草で覆われていて、爽やかな香りが空間を満たしている。
私は背伸びをして、両腕を思い切り伸ばした。
片方の手がふわふわの毛皮に触れたので、アナスタシアは狩りもするのだなと瞬間的に思い、その暖かい毛皮に体を寄せて、背中を押し付けた。
よし、もう少しこの暖かさを背に、心地よいうたた寝を楽しもう。
そう思った時、私の洞穴式寝室の入り口に立っているアナスタシアに気がついた。
彼女は私が目覚めているのを見て、慌てたように口を開き、早口に言った。
「ウラジミルール、今日という日に良きことが訪れますように。そして善良な心でこの日を迎えることができますように。ただ、どうか怖がらないで。」
彼女が手を叩いた瞬間、私はそれが毛皮ではないことに気がついて恐怖におののいた。
なんと熊が一頭、ゆっくりと洞穴から出て行ったのだ。
アナスタシアから「よくできたわ。」というように、背中をポンポンと軽く叩かれて、熊は彼女の手を舐め、草地からノロノロと出て行った。
後になって知ったのだが、アナスタシアは私のベッドの頭のところに眠りを誘うハーブを置き、私の隣に寒さ対策で、熊を寝そべらせておいたのだった。
アナスタシア本人は、入り口の外側に丸くなって寝ていたらしい。
「一体全体、どうしてこんなことができたんだい?彼は私をズタズタに食いちぎるか、ぺしゃんこに踏み潰すか、何でもできたんだよ。」
「彼じゃない。彼女はメス熊なの。とても素直な子で、あなたに危害を加えるなんてそんなことは絶対しない。彼女は何か仕事を与えられて、それをやり遂げるのが大好きで嬉しいの。一晩中、身動き一つせず、私の足に鼻をこすりつけて幸せそうにじっとしていた。ただあなたが寝ながら両腕を放り出して、それが彼女の背中に当たったときは、怖がって身震いしていたわ。」


アナスタシアの朝

夕闇が迫るとアナスタシアは森の居住者、つまり動物たちが作ったねぐらの一つをシェルターにして、その中で眠る。暖かい時には、そのまま草の上で眠ったりもする。
彼女が翌朝起きて真っ先にすることは、歓喜の叫びをあげることだ。
東の空から昇る太陽に喜び、木々の枝に芽生えた若葉に喜び、土の中から顔を出した新芽に喜ぶ。
これら自然の賜物に歓喜して、その喜びをひたすら表現する。
それらに触れたり撫でたり、時にはその位置や形を整えたりする。
それから低い木々に走り寄り、幹を叩く。
揺らされた木のてっぺんから、露のようなものが彼女の上にシャワーのように降りかかる。
そして彼女は草の上に横になり、5分ほど幸せに満ちた表情で、手足を曲げたり伸ばしたりの運動をする。
そうこうするうちに、彼女の全身は湿ったクリームのようなもので覆われてくる。
彼女は走り出して、小さな湖に飛び込む。
水しぶきをあげ、潜る。
素晴らしいダイバーだ。
彼女と周りの動物との関係は、人とペットとの関係に似ている。
彼女が朝の日課をこなす間、たくさんの動物たちが彼女を見守っている。
彼らはアナスタシアに勝手に近づくことはしないが、彼女が動物たちの方を見て、明らかにそれとわかるジェスチャーで一匹を呼ぶと、その幸運な動物は喜び勇んで彼女の足元に走ってくるのだ。
ある朝、私は彼女がペットの犬と戯れるように、子供の狼とふざけながら遊んでいるのを見た。
アナスタシアはその子の肩のあたりをぴしゃりと叩き、さっと逃げた。
子供狼が彼女を追いかけ、ほとんど追いつきそうになった時、アナスタシアは突然空中に飛び上がり、木の幹を両足で蹴って、その反動を使って別の方向に飛び降り、そのまま走り出した。
子供狼は突然止まることができずに、アナスタシアの蹴った木の前を走りすぎ、慌てて方向を変えて、笑いながら逃げるアナスタシアの後を懸命に追いかけていた。
アナスタシアは着るものや食べるものについてあれこれ考えることは、一瞬たりともないようだった。
ほとんどいつも彼女は、まったく衣服を身につけていないか、ほんのすこし身につけているかといった感じで動き回っていた。
彼女は杉の実や、ハーブや、キノコなどを食べていた。
彼女の食べるキノコは干したものに限られており、自分でキノコや杉の実を集めたりはせず、冬を間近に控えていても、食料を貯蔵したりはしない。
全てがそこに棲むたくさんのリスたちによって調達されている。
リスが冬に備えて食料を貯蔵することはよく知られていて、何ら驚くべきことではないし、彼らはどこにいても本能に従ってそうする。
私が一番驚いたのはそのことではない。
アナスタシアとリスのやり取りに驚いたのだ。
アナスタシアが指を鳴らすと、彼女の近くにいたリスたちが、彼女の手のひらに先を争って飛び乗り、そこに皮をむいた杉の実を置く。
また彼女が、すこし曲げた膝を叩くかあるいは地面を叩くと、リスたちは、何やら騒がしく音を発しながら、干したキノコやその他の貯蔵してあるものを掘り出し、彼女の前の草の上に積んで行くのだ。
彼らが騒がしくなるのは、他のリスにも知らせて呼び出そうとしているからなのかもしれない。
彼らはこの一連の作業をすこぶる楽しげに、満足げにやってのける。
少なくとも私にはそう見えた。
彼女がリスたちを訓練したのだろうと思っていたが、アナスタシアがいうには、彼らのこの行動は本能に基づくもののようで、母親リスが子供達に手本を示して教えるのだそうだ。
「ずっと昔、私の祖先が彼らを訓練した可能性もあるけど、多分、彼らはこういったことをする習性が先天的に組み込まれているのだと思う。実際、リスは冬に備えて自分が食べる量の何倍もの食料を蓄えるから。」
冬で思い出したので、アナスタシアに、君は冬も上着を着ないでいて、なぜ凍えてしまわないのかと尋ねてみると、彼女は逆に聞いてきた。
「あなたの世界にはいない?服を着ないで寒さをしのげる能力のある人。そういう例はない?」
そう言われて思い出した。
ポルフィリー・イワノフが書いた本に、どんな寒さの中でも、パンツ一丁という裸同然の格好で過ごす男のことが出ていた。
ファシストたちがこの異常なロシア人の耐寒度を試そうとして、零下20度の極寒のなかで彼に冷水をぶっかけて、裸のままオートバイに乗せて連れ回したなどという記述があった。
アナスタシアは幼児の頃、母乳以外に、いろいろな動物の乳も飲んで育ったらしい。
どの動物もごく自然に彼女に乳首を吸わせたという。
彼女には食事に関するルールは全くなく、時間も決めていない。
食べるために座るということもしない。
ベリーや若葉を摘み取って歩きながら食べ、自分の仕事に専心するのだ。
彼女と一緒に過ごした3日間が終わる頃には、私はもはや最初の頃のように彼女に対することはできなくなっていた。
その言動を見聞きするうちに、彼女が普通の人間とは異なる生き物のように思えてきたのだ。
高度な知性を持つので野生動物ではないが、その脅威的な記憶力、彼女は一度見たり聞いたりしたことは決してわすれない…も尋常ではない。
彼女の能力は、普通の人間には到底理解できないレベルだが、私がそう考えていることが、彼女を辛く悲しい気持ちにさせるようだった。
普通特殊な能力を持つ人というのは、自分が神秘的で特別な存在であることを印象付けようとするものだが、アナスタシアは違っていた。
彼女は常に自分の能力のメカニズムを明らかにして、説明しようとした。
自分たちは何ら超自然的な力の持ち主ではない。
自分は人間であり、女性である。
このことをわかってほしいと、何度も言った。
私は彼女の願いにそうべく、見聞きする並外れた現象を極力、理性的に理解しようと努めた。
文明社会においては、人々は常に、あらゆる手段をこうじて日々の生活を整え、食料を確保し、性的な充足を得ることに戦々恐々としているが、アナスタシアはこうしたことには一切時間を使わない。
リーコフ・ファミリーのような生き方をする人々でさえ、食物を獲得し、風雨から身を守ることに頭を使わなければならなかったようで、彼らはアナスタシアほど自然から助けを得ていない。
この地球上には、ほかにも文明社会から離れて暮らす様々な種族が存在するが、アナスタシアと同じレベルの自然との関係は見られないようだ。
アナスタシアによれば、彼らの意図が十分、純粋でないので、自然界と動物界がそれを察知してしまうのだと言う。


続く→

この本で書かれていることが事実であるということで、著者のウラジミールが書いていることが驚くべきことです。
私たちは、アナスタシアのような人を何と表現したらいいのでしょう?
この後さらに、尋常ならざる彼女の能力が記されて行きます。
しかし…
彼女によれば、私たちは彼女と同じ人間なのです。




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