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第二進化・アトランティス・ジーン(1)A・G・リドルー18

2020.02.28.22:34





32

インドネシア、ジャカルタ  イマリ・ジャカルタ本部

ケイトはマーティンの部下たちに連れられて地下深く潜り、長い廊下の先にある水族館のような場所に行きついていた。
ガラス窓は、少なく見積もっても高さ4メートル、幅は20メートルほどありそうだった。
自分が何を見ているのか、ケイトにはよく分からなかった。
ガラスの向こうに広がっているのは、明らかにジャカルタ湾の海底だが、そこで動いている生き物が妙だったのだ。
初めはクラゲか何か、光を発する海洋生物が、海底と水面の間をふわふわと行き来しているのだと思った。
だが、それにしては光がおかしかった。
ケイトはガラスに近づいて確かめた。
やはりそうだ。
これはロボットなのだ。
蟹によく似たロボットで、目のようにグルグル回るライトと、金属の爪が3つある腕を4本持っている。
それが海底に穴を掘って潜り、機械の爪で何かを握って戻ってくるのだった。
ケイトは目を凝らした。
何を握っているのだろう?
「長い年月の間に、発掘手法も進歩したんだ。」
振り返ると、マーティンがいた。
その顔にケイトはハッとし、そして不安になった。
疲れ果て落胆し、諦めたような表情をしていたからだ。
「マーティン、ちゃんと訳を話して。研究所から連れ去られた子供たちは、どこにいるの?」
「安全なところにいる。今のところはな。時間がないんだ、ケイト。質問に答えてくれ。あの子たちにどんな治療をしたのか教えてくれないと、大変なことになってしまう。ARC247でなかったことはわかっているんだ。」
なぜ彼がそのことを知っているんだろう。
それにどうして、あの子たちに使った療法を気にするのだろう。
ケイトは考えようとした。
どこか変だ。
もし彼に教えたら、何が起きるのか。
あの兵士、デヴィッドが言ったことは正しかったのだろうか。
この4年の間、ケイトが心から信頼できる男性、いや男女合わせても、それはマーティンだけだった。
彼はいつも仕事で忙しかったし、ずっと離れて暮らしていたので、養父と言うよりは法的保護者と呼ぶ方が相応しかった。
だがケイトが必要としているときは、必ずそこにいてくれた。
彼が拉致に関わっているはずがない。
それでも…何かがおかしかった。
「療法は教えるわ。でも先に、子供たちを返して欲しいの。」
ケイトは言った。
マーティンが近寄ってきて、一緒にガラス窓の前に立った。
「残念ながら、それは無理そうだ。だが約束する。子供たちは私が守る。私を信じてくれ、ケイト。大勢の命がかかっているんだ。」
子供たちを何から、守るというのか。
「一体、何が起きているの?教えてちょうだい、マーティン。」
マーティンが背を向けて離れて行った。
何か考え込んでいるようだ。

「もしこの世界のどこかに、想像を絶するほどの強力な兵器があると言ったら、お前はどう思う?人類を絶滅させられるほどの超兵器だ。そして、その兵器に対し、人類を救う唯一の手段が、お前の療法だと言ったら?」
「馬鹿げた話だと思うでしょうね。」
「そうだろうか?お前だって進化については、よく知っているだろう。馬鹿げた話ではない。人類は決して自分たちが思うほど、安全ではないんだ。」
マーティンが、ガラス窓の向こうに下りてくるロボットを手で示した。
「あそこで何が行われていると思う?」
「宝を掘っているのかしら?沈没した貿易船があるとか。」
「これが宝探しに見えるか?」
ケイトが何も答えずにいると、マーティンが続けた。
「あそこにあるのは、消えた沿岸都市だ。そう言ったら驚くかね?しかもこうした都市は世界中にあるんだ。今から1万3千年ほど前、ヨーロッパの大部分は厚さ3キロメートルの氷に覆われていた。
ニューヨークの上にも2キロ近くの氷があった。それらの氷河は、その後数百年の間に溶けていき、海面が120メートル近くも上昇した。地球上にある全ての沿岸集落が、海の底に沈んだのさ。
今だって、全人口の4割近くが海岸から100キロ以内に住んでいる。当時はどれ細多くの人間が沿岸部に集まっていたことか。魚が一番安定した食料で交易も海路に頼っていた時代だからな。
永遠に消えてしまった集落や古代都市のことを考えてごらん。そこにどんな歴史があったのかは、もはや知るすべがない。この出来事を記録した唯一の資料は、大洪水の物語だ。
氷河の融解による洪水を生き延びた人々が、どうにか後世に警告しようとして残したのだろう。大洪水は歴史的な事実、これは地質学調査で裏付けられている。で、聖書を含め、時代は違っても、様々な史料に洪水物語が登場する。シュメールやアッカドの粘土板、ネイティブアメリカンの諸文書、どれも洪水があったことを伝えている。だがその前に、何が起きたのかは誰にもわからない。」
「これはそういう話なの?消えた沿岸都市を、アトランティスを発見したいということ?」
「アトランティスはお前が考えているようなものではない。私が言いたいのは、海底には、たくさんの物が埋もれているということだ。私たちの知らない、私たちの過去がな。大洪水の時代に消えたものは、他にもある。
遺伝学的な歴史はお前もよく知っているな?大洪水が起きた頃は、まだ少なくとも2種の、あるいは3種の、ヒトが存在していた。もしかすると、もっといたかも知れない。最近になってジブラルタルで発見されたネアンデルタール人の骨は、2万3千年前のものだった。今後さらに新しい時代の骨が見つかる可能性は十分にある。そしてつい最近、わずか1万2千年前の、大洪水があった頃だ、骨も発見された。
私たちが今いる場所のすぐ近く、ジャワ島の東にあるフローレンス島でのことだ。このホビットのように小さいヒトは、およそ30万年の間、地球上にいたと考えられている。それが1万2千年前になって突然、死に絶えてしまった。ネアンデルタール人などは、その祖先が誕生してから60万年もの間、つまり我々の3倍近くも、地上を歩き回っていたのに、やはり絶滅してしまった。お前もこうした歴史は、知っているだろう?」
「もちろん、知っているわよ。だけど、その話が子供たちの件とどう結びつくのか、さっぱりわからないわ。」
「お前はネアンデルタール人やホビットが絶滅したのは、なぜだと思う?彼らは私たち現生人類が登場する前から生きていたのに。」
「私たちが殺したからよ。」
「その通りだ。いつだって人間は、一番殺す生き物なんだ。どうだろう、私たちは元々生き残るように、プログラムされている気がしないか?大昔の祖先でさえ、生き残りたいという衝動に突き動かされ、ネアンデルタール人やホビットを危険な敵だと認識した。彼らは違う種の人間を大量に殺したに違いない。その恥ずべき遺産は、いまだに生きている。私たちは自分と違うもの、理解できないもの、自分の世界や環境を変えそうなもの、そして、生き残る可能性を少しでも奪いそうなものを全て攻撃してしまう。人種差別、階級闘争、性差別、東西対立、南北対立、資本主義共産主義、民主制対独裁制、イスラム教対キリスト教、イスラエル対パレスチナ、これらは全て、元を正せば同じ戦いだ。違う種を消し、同種の人類だけを残すための戦いだよ。この戦いが、まるでバックグラウンドで常に動いているコンピュータープログラムのように、人間の意識下にあって、私たちを導いているんだ。」
ケイトは何をいうべきか、わからなかった。
それに自分の治験や子供たちとどんな関係があるのかも。
「もしかしてあの子たちは、太古から続く人類の戦いに巻き込まれたってこと?そんな話を信じろというの?」
「そうだ、ネアンデルタール人と人間の戦いを考えてみろ。人間とホビットの戦いを。なぜ私たちが勝ったと思う?ネアンデルタール人は、私たちよりも大きな脳を持っていたし、体も大きくて強かった。
だが私たちの脳は、回路が違ったんだ。私たちの脳は、高度な道具を作り、問題を解決し、先を見通すような回路を持っていたんだ。脳内のソフトウエアのおかげで、優位に立てたという訳さ。しかしどうやってそんな強みを手に入れたのかは、いまだにわかっていない。5万年前までは、私たちも彼らと同じただの動物だった。ところがいわゆる、大飛躍が、いまだに解明できない強みを、私たちに与えた。
はっきりしているのは、脳の回路が変化した、ということだけだ。おそらく言語やコミュニケーションの能力に変化が生じたのだろう。人間は急激に変化したんだ。もちろんお前も、こうした話は全て知っているだろう。
だがもし、変化が再び起きているとしたら、どうだ?あの子供たちの脳は、他とは違う回路を持っている。進化がどう進んでいくかは知っているだろう。進化は直線的な道を辿るわけではない。試行錯誤を繰り返していくものだ。あの子供たちの脳は、簡単に言うと、人間の頭を動かすオペレーティング・システムの次世代版、なのかも知れないんだ。Windowsやマックの新OSのようなもので、より新しく、より早く、旧バージョン…つまり私たちよりも様々な強みを持っている。もしあの子たちや同じような状態のものが、人類の系統樹にはえた新しい枝だったとしたら?新しい種の、誕生だ!そしてもし、この地球上にすでに新バージョンのソフトウエアを積んだ人々がいるとしたら?彼らは私たち旧式の人間を、どう扱うと思う?おそらく私たちが、自分たちより愚かな人類、ネアンデルタール人やホビット、にしたのと同じことをするだろう。」
「馬鹿馬鹿しい。あの子たちは危険な存在なんかじゃないわ。」
ケイトは、マーティンを眺め回した。
いつもと様子が違う…本気かどうかよくわからない目つきだ。
それに遺伝学的な歴史やら、進化やら、ケイトが知っていることを延々としたりして、一体どうしたのだろう?
「そうは見えないかも知れないが、本当のところなどわからないだろう?」
マーティンは続けた。
「歴史を見る限り、進化した人類はいつも脅威と映る他の種族を、皆殺しにしてきたじゃないか。我々は前回は捕食者だったが、次は獲物になるんだよ。」
「じゃあ、その時がきてからどうにかすればいいわ。」
「すでにその時はきている。我々が気づいていないだけさ。まさに、フレーム問題、というやつだな。複雑な環境においては、自分の行動の結果は、正確に予測できないものなんだ。いくらその時点では良い行動に思えるとしてもな。フォードは自分では大量輸送のための道具を作っていると、思っていた。だが同時に、彼は環境破壊の手段を世に送り出していたんだよ。」
ケイトは頭を振った。
「自分が何を言っているかわかっているの?マーティン。おかしいわ、妄想に取り憑かれているみたい。」
マーティンは笑みを浮かべた。「私も同じことを言ったよ。お前の父親から聞かされた時にな。」
そんなことがありえるだろうか?
いや、ありえない、嘘だ。
少なくとも錯乱しているのだ。
あるいは信用させるための方便か、自分が養父であることを思い出させるための手か。
マーティンをじっと見据えた。
「つまり進化を阻止するために、子供たちを連れ去ったということ?」
「それは少し違うが…全てを打ち明けるわけにはいかないんだよ。ケイト、私も本当は話したいんだが、言えるのはこれだけだ。あの子たちは人類に滅亡をもたらす戦いを、食い止めるための鍵を握っている。
6万年から7万年前、私たちの祖先がアフリカを旅立った時からこの戦いのカウントダウンは、始まっていた。私を信じるんだ、ケイト。子供たちに何をしたのか教えてくれ。」
「トバ計画というのは何?」
マーティンが不意打ちを喰らったような顔をした。
いや怯えている顔かも知れない。
「どこで、それを聞いたんだ?」
「警察署から私を連れ出してくれた兵士から聞いたの。あなたも関わっているの?トバ計画に。」
「トバは…緊急用のプランだ。」
「あなたも関わっているの?」
ケイトは冷静な口調で聞いたが、本当は答えを聞くのが怖かった。
「ああ、だが…トバ計画を実行に移すことはないだろう。もしお前が話してくれればな。ケイト。」
武装した男が四人、裏口からはいって来た。
ケイトは初めて見る顔だった。
マーティンが彼らの方を振り返った。
「まだ話している最中だ!」
ケイトは警備員二人に腕を掴まれて、部屋から連れ出され、先ほどマーティンに会うために歩いてきた長い廊下を再び歩かされた。
遠くで、残りの男二人とマーティンが言い争っているのが聞こえた。
「スローン代表から、時間切れだと伝えるように、言われました。彼女は話さないし、どのみち知り過ぎていると。代表がヘリポートでお待ちです。」

続く→

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第二進化・アトランティス・ジーン(1)A・G・リドルー17

2020.02.28.22:33





30

インドネシア、ジャカルタ イマリ・ジャカルタ本社


マーティン・グレイは亡霊でも見るような目で、ドリアン・スローンを見つめながらそっと部屋に入った。
そこはイマリ・ジャカルタ本社の66階にあるマーティンの役員室で、イマリ警備の代表は部屋の奥に立っていた。
ジャワ海の方を向き、行き交う船を眺めている。
入室したところを見られていないはずなので、マーティンは年下のその男に、いきなり話しかけられてギョッとした。
「俺が来ていて、驚いたか?マーティン。」
スローンはガラスに映るマーティンを見ていたのだ。
ガラスはスローンの目も映していた。
冷酷で用心深く、鋭い目…まるで獲物を観察して機会を窺う捕食者のそれだ。
反射が不完全なせいで、顔の残りの部分は見えない。
手は後ろに組んでいる。
長い黒のトレンチコートが、ここジャカルタではとても場違いに感じられた。
気温も湿度も高いこの土地では、銀行家でさえスーツを着ない。
上着を着込むのは、ボディガードか、もしくは何かを隠そうとしている者だけだ。
マーティンはなるべく自然に振る舞おうとしていた。
大股で歩き、広いオフィスの真ん中ある自分のオーク剤のデスクに向かった。
「ああ、正直言うとな。今はちょっとタイミングが悪かった。」
「やめろ。すべて知っているんだぞ。マーティン。」
ゆっくりと振り返り、一語一語を区切るようにそう言うと、スローンはデスクにいる年上の男をひたと見据えて近づいて来た。
「南極での穴掘りも、チベットへの干渉も、子供たちのこともな。拉致したことも知っているぞ。」
マーティンはデスクの裏に回って、間に障害物を挟もうとした。
が、爪先の向きを変えた途端に、スローンが進路を変えて側面から近寄って来た。
たとえ自分のオフィスでこの残忍な男に喉を切られるとしても、一歩も引かない覚悟を決めた。
マーティンは真っ直ぐにスローンを見返した。
スローンの顔はたくましく引き締まっていたが、長年に渡る過酷な暮らしのせいだろう。
これは苦痛を知っている人間の顔だ。

スローンがマーティンの1メートルほど手前で、ピタリと足を止めた。
そしてマーティンの知らない秘密があるとでも言いたげに、薄笑いを浮かべた。
すでに罠の仕掛けは動いていて、あとは待つばかりだとでも言うように。
「その気になれば、もっと早く分かったんだ。だが何しろ、クロックタワーのことで忙しかったからな。まあ、あんたもその件は、とっくに知っているだろうが。」
「もちろん報告書は読んだ。確かにタイミングが悪くて残念だった。君が言った通り、私の方も手がいっぱいだったものでな。」
マーティンは微かに震え始めた手を、ポケットに押し込んだ。
「最近の成果については、全て伝えるつもりだったんだ。南極の件も、中国の件も。」
「気を付けろ、マーティン。あとひとつでも嘘をついたら、終わりだ。」
マーティンは唾を飲み込み、俯いて考えを巡らせた。
「ひとつだけ聞かせてもらおうか、爺さん。何が狙いだ?あんたがせっせとして来た作業をつなぎ合わせても、いまだに目的がわからない。」
「誓いを破るような真似はしていない。私が目指すゴールは、我々が目指すゴールと同じだ。勝てないとわかっている戦いを回避することさ。」
「それなら意見は一致するな。やる時がきた。トバ計画を実行に移すぞ。」
「だめだ、ドリアン。まだ道はある。本当だ。成果を伝えなかったのは、ちゃんとした理由があってのことだ。時期尚早と思ったんだよ。成功するかどうかわからなかったからな。」
「成功しなかったんだろう。中国からの報告書を読んだが、大人は全滅だったそうじゃないか。時間切れだ。」
「確かに実験は失敗した。だがそれは、誤った療法だったからだ。ケイトが使ったのは、何か別の療法だったんだ。あの段階ではそのことを知らなかったが、ケイトが教えてくれるだろう。明日の今頃には、あの墓場に足を踏み入れられるかも知れない。ようやく真相をつかめるんだよ。」
望みの薄い賭けだったが、意外なことに、スローンの鋭い視線が初めて揺れた。
彼は目を逸らし、下を見つめた。
しばらくそうしていたが、やがて背中を向けて窓辺に戻ると、マーティンが入って来たときと同じ姿勢をとった。
「真相はもうわかっている。それにケイトや新療法のことは…子供を奪ったんだろ。きっと彼女は口をわらない。」
「私になら教える。」
「彼女のことなら、俺の方がよく知っているさ。」
マーティンは頭に、血が昇るのを感じた。
「潜水艦はもう開けたのか?」
スローンが静かな口調で聞いた。
その質問にマーティンは息を呑んだ。
スローンは自分を試しているのだろうか?
それとも…
「いや。」
マーティンは答えた。
「万全を期して、膨大な検疫作業をこなしている最中だ。安全そうだと言う話は聞いているが。」
「開けるときは俺も立ち会いたい。」
「70年以上も密封されていたんだ。何も…」
「立ち会いたい。」
「もちろん、構わない。あちらに連絡を入れておこう。」
マーテインは電話に手を伸ばした。
信じられない展開だった。
3分も水中にいた後で、思い切り新鮮な空気を吸い込んだような、そんな希望を感じた。
急いで番号を押した。
「俺たちがいつ着くか伝えておいてくれ。」
「私は別に…」
スローンが振り返った。
その目に殺気が戻っていた。
射抜くような目つきで、睨み付けてくる。
「あんたの意見など聞いていない。一緒に潜水艦を開けるんだ。この件が片付くまで、あんたから2度と目を離さないからな。」
マーテインは受話器を置いた。
「構わない。だが、まずはケイトと話をさせてくれ。」
そう答えると、深く息を吸って、背筋を伸ばした。
「これについては、私も君の意見は聞いていない。君には私が必要だ。それはお互いわかっているだろう。」
スローンは、窓に映ったマーティンを見つめていた。
年下の男の口に、小さな笑いが浮かんだようだった。
「いいだろう。10分だけ認めてやる。だがもし失敗したら、俺たちは南極へ出発する。そして彼女は口をわらせるのが得意な人間に預けるからな。」


31

インドネシア、ジャカルタ 川辺のスラム


デヴィッドはイマリ警備の隊員が、周囲を確かめてから家へ駆け込んだくるのを見つめていた。
そこは通路の奥に位置した5部屋ある家で、間取りが好都合なため選んだのだった。
男たちは機械的な動きで、次々と部屋を調べていった。
正面で拳銃を構えて脚を踏み入れ、素早く銃口を左右に向けている。
デヴィッドは身を潜めている場所から、男たちの声を聞いていた。
「異常なし。異常なし。異常なし。」
彼らが歩調を緩め、安全が確認された住居から去ろうとする足音が聞こえた。
二人目の男が目の前を通過したところで、デヴィッドはそっと背後に近づいた。
湿った布で男の口を塞ぎ、クロロフォルムが口内と鼻腔に充満するのを待った。
男は激しくもがき、みるみる重くなっていく手で、必死にデヴィッドを掴もうとした。
口を塞ぐ手に力を込めた。
声が漏れ出すことはなかった。
男が床に崩れ落ち、デヴィッドが次の男を狙おうと注意を向けたとき、隣の部屋で無線が入る音がした。
「イマリ追跡隊第五班、緊急連絡。そちらの地区の武器庫が使用されたと言う報告がクロックタワーから入った。標的は、近隣にいると思われる。また、庫から持ち出した銃器や爆発物を、所持している可能性がある。注意して追跡作業を続行しろ。直ちに応援部隊を派遣する。」
「コール、聞いたか?」
デヴィッドはたった今動かなくなった男、明らかにこれがコールだろう…の傍にうずくまった。
「コール?」
隣の部屋でもう一人の男が呼んだ。
兵士のブーツの下で、土埃がすり潰される音がした。
男の足の運びが、確実に遅くなっていた。
地雷原を進んでいるかのように。
一歩一歩が命がけと言った様子で、近づいてくる。
デイヴィッドが立ち上がった瞬間、戸口から男が飛び込んできた。
銃口がデヴィッドの胸を狙っていた。
デヴィッドは男に突進し、倒れ込んで銃を奪い合った。
男の両手を埃まみれの床に叩きつけると、銃が壁際へと滑って行った。
男がデヴィッドを押し除け、腹這いになって銃の元へ行こうとした。
デヴィッドはすぐ様また男に馬乗りになり、肘で首を挟んで、きつく締め上げた。
もう一方の手で首の付け根を押し、効果を増大させた。
獲物の気道が塞がるのを感じた。
こうなれば長くない。
男が羽ばたくようにはねて首に回された腕を掻きむしった。
足の方に手を伸ばして、何かをつかもうとしている。
なんだ?…ポケットか?
男の手に握られていたのは、ブーツから抜き取ったナイフだった。
男がデヴィッドの背を刺して脇腹まで刃を走らせた。
服の裂ける音がし、血の付いた刃先が見えた。
その刃が再び振り下ろされた。
デヴィッドは横に身を滑らせ、かろうじて2度目の攻撃をかわした。
首の付け根にあった手を上方に移動させ、首に回した腕と交差するように、頭を掴んで思い切り引いた。
骨が折れる大きな音が響き、男の体から力が抜けた。
デヴィッドは息絶えた傭兵から転がって下り、天上を見つめた。
視線の先では、二匹のはえが縺れ合って飛んでいた。

続く→

第二進化・アトランティス・ジーン(1)A・G・リドルー16

2020.02.28.22:32





26


インドネシア、ジャカルタ   プサングラハン川


漁師は船を漕いで川を下り、ジャワ海へと向かっていた。
ここ数日は魚のかかりが良かったため、予備の網も、家にあるだけ全部、積んでいる。
船が網の重みでいつもより深く沈んでいた。
うまくいけば日が落ちる頃には、魚でいっぱいになった網を引いて戻ってこられるだろう。
小さな家族が食べる分を除いても、市場で売る魚は十分に残るはずだった。
ハルトは舳先で櫂を漕いでいる息子のエコを眺めた。
じきにハルトが引退すれば、エコが漁を引き継ぐだろう。
そしていつかエコも、息子を船に乗せて漁を教えるだろう。
ハルトの父親がハルトにしたように。
それが彼の願いだった。
だがこのところハルトは、不安を感じ始めてもいた。
物事はそんなふうに運ばないかもしれない。
年を追うごとに船が増え、魚は減っている。
1日の量の時間は長くなっているのに、網にかかる魚は減る一方なのだ。
ハルトは無理に気を取り直した。
いい時もあれば、悪い時もある。
海と同じだ。
それが当たり前なのだろう。
どうにもできないことで、クヨクヨしてはいけない。
息子が櫂を漕ぐ手を止めた。
船が回り出した。
ハルトは叫んだ。
「エコ、手を休めるな。息を合わせて漕がないと、回ってしまうんだ。集中しろ。」
「何か浮かんでいるんだ、父さん。」
ハルトは川に目を向けた。
確かに、何か黒いものが浮いている。
人だ。
「急いで焦げ、エコ。」
傍まで近づくと、ハルトは腕を伸ばしてその男を掴み、網が積まれた小さな船へ引き上げようとした。
ずっしりと重かった。
鎧か何かをつけているようだ。
しかしその鎧が水に浮いているのだ。
新しい特別な素材かもしれない。
男を裏返した。
ヘルメットとゴーグルが鼻を覆っており、そのおかげで溺れていないようだった。
「ダイバーかな、父さん。」
「いや、多分、警官だろう。」
また男を引き上げようとしたが、船がひっくり返りそうになった。
「エコ、こっちへ来て手伝ってくれ。」
父と息子は力を合わせ、ずぶ濡れになった男を引っ張り上げた。
と、男の体が船縁を越えた途端、船底にみるみる水が広がり始めた。
「父さん、沈没してしまうよ!」
エコが慌てた顔で辺りを見回した。
水がヘリを超えて流れ込んでいた。
何か捨てられるものはないか?
この男を落とすべきだろうか?
この川は海に通じている。
流されれば確実に死んでしまうだろう。
二人は男を掴んだまま、どうすることもできずにいた。
流れ込む水は、いよいよ勢いを増している。
ハルトは網に目をやった。
他に重いものといえばこれしかない。
しかしこの網は、エコに譲ってやるものだ。
家の唯一の財産であり、食べ物を得るために必要な、たった1本の命綱だった。
「網を捨てろ、エコ。」
若者は、何も聞かずに父親の言葉に従った。
一つづつ網を放り、悠然と流れる川に、自分の相続物を与えて行った。
ほとんどの網が消えた頃、ようやく水の流れが止まった。
ハルトは尻餅をつき、男は空な目を向けた。
「どうしたの?父さん。」
父親が何も答えずにいると、エコは助けた男と父のもとへ急いでやってきた。
「死んでしまったの?もう…」
「家に連れて帰ろう。一緒に漕いでくれ。エコ、この人にはきっと、何か大変な事情があるんだ。」
二人は舳先の向きを変えて、川を上り始めた。
流れに逆らい、ハルトの妻と娘が待っている家を目指して。
妻たちは二人が持ち帰る魚を処理しようと、支度して待っているだろう。
今日はただの一匹も、魚がないというのに。


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<AP通信社>ケーブル配信 ニュース速報
インドネシア、首都ジャカルタで爆発と銃撃戦

インドネシア、ジャカルタ発 
ジャカルタ市内の数カ所で、爆発と銃撃戦があったという報告が、AP通信社に複数寄せられている。
今のところ犯行声明を出したテロ組織はないが、インドネシア政府関係者が非公式に語ったところによると、政府は組織的犯行と見ている模様。
現時点では犯行の目的などはわかっていない。
現地時間の午後1時ごろ、市内3か所に渡り、荒廃した住宅区域に建つ高層アパート3棟が爆破された。
関係者によればそのうち少なくとも、2棟は無人と考えられていた。
またこの爆発の数分後には、市場付近の路上でも爆発と銃撃戦があった。
死傷者は未発表で、警察はコメントを拒否している。
詳細が分かり次第、随時報告する。

<ジャカルタ・ポスト紙>
ジャカルタ西警察署署長を逮捕

インドネシア国家警察は今日、ジャカルタ西警察署署長エディ・クスナディを児童ポルノ禁止法違反で逮捕したと発表した。
後任のパク・クルニア署長は、次のように述べている。
「ジャカルタ首都警察とジャカルタ西警察署にとって、今日は悲しくも恥ずべき日となってしまいました。しかし、警察内部に潜む悪と対決する我々の意思こそが、我々をより強くするのであり、それが市民からの信頼に応える道だと考えております。」


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インドネシア、ジャカルタ イマリ・ジャカルタ本社

後ろでに手首を縛られたケイトは、頭に黒い袋をかぶせられたまま椅子に座っていた。
ここへ来るまで随分手荒な扱いを受けた。
この30分というもの、兵士たちはまるでぬいぐるみを扱うように、ケイトを引いたりこづいたりしていたのだ。
ヴァンからヴァンへ乗り換えさせ、いくつもの廊下を歩かせたあと、最後はこの椅子へ押し付けて乱暴にドアを閉めた。
闇のなかを動いたせいで、ケイトは吐き気を感じていた。
結束バンドで手首が痛いし、厚手の黒い袋からでは、全く視界がきかない。
5感が遮断されたかのように、闇と静けさがケイトの感覚を狂わせていた。
ここに座ってから、どのくらいたつのだろう?
やがて、何かが近づいてくる音がした。
廊下か広い部屋を歩いているような足音だ。
1秒ごとにその響きが大きくなっていった。
「頭の袋をとれ!」
マーティン・グレイの声だった。
マーティン…義父の声を耳にした途端、ケイトの体に安堵の波が広がった。
暗闇が薄くなり、手首の痛みも和らいだように思えた。
もう安心だ。
マーティンが子供たちの捜索を手伝ってくれるだろう。
袋が外されるのを感じた。
ライトに目が眩み、眉をしかめて瞬きしたが、耐えきれずに顔を背けた。
「手のバンドもはずせ!誰がこんなまねをしたんだ!」
「私です、彼女が抵抗したんですよ。」
まだ目は使えなかったが、その声は知っていた。
トラックから彼女を連れ去った男、病院から子供たちを拉致した男。
そして、ベン・アデルソンを殺した男だ。
「よほど彼女が怖かったと見えるな。」
マーティンの声は冷淡で威圧的だった。
彼のそんな話し方を耳にするのは初めてだった。
見覚えのない男二人が忍び笑いを漏らし、ケイトを連れ去った男がこう答えた。
「好きなだけ言ってろ、グレイ。あんたの指図は受けない。それにさっきは、こちらの仕事に満足していたようだがな。」
どういう意味だろう?
マーティンの口調がわずかに変わった。
どこか面白がっているようだ。
「お前こそ、歯向かうつもりのようじゃないか、ミスタ・タリア。いいだろう、どういうことになるか教えてやる。」
ようやくケイトにマーティンの顔が見えた。
険しい表情をしている。
彼は男を見据え、やがて他の二人の方へ向き直った。
おそらくマーティンが従えてきた兵士だ。
「監禁室へ連れて行け。袋をかぶせて、手も縛るんだ。きつく縛ってやれよ。」
男二人が拉致の犯人を捕まえ、先ほどまでケイトがかぶっていた袋をかぶせて、外へ引きずって行った。
マーティンがケイトの前にしゃがんだ。
「大丈夫か?」
ケイトは手首をさすりながら、身を乗り出した。
「マーティン、子供たちが研究所から拉致されたの。あの男は犯人の一味よ。あの子たちを見つけて…」
マーティンが片手をあげた。
「知っている。何もかも説明しよう。だがまずは、あの子たちに何をしたのか聞かせてくれ。とても大事なことなんだ、ケイト。」
ケイトは答えようと口を開けたが、どこから始めたらいいのかわからなかった。
様々な疑問が、頭を駆け巡っていた。
話をする間もなく、男がまた二人、広い室内に入ってきて、マーティンに言った。
「スローン代表が、話したいそうです。」
マーティンは苛立った様子で、顔をあげた。
「後で電話する。この件は…」
「代表がお見えになったのです。」
「ジャカルタにか?」
「ここにです。あなたを代表の元まで連れて行くよう指示されました。申し訳ありません。」
マーティンが不安そうな表情を浮かべ、ゆっくりと立ち上がった。
「彼女を下に案内しろ。発掘現場の展望デッキだ。それから…ドアの監視も頼む。すぐに戻る。」
マーティンの部下がケイトを外へ連れ出した。
安全な距離を保ちながらも、鋭い目つきでこちらを見張っている。
ケイトは、マーティンについている部下も彼に同じ態度をとっていることに気づいた。

29

インドネシア、ジャカルタ プサングラハン川

ハルトが見守る中、謎めいたその男は両肘をついて体を起こし、ヘルメットとゴーグルを外して困惑したように辺りを見回した。
被っていたものを船の外に放り、また横になったが、数分すると今度は服の脇にあるストラップと格闘しはじめた。
そしてどうにかすべてを外し終えると、その大きなヴェストもやはり川へ放った。
ハルトはヴェストの胸に空いた大きな穴に気付いていた。
きっと使い物にならなくなったのだろう。
男は胸をさすって荒い呼吸を繰り返していた。
アメリカ人かヨーロッパ人のようだ。
これはハルトにとって驚きだった。
肌の白さには気付いていた。
船へ引き上げる時に顔の一部が見えたからだ。
日本人か中国人だと思っていた。
なぜ武装したヨロッパ人が、この川に浮かんでいたのだろう?
警官ではないかも知れない。
犯罪者かテロリストか、麻薬カルテルの兵隊か。
助けたせいで自分たちにも危険が及ぶだろうか?
ハルトは櫂を漕ぐ手を速めた。
船が回り出したことに気づき、エコも速度を上げた。
飲み込みが早い子だ。

呼吸がいくらか落ち着いたのか、白人の男が起き上がって英語を口にしはじめた。
エコが振り返った。
ハルトは何を言えばいいのか、わからなかった。
ゆっくり話かけてくる兵士に、唯一知っている英語を告げた。
「妻は英語を話せます。妻に言ってください。」
男はまた仰向けになった。
ハルトとエコが船を漕ぐ間、男は空を見つめて胸を刺すっていた。

防弾服のバイオ・モニターは、胸を打たれた時に壊れたはずだった。
無論デヴィッド自身も傷を負っているだろう。
ヘルメットの追跡装置はまだ生きているが、すでに川底へ沈んだ。
デヴィッドはこのジャカルタの漁師に心から感謝した。
命の恩人だ。
だがどこへ連れて行くつもりだろう。
イマリは、デヴィッドに懸賞金をかけている可能性がある。
つまり二人は、たまたま宝くじを拾ったわけだ。
彼らがデヴィッドを突き出すつもりなら、逃げなければならないだろう。
とは言え今は、息をするのもやっとの状態だ。
いざとなれば動くしかないが、体を休める必要もある。
デヴィッドはしばらく川面を見つめ、やがて目を閉じた。

デヴィッドはここちよい柔らかなベッドにいるのを感じた。
中年のインドネシア人女性が、デヴィッドの額に、濡れた布を押し当てていた。
「聞こえますか?」
彼の目が開いたのを見ると、女性は背を向けて別の言語で叫びはじめた。
デヴィッドは彼女の腕を掴んだ。
女性が怯えたような顔をした。
「乱暴するつもりはありません。ここはどこですか?」
デヴィッドは聞いた。
気分がだいぶ良くなっていることに気づいた。
胸に痛みはあるものの、呼吸が楽になっている。
起き上がって彼女の腕を放した。
女性が住所を口にしたが、知らない地名だった。
次の質問をする間もなく、彼女は後ずさって部屋の外へと出て行った。
わずかに首を傾げ、警戒するような目をこちらに向けていた。
デヴィッドは胸のあざをさすった。
考えるんだ。
公然とデヴィッドの隊を攻撃する危険を犯したということは、連中はすでにジャカルタ支局本部を制圧したのだろう。
ジョシュ…。
また一人兵士が死んでしまった。
俺がトバ計画を阻止しなければ、もっと大勢の兵士が死ぬ。
そして民間人も、あの時のように…。
集中しろ。
目下の脅威は何だ?
連中はワーナーを連れて行った。
彼女が必要なんだ。
彼女が何らかの形で関わっている。
だがとてもそうとは思えなかった。
ケイト・ワーナーは、純粋で誠実だった。
自分の研究に信念を持っている。
彼女自身はトバ計画に加担していないだろう。
連中が必要としているのは、彼女の研究なのだ。
それを利用しようと企んでいる。
連中は力づくで、情報を聞き出そうとするに違いない。
このままでは彼女もまた、罪なき犠牲者になってしまう。
彼女の奪還に全力を注ぐべきだ。
彼女以上の手がかりはない。

腰を上げ、家の中を歩いてみた。
何室か部屋があり、部屋を仕切る薄い壁には手書きの絵が、たくさん飾られていた。
ほとんどが漁師を描いたものだ。
壊れかけた網戸を開けてテラスに出た。
この家は、似たような家がいくつも固まってできた「ビル」の3、4階あたりにあるようだった、
白い漆喰の壁と、汚れた網戸が並び、テラスが眼下の川岸から階段のように続いている。
遠方に目を向けた。
視線が届く限り、段ボール箱を積み重ねたような建物がどこまでも連なっていた。
外には洗濯物が干され、そこかしこで女性が敷物を叩いている。
舞い上がる埃が、地球から逃げ出す悪魔さながらに、夕陽の中へ消えて行った。
デヴィッドは下の川へ目をやった。
漁船が行き交っていた。
小型のモーターを積んだ船もわずかにあるが、大半は手漕ぎ式だった。
岸に並ぶビルに視線を走らせた。
追手はもうここまで来ているだろうか?
その時、彼らの姿が目に入った。
イマリ警備の男が二人、下の2階のテラスへ出て来たのだ。
デヴィッドは物陰に身を隠し、彼らが次の家に移動するのを待った。
残された時間は、どれくらいだろう?
5分か、10分か?
室内へ戻ると、一家がリヴィングらしき部屋、小さなベッドも二つ置かれているが、で身を寄せ合っていた。
デヴィドの視線だけでも危険だと言わんばかりに、両親が少年と少女を背後に隠した。
190、5センチあるデヴィッドは、両親より頭2つ分は背が高く、筋肉の発達した体は狭い戸口を塞いで、夕日の光をさえぎるほどだった。
彼らの目にはデヴィッドが怪物に見えるか、そうでなくても全く種の違う異星人と映るに違いなかった。
「傷つけるつもりはありません。英語は話せますか?」
「はい、少しなら。市場で魚を売るので。」
「よかった。助けてもらいたいんです。とても大切なことです。あなたやお子さんに危険が迫っています。ご主人に協力してくれるように、伝えてもらえませんか?」

続く→

イタリア、死者4人に 感染者増、混乱広がる―新型肺炎

2020.02.24.21:18

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020022400181&g=int
【パリ時事】イタリアのANSA通信は23日、新型コロナウイルス感染によるイタリアでの死者が計4人になったと報じた。死者を含めたウイルス感染者は160人を超えたが、感染源は特定できていない。国内や近隣諸国では感染拡大に対する不安が高まっている。
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23日、新型コロナウイルスの感染拡大により封鎖されたイタリア北部ロンバルディア州カザルプステルレンゴで、スーパーマーケット前に並ぶ住民ら(EPA時事)

ANSAによれば、4人はいずれも北部で死亡した。感染が拡大している北部ロンバルディア州を中心に複数の自治体が封鎖され、違反者には罰則が科せられるという。


ANSAによると、ロンバルディア州の州都ミラノのスーパーマーケットでは、封鎖が広がり品不足を恐れる住民が殺到。食料品や日用品が商品棚から消えた。

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23日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ミラノのスーパーマーケットで空になった商品棚(EPA時事)


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コロナウイルスが、中国人、日本人を狙った生物兵器説崩れ去る。

世界でパンデミック。

アジア人も白人も、中東人もインド人も感染した。


本日の世界の感染マップ

すく 


韓国の感染者数の伸びがすごい…

ついに日本版コロナウイルス 感染マップができた

2020.02.23.22:51

日本

サイトのアドレス→
https://jagjapan.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/641eba7fef234a47880e1e1dc4de85ce

^^^^

世界はこちら→
https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6

世界

気になりますよね〜…


第二進化・アトランティス・ジーン(1)A・G・リドルー15

2020.02.23.22:44





25


インドネシア、ジャカルタ クロックタワー支局本部 対傍受通信室


ジョシュは赤い点が次々に消えるのを見つめていた。。
つまり死亡したということだ。
その数分後、デヴィッドの隊が車道の上で動きを止め、彼らもまた消えてしまった。
デヴィットを除いて。
彼の点はジョシュが見守る前で、素早く動き回っていた。
点が猛スピードで移動を始めた。
と、その点も不意に見えなくなった。
ジョシュはため息を吐いて、椅子に座り込んだ。
ガラス越しに外のドアを覗いた。
ガスバーナーはすでにドアの右辺を焼き終え、焼け跡がJの文字を描いていた。
すぐにJは、Uになり、たちまちOになるだろう。
そこから彼らが入ってくれば、タイムアップというわけだ。
残された時間は2、3分というところだろうか。
手紙、ジョシュは椅子を回してファイルの山をかき分けた。
あった。
例の「俺が死んだら開けろ!というデヴィッドの手紙。
ほんの数時間前は、これを開封することなどありえないと思っていた。
今日1日で、随分といろんな幻想が、打ち砕かれた。
クロックタワーは侵蝕などされないし、陥落もしない。
デヴィッドが殺される日もこない。
勝利するのはいつも、良い人間だ。
そう、信じていた。
ジョシュは封を切った。

ジョシュへ

嘆かなくていい。
俺たちは最初から大きく遅れを取っていたんだ。
もはやジャカルタ支局の陥落は避けられないだろう。
目的を忘れるな。
イマリに最終目標を達成させてはならない。
お前が突き止めた事実はすべてクロックタワーの局長に転送しろ。
局長の名は、ハワード・キーガンだ。
彼のことは、信用していい。
C lockserver1ーClock Connct.exeに、プログラムがある。
実行すれば中央司令部への独立回線が開き、データを安全に送信できる。
最後にもう一つ、俺は何年もかけてちょっとした金を蓄えて来た。
大半は、我々が廃業に追い込んだ悪人の金だ。
ClockServer1-distribute.batにも、プログラムがある。
実行して俺の金を配ってくれ。
連中がこの部屋の存在に気づかず、お前が安全にこの手紙を読めるように願っている。
お前と働けたことを誇りに思う。

デヴィッド


ジョシュは手紙をおいた。
すぐさまキーを叩き、中央にデータをアップし、続いて送金プログラムを実行した。
ちょっとした金はかなり控えめな表現だった。
ジョシュの目の前で六件の振り込みが実行されたが、一件につき500万ドルが送られていたのだ。
まずは赤十字、次にユニセフ、それから3つの災害救援組織。
これらは納得できる。
だが最後の送金は謎だった。
JPモルガン銀行の、ニューヨークにある支店の口座に、500万ドルを送っている。
ジョシュは口座の名義をコピーして検索した。
口座の持ち主は、62歳の男性と、その妻である59歳の女性だった。
デヴィッドの両親だろうか?
ニュース記事があった。
ロングアイランドの新聞記事だ。
それによると、その夫婦は9、11で、一人娘をなくしていた。
彼女は当時、カンター・フィッツジェラルド証券で投資アナリストとして働いていたそうだ。
イエール大学を卒業したばかりで、コロンビア大学の大学院生、アンドリュー・リードとの結婚を控えていたという。
ふとその音に気づいた。
いや、音が消えたことに気づいたというべきか。
ガスバーナーが止まっていた。
輪を描き終わったようだ。
これからいよいよ、焼き切った金属板を打ち抜く作業に入るのだろう。

書類を集めて屑入れの元に走り、紙に火をつけた。
そしてテーブルに戻り、コンピューターのデータを消去するプログラムを作動させた。
作業が完了するまで5分以上はかかってしまうだろう。
連中がすぐ気がつくとは限らないし、自分もいくらか時間を稼げるかもしれないが。
ジョシュは銃が入った箱に目を向けた。
と、何かが位置情報マップの画面に、確かに見えた気がするのだ。
ちらりと光る赤い点が。
だが今は、何も映っていない。
ジョシュは改めて目を凝らした。
ドンという音に飛び上がり、ジョシュは椅子から転げ落ちそうになった。
彼らが陣太鼓のようにドアを打ち、分厚い金属板を枠から外そうとしていた。
大きな音が、ジョシュの暴れ狂う鼓動に合わせるように響いてくる。
コンピューターのスクリーンに進行状況が表示されていた。

12%完了。

再び赤い点が、今回ははっきり現れた。
デヴィッド・ヴェイルだ。
彼の点がゆっくりと川を流れていく。
バイタルサインは弱いものの、死んではいなかった。
おそらく防弾服に内蔵されたセンサーが、損傷を受けたんだろう。
自分が掴んだ事実や、情報提供者との連絡方法をデヴィッドに伝えなければならなかった。
何かいい手はないか?
通常ならばオンライン上に情報の受け渡し場所を設けるのだが、一般のwebサイトを利用し、暗号化したメッセージをやり取りするのだ。
クロックタワーがよく使うのは、eBayのオークションサイトだった。
商品の写真に、局のアルゴリズムを使えば解読できるメッセージやファイルを埋め込むのだ。
肉眼ではごく普通の写真にしか見えないが、全写真を通して微細な変化を追えば、複雑なファイルも読み取れるようになっている。
だがデヴィッドとは、受け渡しの方法を決めたことがなかった。
電話は通じないし、もちろんEメールだって論外だ。
クロックタワーは関係者のアドレスを監視しているので、デヴィッドがメールを開ければたち所に彼のパソコンのIPアドレスはバレてしまう。
IPアドレスがわかれば、居処はほぼ特定できるし、周辺の監視映像を調べれば、足りない情報も捕らえられる。
彼が捕まるまでに数分とかからないだろう。
IPアドレスか…。
一つだけ案があるが、果たしてうまくいくだろうか?

消去中…37%

急がなければ。
コンピューターの機能が停止してしまう。
ジョシュはVPNを使い、中継地点やデータの一時保管場所として利用しているプライベートサーバーに接続した。
暗号化した報告書を送る前に、インターネット上でデータを中継したり、変形したりするために使っているサーバーだ。
ジャカルタ支局から中央への通信過程で傍受されないようにと、念には念をいれて加えたセキュリティ対策だった。
これはあくまでプライベートな経路で、誰にも教えたことがない。
おまけに自作のセキュリティ・プロトコルをいくつか書き加えてある。
これなら完璧だろう。
ただこのサーバーには、必要がないので、URLがなく、50、31、14、76というIPアドレスがあるだけだった。
実のところ、www.google.comとか、www.apple.comといったURLは、IPアドレスをわかりやすい文字列に置き換えただけのものなのだ。
あるURLをブラウザに打ち込んだとしよう。
その時目当てのページが表示されるのは、DNSサーバーというドメイン名を管理するサーバーが、そのURLと対応するIPアドレスをデータベースから探し出し、該当ページへ導いているからだ。
その証拠に、もしブラウザのアドレスバーにIPを打ち込んでもまったく同じページに直行出来るだろう。
例えば、74、125、139、100と打てば、Google.comが開くと言った具合だ、
ジョシュはプライベートサーバーへデータを転送した。
コンピューターの動きが遅くなり始めていて、エラ〜メッセージも度々現れた。

消去中…47%完了

ドアを打つ音が止んでいた。
またガスバーナーを使い始めたようだ。
ドアの中央の金属が伸び、円形の膨らみができていた。
デヴィッドにIPアドレスを送らねばならない。
だが電話もメールも役に立たない。
協力者や諜報員は全てクロックタワーに監視されているだろう。
そもそも、デヴィッドがどこに行き着くのかも見当もつかない状況なのだ。
デヴィッドの方から目にするものでなければ。
IPアドレスの数字が遅れて、ジョシュしか知らないもので…。
デヴィッドの銀行口座だ。
これなら使える。
ジョシュも秘密の銀行口座を一つ持っていた。
多分、この手の仕事をしているものなら誰でも持っているだろう。
金属が曲がり、まるで瀕死の鯨が鳴くような音が、コンクリートの空洞に響き渡った。
もうすぐ奴らが来てしまう。
ジョシュはブラウザを開いて、自分の銀行口座にログインした。
急いでデヴィッドの支店と番号を打ち込み、立て続けに振り込みをした。
9、11ドル。
50、00ドル。
31、00ドル。
14、00ドル。
76、00ドル。
9、11ドル。

処理には1日かかるはずだ。
振り込みが完了しても、デヴィッドが口座を確認しなければ意味がない。
IPアドレスだということに気づくだろうか?
工作員は、必ずしもITに強いわけではない。
これは賭けだ。
ドアが破られ、男たちが踏み込んで来た。
完全武装した兵士たち。

消去中…65%完了

まだ不十分だ。
何か手がかりを発見されてしまうかもしれない。
工具箱、カプセル。
わずか3、4秒。
時間がない。
テーブルの工具箱に飛びついた。
勢い余って箱を跳ね飛ばし、後を追ってジョシュも床に倒れ込んだ。
震える手で中を探り、銃を掴んだ。
どうするんだ?
スライドを引いて、撃って、ここを押すのか?
畜生。
男たちはガラス部屋の入り口に迫っている。
三人いる。
ジョシュは銃を構えた。
腕が震えていた。
もう片方の手で腕を押さえ、引き金を引いた。
弾丸はコンピューターを打ち抜いた。
だが確実にハードドライブを破壊しなければならない。
もう一度、引き金をひく。
室内につんざくような音が響いた。
そして気づけば、同じ音がジョシュを取り囲んでいた。
ガラスが砕け、あたり一面に破片が舞った。
ジョシュは壁に向かって突進していた。
降り注ぐガラスがジョシュを刺して切り裂いた。
下を向くと、銃弾で胸にいくつも穴があいていた。
口から溢れた血が顎を伝い、その流れが胸に広がる深紅の血溜まりと一つになっていく。
ジョシュは振り返り、コンピューターの最後のランプが暗くなるのを見届けた。


続く→

2月22日のコロナウイルス の状況

2020.02.22.15:10

ウイルス

第二進化・アトランティス・ジーン(1)A・G・リドルー14

2020.02.22.15:03





21


インドネシア、ジャカルタ 
 クロックタワー 支局本部 中央危機管理室


危機管理室は慌ただしい空気に包まれていた。
技術班がキーボードを打ち、分析員がボードを選別し、ヴィンセント・タリアが、壁に並ぶスクリーンを睨みながら苛々と歩き回っていた。
「ヴェイルの位置情報が偽物だというのは、確かなのか?」
「はい。」
技術班の一人が言った。
「隠れ家の連中に、すぐそこから出るように伝えろ。」
タリアは隠れ家のカメラ映像に目を向け、整列した工作員たちがドアを開けるのを見守った。
その爆音に、広い危機管理室にいる誰もが振り返った。
全員の視線を集めたモニターには、もはや白黒の歪んだ静止画しか映っていなかった。
技術班の一人が、キーを打った。
「屋外のカメラに切り替えます。今、大きな爆発音がしま…」
「わかっている!隠れ家、配置につけ!」
タリアは叫んだ。
スピーカーから応答はなかった。
位置情報マップに目をやると、先ほどまで赤い点が動いていた隠れ家は、黒一色になっていた。
残っているのは、デヴィッドの隊と本部にいる数人だけだ。
例の技術者が、くるりと椅子を回した。
「彼は隠れ家に爆薬を仕掛けていました。」
タリアは指先で鼻梁をこすった。
「わかり切った報告をどうも。隔離室にはもう突入したか?ジョシュは見つかったのか?」
「いえ、今始めたところですね。」

タリアは危機管理室を出て、自分のオフィスに行き、受話器を取り上げた。
そしてイマリ警備のパートナーに電話をした。
「問題発生だ。部下たちが奴に殺られた。。」
タリアはしばし、耳を傾けた。
「違う。いいか、俺はちゃんと手なづけたんだ、だが奴が。そんなことはどうでもいい。もう全員殺されたんだぞ。何を言っても後の祭りだ。」
また、沈黙があった
「だめだ。俺なら先制攻撃で、確実に奴の息の根を止める。そっちに何人いようが、関係ない。一度逃してしまったら、奴を仕留めるのは至難の技だ。」
タリアは、受話器を下ろしかけたが、苛立った様子で、またすぐにそれを耳に押し付けた。
「何?いや、捜索中だ。きっとこの中にいる。また連絡する。ああ、合流してもいいが、連れて行けるのは二人だけだ。しくじった場合に備えて、俺たちは後方で待機する。」


22

インドネシア、ジャカルタ  クロックタワー 作戦司令部


ケイトは兵士の後に続いて黒い大型トラックに乗り込んだ。
外見と違い、内部は配送トラックとは似ても似つかぬ空間だった。
そこには銃や謎の道具が詰まったロッカールームであり、コンピューターやスクリーンが揃ったオフィスであり、両脇に一段低い座席が並んだバスだった。
大きなスクリーンが3枚あった。
1枚にはジャカルタとおぼしき、土地の地図と複数の点が、表示されていた。
もう1枚はこのトラックの前後左右のカメラ映像を映している。
右上の枠には、トラックを扇動してジャカルタの混雑した道を進む黒のSUVが見えていた。
最後の1枚は真っ黒で、接独中…の文字が表示されているだけだった。

「俺はデヴィッド・ヴェイルだ。」
「どこへ連れて行くのか、教えてちょうだい。」
ケイトは語気を強めて言った。
「隠れ家だ。」
デヴィッドはタブレット端末のようなものをいじっていた。
どうやら壁のスクリーンの1枚を、操作しているようだ。
視線を上げて何か待つような顔をしていたが、何も映らないとわかると、またボタンを押し始めた。
「アメリカ政府の下で働いているの?」
ケイトは自分に注意を向けさせようとした。
「そういうわけではない。」
彼は相変わらず俯いて、タブレットをいじっていた。
「でもあなた自身は、アメリカ人なの?」
「そんなところだ。」
「ちゃんとこっちをみて、話をしてくれない?」
「仲間と大事な連絡を取ろうとしているんだ。」
男の顔に不安そうな表情が浮かび始めていた。
彼は思案するように、周囲に目をやった。
「何か問題でも?」
「ああ、たぶん…」
彼がタブレットを傍においた。
「誘拐の件で、君に聞きたいことがある。」
「子供たちを探してくれるの?」
「我々はまだ、事態を把握しようとしている段階だ。」
「我々って?」
「聞いてもわからないさ。」
ケイトは髪をかき上げた。
「ねえ、今日は最悪の1日だったの。正直、あなたがどこの誰かなんて、どうてもいいのよ。クリニックから子供がさらわれたのに、いまだにあの子たちを探そうとしてくれる人がいないんだもの。あなたを含めてね。」
「協力しないと言ってはいない。」
「r協力するとも言っていないわ。」
「確かに。」
デヴィッドが言った。
「だが今は、こちらの問題で手いっぱいなんだ。とても重要な問題だ。下手をすれば、なんの罪もない人々が大勢、殺されてしまうだろう。すでに多くの命が失われた。俺は、君の研究が、この状況になんらかの形で、関わっていると考えている。具体的なことはわからないが。いいか、もし君がこちらの質問に答えてくれるなら、俺も可能な限り協力すると約束しよう。」
「いいわ。それなら公平ね。」
ケイトは椅子から身を乗り出した。
「イマリ・ジャカルタについて、君はどの程度知っているんだ?」
「ほとんど何も。私の研究に出資してくれてるけど、私の義父のマーティン・グレイは、イマリ・リサーチの所長なの。この会社は科学分野の研究や、技術開発に幅広く投資しているわ。」
「君は彼らの下で、生物兵器を開発しているのか?」
ケイトは、頬を打たれたような衝撃を受け、思わずのけぞった。
「なんですって?まさか!気でも狂ったの?私は自閉症を治そうとしているのよ。」
「なぜ二人の子供は、連れ去られたんだ_」
「見当もつかないわ。」
「信じられないな。その二人は、どういう子供だ?クリニックには、100人以上の子供がいた。もし犯人の目的が人身売買なら、全員を連れて行っただろう。二人を選んだのは、何か理由があるはずだ。しかも連中は、身元がバレる危険を犯してまで連れ去っている。さあ、もう一度聞く。なぜその二人だったんだ?」
ケイトは床を見つめて、考えた。
そして最初に浮かんだ疑問を口にした。
「イマリ・リサーチが、子供たちを連れ去ったの?」
その問いは彼を面食らわせたようだ。
「ああ、いや、イマリ警備だ。別部門の組織だが、全体で見ればどちらも同じ悪人集団に属している。」
「そんなはずはないわ。」
「自分の目で確かめろ。」
彼にファイルを渡され、ケイトはそこに挟んである衛星写真に目を向けた。
クリニックの前にヴァンが駐まっており、黒ずくめの犯人二人が、子供たちを車中に引きずり込んでいる。
ヴァンの登録書類を見ると、所有権はイマリ・インターナショナルの香港警備部に行き着いていた。

ケイトはその証拠について考えてみた。
イマリに子供をさらう理由があるだろうか
ケイトに頼めば済むことなのに?
他にも先ほどから気になっていることがあった。
「なぜ私が、生物兵器を開発していると思うの?」
「証拠からすると、そうとしか考えられないからだ。」
「証拠?」
「トバ計画の話を聞いたことは?」
「ないわ。」
彼がもう1冊ファイルをよこした。
「わかっているのはこれだけだ。あまり多くはないが、結論から言えば、イマリ・インターナショナルは、人口を劇的に減らす計画を進めているんだ。」
ケイトはファイルに目を通した。
「トバ・カタストロフ理論を思い出すわね。」
「なんのことだ?聞いたことがないな。」
ケイトはファイルを閉じた。
「無理はないわ。一般的に認められているわけじゃないもの。でも進化生物学者の間では、よく知られた学説よ。」
「よく知られた?何についての学説だ?」
「大飛躍よ。」
ケイトはデヴィッドの戸惑いを見てとり、質問が来る前に先を続けた。
「大飛躍は、進化遺伝学ではいちばん、熱い議論を呼んでいるテーマだと言えるでしょうね。本当に謎に満ちているの。わかっているのは、五万年から6万年ほど前に、人類の知能にビッグバンと呼べるような、一大変化が起きたということ。私たちは急激に賢くなったのよ。なぜそんなことになったのかはわからない。脳の神経回路に、なんらかの変化が生じたと考えられているんだけど、人類はこの時初めて、複雑な言語を使いだし、芸術を生み、より洗練された道具を作って問題を解決し…」
デヴィッドは、壁を見つめながら頭を整理しようとしていた。
「話が見えないが。」
ケイトは髪を後ろに撫でつけた。
「いいわ、1から説明しましょう。私たち現生人類が誕生したのは、20万年程前だけど、私たちがいわゆる現代的行動をとり人類、(地球上を支配できるくらい、とても賢いタイプのことよ、)になったのは、約五万年前の話なの。この五万年前という時代には、私たちの他に、少なくとも3種の人科動物が存在していた。ネアンデルタール人、ホモ・フローレシエンシス…」
「ホモ・ホロー…」
「あまり知られていない種ね。発見されたのは最近だから。とても小柄で、ホビットのような人たちだから、わかりやすくホビットと呼びましょう。そう、約5万年前には私たちの他に、ネアンデルタール人、ホビット、デニソワ人がいたの。実際はあと2種ほどいたと考えられるけど、ここで言いたいのは、その頃5、6種の人類が存在していたということ。そしてその後、人類の系統樹の中で、私たちの枝だけが劇的に伸び、なぜか他の枝は枯れてしまった。私たちが5万年の間に、数千人から70億人まで数を増やす一方で、他の人科動物は絶滅してしまったのよ。彼らは洞窟で死に、私たちは地上を征服したというわけ。原因はずっと大きな謎とされてきたし、遥か昔から科学者たちが、その謎を解こうとしてきた。宗教もそうね。核心にあるのは、なぜ私たちは生き残れたのか、という問いよ。何が原因でそんなに大きな進化上の強みを手にできたのか。
大飛躍は、この時の一大変化を指す呼び名。そしてトバ・カタストロフ理論は、この大飛躍の原因、ネアンデルタール人やホビットなど、他の人科の動物は原始的なままだったのに、なぜ私たちはそんなに賢くなったのかを、説明しようとする説なの。
内容はこうよ。7万年前にここインドネシアにあるトバ火山が大噴火した。その火山灰のせいで地表の大部分に日光が届かなくなり、その後何年も、火山の冬が続いた。急激な気候の変化は劇的な人口減少を引き起こし、現生人類はおそらく1万人かそれ以下にまで減った。」
「待ってくれ。俺たちは一万人にまで減ったのか?」
「そう考えられているわ。あくまで概算だけど、大幅に人口が減ったことは確かよ。特に私たちの種が激減したの。当時生きていたネアンデルタール人や他の種の方がいくらかマシだったようね。ホビットはトバ山の風上にいたし、ネアンデルタール人はヨーロッパに集中していたから。私たちは、噴火の影響をまともに受けたアフリカ、中東、南アジアに集まっていたのよ。それにネアンデルタール人は、私たちより頑丈な骨格をしていて、脳も大きかった。まだ解明はされていないけど、そのおかげでさらに生き延びやすかったのかもしれないわ。はっきりしているのは、トバ火山の噴火で、現生人類が壊滅的なダメージを受けたということ。私たちは絶滅の危機に瀕していたの。そしてそれが集団遺伝学者がいう、ボトルネック効果をもたらしたのよ。
研究者の中には、このボトルネック効果の結果、生き残った少数の人間の中の突然変異体が進化していった、と考える人がいるわ。突然変異体の間で繁殖する可能性が高まり、指数関数的に知能が向上していったのではないかと。遺伝学的な裏付けもあるの。
現在地球上にいる人間は全て、約6万年前にアフリカにいた一人の男性、私たちの遺伝学者は、Y染色体アダムと呼んでいるわ。その子孫だと考えられている。実際アフリカ以外の地域にいる人間は、約五万年前にアフリカを出たわずか100人ほどの集団から広がっていったと、言われているの。つまり、私たちは皆、トバ事変以降にアフリカを離れ、その後、地上を支配した少数部族の子孫だということね。この部族は、歴史上のどんな人科動物よりも知能が高かった。それは間違いない事実だけど、なぜそうなったのかはわからない。
結局のところ、私たちの種がどうやってトバ事変を生き延びたのかも、なぜ同時期に存在した他の人科動物より賢くなったのかも、はっきりしないのよ。脳の回路になんらかの変化が生じたはずだけど、そんな大飛躍が起きた原因は、いまだに謎のまま。食生活の変化が原因なのか、偶然の突然変異が原因なのか。あるいは、そもそも突発的な変化などではなく、徐々に進化して行ったのか。トバ・カタストロフ理論やそれに続くボトルネック効果は、一定の支持はされているけど、あくまで一つの仮説に過ぎないのよ。」
デヴィッドは何か考え込むようにして、下を向いていた。
「調査をしていたのに、この話を知らなかったなんて意外ね。」
デヴィッドが何も答えないので、ケイトはさらに言った。
「それであなたは、トバ、は何を表していると?私のはただの勘違いかも…」
「いや君が正しい。よくわかった。もっとも君が言う、トバ計画は過去の話だ。かつてそれが人類にどんな変化をもたらしたかと言うな。連中の狙いは、もう一度人口を減らして、ボトルネック効果を生じさせ、第二の飛躍を引き起こすことなんだ。人類の進化を次のステージに進めようとしているのさ。これで謎が解けた。我々はトバとは作戦開始地点のことだと考えてきた。東南アジア、特にインドネシアなら納得がいく。だから俺は、トバ山から100キロと離れていないこのジャカルタを、拠点に選んだんだ。」
「よかったわ。そうね、歴史ってとても役に立つのよ。本もね。銃にだって負けないくらい。」
「誤解のないように言っておくが、俺は読書家だ。歴史だって好きさ。君の話は七万年も前のことだろ。そんなのは歴史じゃない。有史以前の話だ。それに銃にも役割がある。世の中は見かけほど文明化されていないからな。」
ケイトは両手を上げて椅子に体を沈めた。
「私は協力しているだけよ。あなたがあの子供たちを探してくれると言うから。」
「君も質問に答えるといったぞ。」
「答えたじゃない。」
「まだだ。君はその二人が選ばれた理由を知っているはずだ。少なくとも検討はついているだろう。さあ、話してくれ。」
ケイトはためらった。
彼を信用してもいいのだろうか?
「確証が欲しいわ。」
そう切り出したが、男からはなんの答えも返ってこなかった。
彼はじっと1枚の画面を睨んでいた。
いくつも点があるスクリーンだ。
「ねえ、聞いてる?」
彼は張り詰めた表情で忙しなく視線を動かしていた。
「何かあったの?」
「点が動かない。」
「動くものなの?」
「ああ、我々は間違いなく動いているからな。」彼がシートベルトを指差した。
「閉めておけ。」
ケイトはにわかに不安になった。
まるで我が子に迫る危険を察知した父親のような口調だったのだ。
彼は恐ろしいほど神経を研ぎ澄ましていた。
瞬きもせずに素早く動き、車内の書類を集めて無線をつかんだ。
「1号車、こちら指揮官。目的地変更、クロックタワー本部に向かえ。聞こえるか?」
「了解。指揮官、1号車。目的地を変更します。」
ケイトはトラックが方向転換するのを感じた。
男が無線をもつ手を下ろした。
スクリーンに閃光が走ったのは、轟音が響く直前だった…そして爆風。
前を走っていたSUVが画面の中で吹き飛び、解けた金属と炎の塊になって落下した。
銃声がし、トラックが道から大きくそれた。
まるで運転者がいないかのように。
再び飛んできたロケット弾は、トラックをかすめてすぐ脇の路面に着弾した。
爆風で車体が傾き、車内の空気が一瞬で抜き取られるような感じがした。
残響音がケイトの鼓膜を叩き、シートベルトに押し付けられた腹部が脈を打った。
まるで感覚が遮断されたかの様だった。
全てがコマ送りのように進んでいく。
タイヤが路面に戻って車体が揺れた。
ケイトは耳鳴りを堪えて、頭を上げた。
あの兵士は床に倒れ、ピクリとも動かなくなっていた。

続く→

第二進化・アトランティス・ジーン(1)A・G・リドルー13

2020.02.22.15:02





20


インドネシア、ジャカルタ クロックタワー支局本部 対傍受通信室


ジョシュは落ち着かない気持ちで、答えが出るのを待っていた。
この読みが当たっていれば、デヴィッドから託された暗号が解けるのだが、それは一番見込みのありそうな仮説であり、彼が持っている唯一の案でもあった。
ジョシュはガラス部屋の壁にかかるメイン・スクリーンから目を逸らそうとした。
この30分と言うもの、画面にはひたすら同じ文字が表示されていた。
検索中…。
傍にある2枚のスクリーンに目をやった。
1枚にはドアの外を捉えた監視カメラの映像が、もう1枚には、ジャカルタ市内の地図と、支局の工作員を示す24個の赤い点が映っている。
どちらの画面が自分を緊張させるのか、ジョシュにはわからなかった。
言ってみれば、その2枚は大きなカウントダウン・タイマーのようなものだった。
刻一刻と彼の死の時が迫っていることを報せ、得体の知れない大惨事が起こるまでの時間を数えている。
例の画面は、相変わらずこう告げているだけだ。
検索中…。
こんなに時間がかかるものだろうか?
もし時間を無駄にしているだけだったら?
落ち着かない原因は、他にもあった。
ジョシュはデヴィッドが残しして行った工具箱に目を向けた。
立ち上がって箱の把手を掴んだが、持ち上げた途端に蓋が開いてしまい、銃やカプセルがテーブルに落ちて転がった。
派手な音が室内の静寂を破り、残響はいつまでたっても消えなかった。
やがてジョシュは、拳銃と2錠のカプセルに手を伸ばした。
その手は微かに震えていた。
壁でブザーがなり、途端にジョシュは我に返った。
大きいスクリーンには、こう表示されていた。

五件ヒットしました。

五件ヒット!
椅子に戻り、ワイアレス・キーボードとマウスを操作した。
三件は、ニューヨークタイムス紙、もう一件はボストングローブ紙で、見つかっていた。
おそらく読みは当たっていたのだ。
暗号に名前と日付を見てとったとき、ジョシュの頭にまず浮かんだのは、死亡広告だった。
新聞の死亡広告や案内広告は、古典的なスパイ道具なのだ。
第二次世界大戦以後の諜報員は、日常的にそれらを使って、世界中の諜報員にメッセージを送っていた。
古い手法だが、メッセージが送られたのが1947年だとすれば、十分に有効だっただろう。
もしこれが本物なら、このテロ組織は65年以上前から存在していたことになる。
ジョシュはその点について、掘り下げるのは後回しにすることにした。
改めてデヴィッドから託された、暗号文に目をやった。

トバ計画は実在する。
4+12+47=3/5   ジョーンズ
7+22+47=3/6   アンダーソン
10+4+47=5/4   エイムズ

続いて検索結果に目を向けた。
テロリストは常に同じ新聞を利用していた可能性が高い。
世界中の都市で手に入る1紙を。
そうなると、ニューヨークタイムズ紙が有力だろう。
この新聞なら、47年当時でも、パリ、ロンドン、上海、バルセロナ、あるいはボストンの売店などで死亡広告が載った当日版を入手できたからだ。
死亡広告が暗号なら、何らかの目印があるに違いなかった。
ジョシュはすぐにそれを見つけ出した。
ニューヨークタイムズの死亡広告は、どれも、クロック(時計)と塔(タワー)という単語を含んでいたのだ。
彼は椅子に体を沈めた。
クロックタワーが、そんなに古くから存在していた可能性はあるだろうか?
CIAは、公式には1947年の国家安全保障法で、初めて創設されたことになっている。
もっとも、前身の戦略事務局(OSS)は、第二次世界大戦中の1942年6月に誕生したが。
それにしても、なぜテロリストが、クロックタワーの名前を出すのだろう?
その当時から、66年前の1947年から、クロックタワーと戦っていたのだろうか?
ジョシュは死亡広告に意識を集中させた。
何か解読法があるはずだ。
理想的な暗号システムでは、解読の鍵は変換可能になっている。
メッセージを読み解く鍵は、同一ではないということだ。
それぞれのメッセージに、特別の鍵が、何か単純な形で、仕込まれているはずなのだが。
ジョシュは最初の死亡広告を開いた。
1947年4月12日のものだ。

熟練の時計職人アダム・ジョーンズ氏、業界の金字塔となるべき作品を制作中、77歳で長逝。
アダム・ジョーンズ 長年ジブラルタルで活躍した時計職人が、土曜日に死去した。
イギリスが統治するホンジュラスに骨を埋葬する。
独り身で、遺体は助手が発見。
親族に温かい助言を、あるいは葬儀に追悼のカードを贈られたし。

内容自体は至って普通だ。
鍵はどこにある?
ジョシュは残りの死亡広告も開いて目を通し、手がかりがないか探って見た。
どの広告にも地名が含まれており、どれも古い言葉が使われていた。
考えられる方法をいくつか試し、単語を並び替え、それから椅子に背を預けて熟考した。
広告の文章は不自然で、妙な言葉が混じっていた。
あるいは、その単語を入れ込むために無理をしたと言うべきか。
そこで気がついた。
名前が鍵になっているのだ。
名前の長さが。
これが暗号文の後半の意味だ。

4+12+47=3/5   ジョーンズ

1947年4月12日の広告は、アダム・ジョーンズのものだ。
3/5は、名が3文字、姓が5文字であることと一致している。
まずは広告の3番目の文節を抜き出し、次にそこから5番目の文節を抜くと言う作業を繰り返せば、一つの文章が出来上がるかもしれない。
ジョシュは改めて、広告を調べた。

熟練の時計職人 アダム・ジョーンズ氏 業界の金字塔となるべき作品を制作中、77歳で長逝。
アダム・ジョーンズ  長年 (ジブラルタルで) 活躍した 時計職人が 土曜日に 死去した。
(イギリスが) 統治する ホンジュラスに (骨を) 埋葬する。
独り身で 遺体は 助手が (発見)。
親族に 温かい (助言を) あるいは 葬儀に 追悼の カードを (送られたし)。
抜き出してつなげると、こうなった。

ジブラルタルでイギリスが骨を発見 助言を送られたし。

ジョシュはその文章をしばし眺めた。
こんなメッセージは予想していなかった。
それに、さっぱり意味がわからない。
インターネットで検索すると、僅かながら情報が手に入った。
確かにイギリスは、40年代にジブラルタルで骨を発見している。
ゴルハム洞窟という天然の海食洞で見つけたらしい。
ただし、現生人類の骨ではなく、ネアンデルタール人の骨だ。
この発見はネアンデルタール人に関する定説を、大きく塗り替えたと言う。
先史時代の我々の親類は、実は洞窟に住むだけの原始人ではなかったのだ。
彼らは住居を建て、大きな炉で火を焚き、野菜を調理し、言葉を話し、洞窟に壁画を描き、死者を埋葬して花も供え、洗練された石器や土器を作っていた。
ジブラルタルで見つかった骨は、ネアンデルタール人の年表も書き換えたようだ。
それまでネアンデルタール人は、四万年ほど前に絶滅したと考えられていた。
だが、ジブラルタルで見つかった骨は、およそ二万三千年前のものだったという。
従来の説よりも、かなり後まで生きていたというわけだ。
彼らは最後の生き残りだったかもしれない。
しかし大昔の、ネアンデルタール人の砦と、世界規模のテロに、一体どんな関わりがあるというのか。
他のメッセージを読めば、ヒントが掴めるだろうか。
ジョシュは2つ目の広告を開いて解読した。

南極で潜水艦(Uボート)発見できず 捜索を続けるか指示を。

興味深い。
ジョシュは手早く検索した。
1947年の南極は、かなり賑やかだったようだ。
前年の12月12日に、米国海軍が13隻の船と約5千人の乗員からなる一大艦隊を派遣したからだ。
ハイジャンプ作戦と呼ばれたこのミッションは、南極にリトル・アメリカⅣという観測基地をたてることを目指していた。
この作戦については長い間陰謀説や憶測が飛び交っており、米国がナチスの秘密基地や軍事技術を探索していたのではないかとも言われている。
このメッセージは、彼らがそれを発見できなかったという意味だろうか?
暗号が記された厚い光沢紙を裏返し、写真をじっくり眺めた。
青い海に巨大な氷が浮かび、氷の中央から黒い潜水艦が突き出ている。
潜水艦の文字は小さすぎて読めないが、おそらくナチスのものだろう。
艦のサイズから判断すると、氷山の面積は大体100平方キロメートルぐらいか。
それだけ大きければ、南極から分離した氷だと考えられる。
彼らは最近になって、潜水艦を見つけたのだろうか?
それが一連の出来事の引き金になったのだろうか?
手がかりを求め、最後のメッセージを開いて解読した。

ロズウエルの気象観測気球は、ジブラルタルの技術と一致 面会を求む。

3話のメッセージをすべて並べると、こうなった。

ジブラルタルでイギリスが骨を発見 助言を送られたし。
南極大陸で潜水艦発見できず 捜索を続けるか指示を。
ロズウエルの気象観測気球は、ジブラルタルの技術と一致 面会を求む。

どういう意味なんだ?
ジブラルタルの史跡、南極の潜水艦、おまけに最後はロズウエルの観測気球がジブラルタルの技術と一致する?
だがもっと根本的な疑問がある。
一体なぜ、これらのメッセージを読ませようとしたのかということだ。
六十六年も前のメッセージを。
これが現在起きていること、クロックタワーを巡る戦いや、差し迫ったテロの危険と、どう結びつくのだろう?
ジョシュは室内を歩き回った。
考えるんだ。
もし自分がテロ組織に潜入したスパイで、助けを求めようと思ったら、一体何をする?
助けを求める?
そうか、情報提供者は通信手段を伝えようとしたのかも知れない。
まだ暗号が隠れているのか?
おそらく彼は、メソッドを伝えようとしたのだ。
そうすれば彼と連絡が取れるかを。
つまり死亡広告だ。
もっともこれは、あまり効率がよくない方法だ。
死亡広告は、例えオンライン版でも、掲載まで最低1日はかかってしまう。
オンライン…。
現代で紙面の広告と似たような使い方ができるものといえば?
今の時代にメッセージを載せるとしたら?

ジョシュは一通りの案を検討した。
新聞の死亡広告なら洗い出しは簡単だった。
確認すべき新聞は限られてるからだ。
過去の死亡広告を集めるのは大変だが、自分には一つ強みがある。
探す場所がわかっているのだ。
メッセージはオンライン上のどこかにある。
しかし、手がかりは他にもあるはずだ。
3つのメッセージに共通しているものは何か?
場所だ。
では、それぞれの場所は、他とどう違うのか?
南極には人がいない。
新聞広告もないし…うん?
ロズウエルとジブラルタルはどうだろう?
どちらにも新聞はある。
一方の場所にはあって、もう一方の場所にはないものがあるのだろうか?
広告を通信手段に使うとして…。
きっと情報提供者は、ある特定の広告媒体を示したいのだ。
そしてそれは、1947年当時の、ニューヨークタイムズ紙のように、現代においてあちこちの地域で利用できる媒体だ。
クレイグズリストだろう。
この世界規模の地元情報コミュニティサイトに違いない。
ジョシュは早速確認した。
ジブラルタルには、地元版のクレイグズリストはなかった。
だが、やはりそうだ。
ロズウエルには、ニューメキシコ州ロズウエル・カールズバッド版がある。
サイトを開き、掲載された投稿をざっと眺めた。
夥しい数があり、カテゴリーだけでも何十という種類があった。
売ります、住まい、イベント、求人、求職用プロフィール、日に何百件と新たな投稿が寄せられているようだ。
どうすればここから、もし、あるとすればだが、情報提供者のメッセージを探し出せるだろう?
ウエブ情報集約技術を使い、内容を収集、整理することは可能だ。
グーグルなどがウエブの情報をインデックス化するのと同じ要領で、クロックタワーのサーバーがサイトの内容をクローリングし、そこから情報を抽出して検索可能な形にしてくれる。
その後、暗号解読プログラムを使えば、翻訳される投稿があるかどうかわかるだろう。
ほんの2、3時間で終わる作業だ。
だが、その2、3時間がなかった。
まずは当たりをつけなくては。
普通に考えれば死亡広告だが、クレイグズリストでは扱われていない。
一番近いカテゴリーは、個人広告だろうか?
ジョシュは見出しに目を走らせた。

プラトニック
女性同士
女性から男性へ
男性同士
その他恋愛
気軽な関係
尋ね人
恨み言
 
どこから手をつければいいのか。
これは雲を掴むような話かも知れない。
無駄にできる時間など全くないのだが。
とりあえず、数分だけどれかを読んでみることにした。
尋ね人は、気になるカテゴリーだった。
これはどこかで好みの相手を見つけたものの、連絡する方法を聞けずにデートに誘えなかった者が利用する掲示板だ。
例えば、可愛いウエイトレスがいたのに、その場では声をかける勇気が出なかった男などに人気がある。
実はジョシュも何度か投稿したことがあった。
もし相手が投稿を読んでくれて、返事をくれれば安心して会いに行けるし、もし反応がなければ、縁がなかったということだ。
ジョシュはそのカテゴリーを開き、いくつかの投稿に目を通した。

件名  CVS薬局の緑の服
メッセージ 一髪でやられたよ!完璧すぎて声も出せなかった。ぜひ、話してみたい。よければメッセージを。

件名  ハンプトン・ホテル
メッセージ フロントで水をもらった時に会いました。エレベーターも一緒に乗った者です。もう少し、二人で違う汗を書きたいとは?僕が降りた階はわかるでしょう。結婚指輪をしてましたね。秘密は守ります。

もう数件、読んでみた。
もし同じ方式なら、メッセージはもっと長くなるはずだ。
名前の文字数を鍵にして、メッセージの中にメッセージを組み込んでいるとすれば。
もっとも、クレイズリストの投稿は、匿名だった。
名前の代わりに、Eメールアドレスを使うのかも知れない。
次のページに進み、一件目の投稿に目をやった。

件名  あの古いタワーレコードで見かけました。クロック・オペラのニューシングルの話をしていましたね。

これは期待できそうだ。
件名にクロックも、タワーも組み込まれている。
ジョシュは投稿をクリックして、メッセージに目を走らせた。
長い文章だった。
Eメールアドレスはandy@gmail.comとなっている。
投稿文の4番目の文節をすべて書き留め、5番目の文節も全部抜き出した。
順番に並べると、メッセージが現れた。

状況は変わった。クロックタワーは崩壊する。生きていれば返信を、誰も信じるな。

ジョシュは凍りついた。
生きていれば返信を、とある。
返信しなければ。
デヴィッドに返信させなければ。
衛星電話を取り上げ、デヴィッドの番号を押した。だが発信できなかった。先ほどは通じたのだから、この部屋や電話機の問題ではない。
何が…。
ジョシュの目がそれを捉えた。
ドアの監視カメラの映像だ。
変化は見られない。
じっと目を凝らすと、サーバーのランプが全く消えないことに気づいた。
こんなことはあり得なかった。
通常なら、ハードドライブにアクセスがあったり、ネットワーク・カードがデータを送受信したりするたびに、光が点滅するのだ、
これは、カメラが捉えている映像ではない、静止画だ。
すり替えたのが誰であれ、その人間は、今まさにこの部屋に入ってこようとしているのだ。


続く→

第二進化・アトランティス・ジーン(1)A・G・リドルー12

2020.02.22.14:59





17

中国、チベット自治区  プラン郊外ーイマリ総合研究所


ドクター・シェン・チャンは、緊張を堪えながらビデオ通話が始まるのを待っていた。
画面に男が現れた瞬間、チャンは唾を飲み込み、声を発した。
「プロジェクトの責任者から、あなたに連絡を取るように言われたんです、ドクター・グレイ。与えられた治験計画書に従い、厳密に手順を守って進めたのですが、何が起きたのか…。」
「わかっている、ドクター・チャン。だが、あの結果にはとても驚いている。なぜ大人たちはダメで、子供だけが生き残ったのだ?」
「よくわからないのです。子供たちにはいろいろな検査をしてみました。確かに彼らは(アトランティス遺伝子)が、持続的に活性化しているようですね。」
「この療法は大人には効かない可能性があるのかね?」
「ええ、あるかもしれません。治験計画書によれば、この療法は、レトロウイルスを使って被験者の遺伝情報に、特定の遺伝子を組み込むというものです。
情報を大きく書き換えるわけではありませんが、エピジェネテイックなレベルでは、他の遺伝子の発現に、連鎖的な影響を与えます。
元々被験者が持っている一連の遺伝子群のスイッチを入れたり切ったりするのです。
生理的な影響は特にないようですが、脳にはおおきな変化が現れます。活性化した遺伝子が被験者の脳の神経回路網を再編成するからです。
ですが、神経の可塑性、つまり回路を再編成し、新しい情報に順応する脳の能力は、年齢と共に低下して行きます。歳を取ると新たに何かを学ぶのが難しくなるのは、このためです。
もしかすると、大人に療法が効かなかったのは、例え遺伝子が活性化しても、脳に大きな変化を起こせなかったからかもしれません。
レトロウイルス自体はきちんと働き、回路を繋ぎ直そうとしたが、すでに回路網がたっぷり張り巡らされていて、無理だったのかもしれない。
幼少期を過ぎてしまうと、そういう状態になるのです。」
「そもそも、大人の被験者には、脳の変化につながる前駆体の遺伝子群がなかったという可能性は?」
「それはありません。大人の被験者全員が、一連の遺伝子群を持っていました。ご存知のように、我々も以前からこの遺伝子群のことは知っていましたので、中国の採用窓口で、全員を検査したのです。ですから、本当なら生き残るはずなのですが。」
「ではこの療法が効くのは、自閉症の症状を持つ脳だけだと考えられないか?」
そんな可能性は考えてもみなかった。
ドクター・グレイは、純古生物学に詳しい進化生物学者だ。
チャンの上司の上司であり、イマりの食物連鎖のはるか上位にいる。
その彼との通話が、専門的な議論中心になるとは予想もしていなかった。
てっきり雲上の大ボスから、こっぴどく叱られるとばかり思っていたのだ。

チャンは気を引き締め、改めてグレイの仮説について考えてみた。
「ええ、もちろんその可能性はあります。基本的に自閉症は、脳の神経回路の障碍だと言えますから。特にコミュニケーションや社会性を司る領域に問題がありますが、他の領域にも異常はみられます。患者の中には、特殊な能力を持つ極めて知能の高い者がいますし、それとは全く対照的な者もいます。後者は一人で生活することさえできません。
自閉症と一口に言っても、神経回路の状態は様々で、実に幅広い症状が含まれるのです。これはくわしく調べてみる必要がありますね。少し時間をいただくことになりますが。
それからもっと被験者が必要になるかもしれません。」
「時間に余裕はないが、子供は集められるかもしれない。もっともこちらが知る限りでは、アトランティス遺伝子が活性化した被験者はあの子たちだけなんだが。ちょっと確認しておこう。他に話していないことはないか?君なりの仮説はないのかね?今のところ、これこそが失敗の原因だと言えそうなものはないようだが。」
確かにチャンには、もう一つ疑っていることがあった。
チームの誰にも打ち明けていないが。
「これは個人的な考えですが、実は今回大人に使った療法と、あの子供たちに使った療法は、どこかが違うのでないかと思うのです。」
「ドクター・ワーナーの療法を、正確に再現しなかったのか?」
「いえ、最初に申し上げたように、彼女の治験計画書にはしっかりと従いました。私が全て監督していましたから。もしかしてドクター・ワーナーは…
あの子たちに、何か別の療法を施したのではないでしょうか?公式の実験ノートにも、治験計画書にも記さなかった療法を。」
グレイはチャンの意見いついて、考えているようだった。
「実に興味深い話だ。」
「ドクター・ワーナーと話すことはできますか?」
「なんとも言えないな…改めて連絡させてくれ。チームの中でも同じ意見が出ているのか?」
「いえ、私の知る限りでは。」
「ひとまず、ドクター・ワーナーへの疑いは、君の中だけに留めてくれないか。何かあれば私に直接報告してくれ。この件は極秘にして欲しい。総括責任者には、君が私の指示で動いていると言っておこう。今後は何も聞かずに、君に協力するはずだ。」
「わかりました。」
ドクター・チャンはそう答えたが、本音は違うところにあった。
この通話でますます疑問が増えてしまい、確信できることは一つだけになっていた。
自分たちは誤った療法を使ってしまった、ということだ。


18

インドネシア、ジャカルタ ジャカルタ西警察署

クスナディ署長のまえに男が立ちはだかったのは、ちょうど彼が取調室のドアに手を伸ばしかけたときだった。
男はアメリカ人かヨーロッパ人のようで、明らかにどこかの兵士だと思われた。
体格もそうだが、何よりその目つきだ。
「誰だ?」
クスナディは男に聞いた。
「そんなことはどうでもいい。ドクター・キャサリン・ワーナーを迎えにきた。」
「は、面白い男だな。牢屋に打ち込まれるまえに、さっさと名乗るんだ。」
男が1通のマニラ封筒を突き出した。
「みてみろ。お前には見慣れたものだろうがな。」
署長は封筒を開けて写真を取り出し、初めの数枚を確かめた。
自分の目が信じられなかった。
まさか、なぜこんなものが…
「いますぐ彼女を釈放しないと、その写真が世間の目に触れることになる。」
「原本を渡してもらいたい。」
「交渉できる立場だと思うか?釈放しないなら、うちの組織が封筒の中身を公開するだけだ。」
クスナディは視線を落とし、逃げ道を探す動物のように素早く左右に目を向けた。
「念のため言っておくが、俺をぶち込んでも無駄だ。3分以内に俺から連絡がなければ、どの道部下がこの資料を公開する。素直に従ったほうがいいぞ。署長でいたいならな。」
クスナディは必死で頭を絞った。
彼は署内を見渡した。
いったい誰の仕業だ。
「時間切れだ。」
男が背を向けた。
「待ってくれ!」
署長は取調室のドアを開け、女に出てくるように合図した。
「この男が連れて行ってくれるそうだ。」
女は戸口で立ち止まってクスナディを見つめ、次に兵士をまじまじと見つめた。
「いいんだ。この男につていけ。」
男が彼女の背中に腕を回した。
「一緒に来てくれ、ドクター・ワーナー。ここから出るんだ。」
クスナディは署から出ていく二人の姿を見送った。

ケイトは警察署を出たところで足を止め、自分を救い出してくれた男を振り返った。
彼は黒い防弾服を身につけていた。
ゾッとするほど子供たちを拉致した男に似ている。
向こうに彼の仲間が5人いるのが見えたが、その彼らもよく似た格好をし、黒い大型トラックの前に立っていた。
トラックはUSPの配送車をさらに大きくした感じで、その傍には窓に色がついた黒のSUVも駐まっていた。
「あなたは誰なの?いったい…」
「ちょっと待っててくれ。」
男が言った。
彼が歩いて行った先に、あの子供を買ったと言ってケイトを責めた、背の低い取調官が立っていた。
兵士がその小柄な男に、ファイルを渡して言った。
「昇進候補になっているそうだな。」
小柄な男が首をすくめた。
「私は言われたことをするだけです。」
彼は従順そうな様子で答えた。
「諜報員が君は優秀な協力者だと言っていた。その資料を正しく使えるなら、君の方がいい署長になれるはずだ。」
捜査官が頷いだ。
「仰せの通りに、ボス。」
兵士はケイトのもとに戻ってきて、例の黒い配送車を手で示した。
「あのトラックに乗ってくれ。」
「あなたの正体と事情を教えてくれるまでは、どこへも行く気はないわ。」
「もちろん説明するが、今は安全な場所へ君を連れていくのが先だ。」
「いいえ、先に。」
「考えてもみろ。トラックに乗るよう頼むのは、善良な人間の証拠だ。悪人なら君の頭に袋をかぶせて、トラックに放り込んでいるぞ。俺は頼んでいるんだ。ここに残るか、ついてくるか、自分で決めてくれ。」
彼は一人でトラックに向かい、両開きの後部ドアを開けた。
「待って。私も行くわ。」


19

インドネシア、ジャカルタ クロックタワー支局本部


ジャカルタ支局の工作員ヴィンセント・タリアは、第一会議室に入ってくる支局員の列を見つめながら腕を揉みほぐしていた。
あの病院の愚か者二人と、野生動物のような子供たちを相手にしたせいで、いまだに腕や足に痛みが残っている。
あれ以後もあちこちで目算が狂った。
だがそろそろ調子を取り戻せるだろう。
あとはわずかに残った局員を説得し、襲撃に協力させればいいだけだ。
他の者はとうに、イマリの配下にあるのだから。
タリアは両手を上げて会場を静めた。
部屋には支局本部の全員が揃っていた。
分析員も諜報員も、武装工作員も。
いないのはデヴィッド・ヴエイルとその隊の工作員5名だけだ。
首席分析局員のジョシュ・コーエンも行方不明だが、その気になれば、すぐに見つけ出せるだろう。
壁の大スクリーンには市内3か所の隠れ家が映っており、そこに足止めされた工作員たちが狭い室内でひしめき合っていた。
「よし、みんな聞いてくれ。ビデオリンクの方も音声は届いているか?」
あちこちで首が縦にふられ、続いて、はいとか聞こえていますと言った答えが返ってきた。
「どんな言い方をしても辛い話なので、単刀直入に言おう。クロックタワーに敵が侵入していた。」
会場が水を打ったように静まり返った。
「しかも我々は攻撃を受けている。今朝方届いた報告によると、ケープタウン、マルデルプラタ、カラチなど、数カ所のセルが完全に破壊されたということだ。こうしている今も、戦闘を続けている支局があるだろう。」
低いささやきが広がり、いくつか質問の声も上がった。
「みんな、静かに。さらに悪い知らせがある。我々が戦っている敵は、どうやら身内の人間らしいのだ。現段階でわかっていることを言おう。数日まえになるが、デヴィッド・ヴェイルが他の者数名と協力して、全首席分析員を集めた会議を開いたようだ。もちろんこれは組織の規約に反している。おそらく、新たな危機が発生したという口実で、分析員を招集したのだろう。この会議に出席した分析員のうち、半数以上は元ってきていない。これは明らかに会議と称した大掛かりな集団処刑だと思われる。今回の大規模攻撃に先立って、こちらの分析能力を奪おうとしたのだ。支局に戻ってきた分析員は、今頃全力でクロックタワーを潰そうとしているだろう。」
タリアは、懐疑的な表情を浮かべた一同を見回した。
「むろん、こんな話は信じたくないだろう。私だって同じ気持ちだ。実際、今朝になるまで信じていなかった。デヴィッドが工作員を市内にばら撒くまではな。わかるだろう?彼は襲撃を邪魔されないように、我々を分散させたのだ。着々とジャカルタ支局を倒す準備を進めているのだよ。あとは時間の問題だろう。」
「動機がわからないな。」
誰かが言った。
「そうだ、彼がそんな真似をする理由がない。」
もう一人も相づちをうった。
「私も同じ疑問を持った。そして同じことを思った。」
タリアは言った。
「私は彼に誘われてここに入った。彼に仕えてきたし、彼の人柄も知っている。だがデヴィッド・ヴェイルには我々の知らない側面がたくさんあるのだ。クロックタワーに入る理由は様々だ。私も今日まで知らなかったが、デヴィッドは9、11の攻撃で、重傷を負ったらしい。そしてその時から、9、11について、独自の陰謀論を信じるようになったのだ。あのテロは、ある民間の軍事会社が私服を肥やすために企んだものだ、という何とも突飛な説だ。もしかすると、彼自身も騙されているのかもしれない。誰かに利用されている可能性がある。だがいずれにしろ彼は、心を病んでいるし、寝返ったのだ。しかも彼は自分の企みに、多くの人間を引き込んでいる。おそらくジョシュ・コーエンもその一人だろう。彼は分析員会議から戻ってきて、支局長に協力しているはずだ。」
新たな情報に戸惑っているのか、誰も口を開かなかった。
隠れ家にいる兵士の一人が、スクリーンの向こうで言った。
「作戦は?支局長の身柄を拘束しますか?」
「それは難しいだろう。彼は最後まで抵抗するだろうからな。それより一般人への被害を最小限に抑えるほうが先決だ。実は応援が来てくれることになっている。イマリ警備が人を派遣してくれると言っているのだ。彼らもこの状況を察知していて、我々と同じくらい事態の収束を願っている。どうやら、デヴィッドの襲撃の標的はイマリらしいのだ。彼はイマリが出資するプロジェクトの研究者を連れ去った。彼女が共謀者なのか、単なる被害者なのかはまだわからない。今後我々はこの女性、ドクター・キャサリン・ワーナーを奪還し、支局長を始末することになる。」

続く→


レトロウイルスは、遺伝子の書き換えをおこなえる…
スタッフ細胞は、その良い使い道を模索したものだった。
これはSF小説の転載です。
事実ではありません。
それをお忘れなく…

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