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第二進化・アトランティス・ジーン(1)A・G・リドルー63

2020.05.10.21:24

ケインの調査隊

ケインはアジアの高地の隅々まで、調査隊を派遣している。
チベット、ネパール、インド北部などにだ。
彼はイマルがその地域に潜み、世界の週末を阻止できるような重大な秘密を隠し持っていると信じている。
ケインによれば、イマルは寒冷な高地に住むはずだという。
北方人種がこれだけ長くヨーロッパ大陸を支配しているのは、イマルの血筋を引いているからであり、その彼らが寒冷な環境で繁栄したことを指摘すると、彼はすぐに手を振ってこう言った。
「それはイマリが北上する過程で、遺伝子の恩恵を授けただけだ。イマリはアトランティスを探し、自分たちの体質にあった自然環境を求めて、北へ向かっていたのだ。」
彼がいうには、人類が持つ才能は全てこの「アトランティス遺伝子」が授けたものであり、この遺伝的な遺産は、イマリの血に最も濃く受け継がれているのだそうだ。
彼らはそこからさらに、アトランティス人の残りも、どこか寒い環境で休眠し、地球を奪還する日を待っているはずだと考えるようになった。
その結果、ケインは南極に執着し始めている。
そこにも調査隊が派遣されたが、まだ何の報告もない。
彼は自分で後を追うことにしたようで、ドイツ北部の造船所で、超大型潜水艦を造っているようだ。
私もどうにかして、造船所の正確な場所を突き止め、爆弾を仕掛けられないものかと考えた。
だが聞いたところでは、潜水艦はもう完成間近であり、彼は間も無く極東へ出発してイマルとカタをつけ、それから南へ進路を変えて、南極のアトランティス人の拠点を見つける予定なのだという。
何とも壮大な計画だ。
彼の不在を利用して、イマリの主導権を奪えないかとも考えたが、彼はそういう危険性もしっかり考慮に入れているようだ。
もし私の読みが正しければ、私はもうすぐお払い箱になるだろう。
事実上、永遠に。
そこで私は他の策を講じた。
調査隊の兵士の1人を説得し、この日記をあなたちに届けさせることにしたのだ。
ケインならイマルも見つけ出すだろう。
その時この兵士が約束を守ってくれるはずだ。
もし日記を持っていることがバレたら、彼の(そして私の)命はないだろうが。

隠し部屋

最後にもう一つだけ、伝えておきたいことがある。
私は興味深いものを発見した。
ジブラルタルの遺跡の奥深くに、何かのための部屋があったのだ。
この部屋には構造物を理解する手がかりがあると信じている。
アトランティス人の謎を解く、鍵もあるかもしれない。
この部屋に用いられている技術は、非序に先進的だ。
悪人の手に落ちれば、危険だろう。
この場所のことは、長い間ケインに隠し通して来た。
部屋への地図を同封する。
入り口は偽の壁で隠してある。
どうか急いで欲しい。

ケイトは地図が描かれた脆そうな黄ばんだ紙を開き、少し眺めてからそれをデヴィドに渡した。
「ベルというのは、中国にあったのと同じ装置だと思うわ。私や大勢の人間が、その機械にかけられたの。彼らの狙いはこれだったのね。どんな遺伝子があれば、装置に抵抗できるか、その手がかりを見つけようとしていたんだわ。私の研究も含めて、イマリの遺伝子研究は、どれも同じ目的のためにあったのよ。アトランティス遺伝子を見つけるという目的のために、マーティンはずっと私を騙していたんだわ。これまでの私の人生は…私は、利用されたのよ。」
デヴィッドは地図を返し、眼下をゆっくりと去っていく山や森に目を向けた。
「まあ、俺としてはありがたいがな。」
ケイトは彼を見つめ返して来た。
「他の誰かが利用されていたかもしれないだろ。その誰かは君ほど強くなく、君ほど賢くない人間だったかもしれない。だが君なら答えを見い出せる。彼らを止めることだってできるだろう。」
「どういう…?」
「これまでにわかったことを整理してみよう。とりあえずパズルのピースを全部広げて、組み合わせられるものがないか調べるんだ。いいかい?」
ケイトが頷くと、デヴィッドは先を続けた。
「あの寺院で、ベルの正体に心当たりがあると言っただろう?第二次世界大戦にまつわる古い噂があるんだ。陰謀論者はいまだに口にしているよ。グロッケ、あるいはベルの話をな。
彼らはそれをナチスが開発していた最新兵器か、なんらかの革新的なエネルギー源だと言っている。反重力装置だの、タイムマシーンだのと、もっと過激な説もたくさんあるが、しかし、もしそれが1918年にスペイン風邪を引き起こしたもので、今現在、中国の死体が各地に運ばれているとしたら。」
「また世界規模の流行が起きるわ。しかも今回は、スペイン風邪よりもっと大規模に。」
「そうそこなんだ。それほどの規模で流行することがあり得るのか?」
デヴィッドが言った。
「そもそもイマリの統計データは、正確なんだろうか?総人口の2から5%を殺すような病気なのにワクチンがないなんてとても信じられないな。」
「学生の頃に、スペイン風邪について教わったわ。今は1918年インフルエンザとも呼ばれているけど、そうね、データはほぼ正確よ。スペイン風邪では5千万人から1億人が死んだと考えられているの。当時の総人口のおよそ4%が死んだ計算になるわ。」
「ということは、今なら2億8千万人が死ぬというわけだ。合衆国の総人口に近い数字だな。もちろん今はワクチンがあるだろうが、それにしても、イマリはどうして事実を隠し通せたんだろう。なぜインフルエンザでごまかせたんだ?」
「当初はインフルエンザだと思われていなかったのよ。デング熱やコレラ、腸チフスと診断されていたの。一番の理由は、症状がインフルエンザと全く違っていたことでしょうね。患者は鼻や胃や腸の粘膜から出血していて、皮膚や耳から血を流していることもあったそうよ。」
ケイトはベルが吊るされたあの部屋を、思い出した。
暗い室内に人々が蹲り、血を流しながら次々と死んでいく。
頭からその光景を追い払い、先を続けた。
「とにかく、世界中にあるインフルエンザ株の中で、このインフルエンザ株ほど謎が多くて、致死率も高いものはないわ。ワクチンも存在しないの。スペイン風邪は、基本的に体内で自己破壊が起きる病気よ。サイトカインストームという、自分自身の免疫の異常反応によって死に至るの。一般的なインフルエンザ株の場合、免疫力が弱い子供や老人に重い症状が現れるわ。だからワクチンを打って免疫システムを活性化する。だけどスペイン風邪は根本が違うのよ。免疫力が高い人間を殺してしまうの。免疫システムが活発なほど、サイトカインストームも激しくなるからよ。25歳から34歳までの死亡率が高かったのはそのためね。」
「確かに、脅威になりそうなものを殺すように聞こえるな。イマリが兵器だと考えても無理はない。」
デヴィッドが言った。
「だがなぜまた流行させようとするんだろう?今ならひとたまりもないじゃないか。第一次大戦末期の1918年当時は、あちこちの国境が封鎖されていて、世界中が移動を停止していた。だが今の世界の、流動性を考えてみろ。同じような流行が起これば、ものの数日で俺たちは全滅してしまうだろう。君の話が本当なら、こうしている今も中国を出た病原体が、世界中を走り回っているんだろう。連中は一体なぜ、そんな真似をする?」
「きっと他の選択肢がなかったのよ。」
「選択肢がないなんてことは。」
「彼らはそう考えているのよ。」
ケイトは言った。
「この日記の考え方に従えば、いくつか仮説を建てられるわ。多分、彼らは自分たちがあの装置から生き延びるために、アトランティス遺伝子を探しているのよ。だから私の研究にも興味を持ったし、あの子たちをさらったんだわ。時間がないのかも知れない。」
「あの衛星写真…裏に暗号が書いてあったやつだ。真ん中に潜水艦が写っていた。」
「ケインの潜水艦ね。」
ケイトは言った。
「きっとそうだ。それに下に何かの構造物があった。連中が1947年から潜水艦を探していたことは分かっている。ニューヨーク・タイムズ紙の死亡広告を解読すると、南極大陸で潜水艦を発見できず、捜索を続けるか指示を、と書かれていたんだ。つまり、連中はついに潜水艦を発見して、その下にもう一つのアトランティス…脅威…を見つけたというわけだな。」
デヴィッドが頭を振った。
「だがまだわからない。専門的な話しなのかもしれないが、なぜまた大流行を起こそうとしているんだ?」
「多分、ベルの死体こそがトバ計画なんじゃないかしら?ベルとじかに接触すればほぼ全員が死ぬみたいだけど、このベルがきっと一つしかないのよ。だから死体を世界中にばら撒こうとしているのかもしれないわ。そこから大流行が起きれば、世界の人口が劇的に減って、残るのはベルを生き延びた者。アトランティス遺伝子を持つ人間だけになる。」
「ああ、だがもっといい方法があるだろう?よくわからないが、ゲノムの配列を読むとか、何かのデータを入手してその遺伝子を持っていそうな人間を割り出すとか。」
「無理だと思うわ。仮にそれでアトランティス遺伝子を持つ人間を特定できたとしても、それだけでは不十分だし、エピジェネティクスと遺伝子活性の問題があるから。」
「エピ…」
「複雑な話だから詳細は省くけど、結論を言うと、重要なのはどの遺伝子を持っているかだけじゃないの。どの遺伝子が活性化しているか、それらの遺伝子がどう影響しあっているかも問題になるのよ。もしかすると、この疫病はアトランティス遺伝子を活性化して、その遺伝子を持つ人間に第二の飛躍をこさせるのかもしれないわ。あるいは全く違う話で、疫病によって人口を減らし、トバ事変の時のように突然変異や進化を促そうということかもしれない…」
ケイトはこめかみを揉んだ。
まだ何かある。
他のピースが、すぐそこに…。
ふいにチェンとの会話が蘇った。
タペストリー、炎の洪水、厚い灰に覆われて死に瀕している人々…救済者…彼が血の杯を与え、森に潜んでいた獣が現代的な人間の姿に変わって現れた。
「まだ何か欠けていると思うわ。」
「それは…」
「もし最初の大飛躍が自然に起きたわけじゃないとしたら?あれは生物学的な進化ではなかったら?人間が絶滅の危機に瀕しているときに、アトランティス人が助けに来てくれたのだとしたら?彼らはトバ事変を生き残れるよう、死に瀕した人間に、あるものを授けたのかもしれない。そう、遺伝子よ。遺伝的な強みを授け、生き残るための賢さを与えた。脳の神経回路を変化させることでね。もしかすると、彼らが私たちにアトランティス遺伝子を授けたんじゃなのかしら?」

続く→

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